第20話 帰路

 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。聖奈は何事もなかったように飲んで飲んで…酔いつぶれて、結局、俺が背負う羽目になった。英二が名乗り出たが、俺は譲らなかった。譲りたくない気持ちだった。もし英二でなかったら?


 そうだとしても譲らないだろう。俺に背負われてスヤスヤ😪そんな聖奈を微笑ましく見ていた。


 同じ時間を長い事過ごして、本当姉のように、今でも思ってる…が、血の繋がりのないと知った時から少し変わっていった。


 もし血の繋がりがあったら?可愛い姉で普通に過ごしていただろう。特に意識もなく。それが普通。


 血の繋がりに関係なく、大切な姉だ。そう思うようにしている。聖奈は俺のことどう見ていたんだろう?弟思いの姉には変わりにないと思うけど。


※なぁ、本当に後悔しないのか?※ これは俺の声。


無理してるのか?俺は…聖奈が離れていく…


 離れて暮らすってことじゃない。気持ちの問題だ。琴美の存在を知ったから?それとも聖奈の気持ちを知ったから?


 聖奈は血の繋がりのない姉、琴美は幻の彼女…何だかごちゃごちゃしてきたぞ。どちらにせよ、簡単ではないな。


 俺は酒は飲んでいないが、早く家に帰ろう…思っていたより遥かに軽い。女性ってこんな軽いのかな?寝てると脱力で重くなるって感じるはずだが。


 ん?俺の頬に水?雨☔?違う…聖奈の涙か…夢を見て泣いているのか?


 可愛い、そして、綺麗な、ミステリアスっていうのが正しいのか。聖奈の寝てる顔を見ていると気持ちの整理が出来ない。


 さっきはとっさに姉なんだと判断出来たが、迷い出した。


俺はどう思ってるんだ?自問自答を繰り返す…



【おい、零、変わってもいいぞ!!!】


【わっ、脅かすな!!!英二いたのか?】


【お前さ〜聖奈さん見る目、弟じゃないぞ】


【どんな目なら弟なんだよ!!!】


【後悔しないのか?血の繋がりのないってことで何か変わったんだろ?】


こいつ、こういうとこは、意外と鋭いな。


【心配なだけだよ。仕事先、海外だとさ。ここまで可愛いとさ…なんでもない、気にするな】


【認めてるじゃん!!可愛いって。それ、弟からの感情じゃないだろ!!!確かに可愛い。寝てるとさらに。俺が変わってもいいぞ。もう疲れたろ?】


 英二〜絶対に渡さないぞ!!でもさ、聖奈は全て自由なんだよな。俺がとやかく言う事は出来ない。


それはそうと、こいつは、


【英二、どこまで着いてくるんだ?】


【近いじゃん、俺とお前の家】


【ああ。そうか。じゃ仕方ないな】


【仕方ないって何だよ!!何かあってもお前が聖奈さん背負っていたら守りきれないだろ】


なるほどね〜一理ある。


【そうなんだ…助かる…】


【おい、その予想外の反応…逆に困るぞ!!】


【そう言えば、俺さ、👻屋敷で琴美と会ったんだ】


【琴美?メモの?実在した?】


【失礼だな!!友奈から聞いてないか?】


【話すことすらしてない。お前、友奈とも?何でそんなに俺との差があるんだ?イケメンって訳でもないよな~どちらかと言うと俺のほうがイケメン…】


【悪かったな!!イケメンじゃなくて】


英二、好き勝手なことを言いやがって…

 



【ん…寝てた?あれ?ここは?】




聖奈起きたのか?


【寝てていいよ。家まで背負ってく】


【やだ!!私汗かいてるじゃん…降ろして!降ろして!】


聖奈、暴れるな!!危ない!!


【聖奈、ちょっと危ないって!!あっ!!!】


 俺と聖奈は背負いながら、バランスを崩して、そこへ英二がとっさに支えて、間に合わない〜痛〜!!!


【聖奈さん、大丈夫ですか?】


 英二がうまくクッションになって聖奈は大丈夫そうだ。ただ俺が〜俺が〜!!!


【零、ごめん。大丈夫?足捻った?私が暴れたから】


ズキズキ…ズキズキ…痛いって、もう!!


【零、間に合わなかった。すまん】


 聖奈をフォローしたからな、英二は。それは助かったが、俺のことも少しは頼むよ。


【悪い、ちょっと…歩けそうになくて】


挫いたかな?これはヤバいな…


【零、大丈夫か?俺が聖奈さんを背負ってくよ】


【英二くん、私はいいから零を支えてくれる?】


【…はい…わかりました】


英二、何だよその残念そうな顔は!!


もう着くからいいけどさ、あ〜いてて…


これは明日は休みだな。腫れてきそうだ。

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