第14話 幽霊

もう遊園地どころではない。


 友奈は何か重要なことを知ってるが、明確に話そうとしない。


それはとても焦れったい。


それとも?特別なことなのかな?


※カランコロン〜※


※お客様、あと2時間で閉店ですがよろしいですか?※


【大丈夫です。コーヒー☕二つお願いします】


友奈と俺は窓側の席に、


【とにかくじっくり話したい。全てを話してほしい。頼む!!】


そう言うと友奈は、


【解った。琴美の望みでは無いからね。それはよーくよーく理解してよ。それと、聖奈さんをここに呼ぶね】


【姉貴は関係ないけどさ…】


【私一人じゃ何かあったら零くん、支えられないもん。私、力無いから】


そんなこと…そんなに大袈裟なこと?本当に幽霊?


【解った】


【じゃ、電話してくる。ちょっと待ってて】


そう言うと友奈は外へ。


確かにここで電話は迷惑だよな。


友奈は戻ってきた。無事に連絡ついたみたいだ。


【じゃ、教えて】


【解った。琴美のこと、好きなんだよね?】


【それ聞く〜?もちろん。大好きだよ】


【それなのに忘れたでしょ?】


【それ、自分で自分を責めるよ。どうして忘れたのか?…俺がおかしくなってるね】


【それ、琴美の能力なの。琴美はね、幽霊っていうか…うん。ここに実体はないの。見えないものは幽霊って言うけどさ、本当は霊界ってのがあってね。そこからこっちに来たと思ってくれれば】


???


【ふん、ふん、なるほどね〜】


【零くん、解ってないでしょ?】


【そりゃ、そんなこと急に言われてもね。霊界とか行ったことも見たことも無いからね】


【ふーん、そんなふうに思えるの?思ったより耐久性ありそう。これなら大丈夫かな?】


【いや、解らないけどさ。不安はあるよ】


【霊界から来るのは大変なことなんだよ】


???


【大変なのは解るけどさ】


【解ってないね。馬鹿…】


 馬鹿って?友奈、キビシー!!そんなことすぐに解るわけないじゃん。



※カランコロン〜※



※いらっしゃいませ。お客様あと1時間ほとで閉店ですがよろしいですか!※



【あっ、大丈夫です。連れが来てるんで。ストロベリーパフェお願い】


姉貴、なんて格好で来てるんだよ。


 乾ききってないヘアースタイル、毛玉だらけのトレーナー、昨日も着ていたスウェットじゃん…まぁ、いいけどさ。友奈しかいないからね。


【聖奈さん、急にごめんなさい。理由も言わずに】


【いいのいいの。どーせ、ゲームしてたから。で、何?零が友奈になんかしたの?ごめんね〜こいつ、女性に免疫無くてね。ほら、零も謝って!!】


【姉ちゃん、俺、何もしてないよ!!】


【零くんは何もしてません。ちょっと霊界についての説明を】


【霊界?零が興味あるの?霊と零だって〜そうか、それで零って名前付けられたんだ!なるほど】


こいつ、呼んでかえって面倒じゃないか?


【姉貴、少し黙れ!】


【何なの?、その言い方!】


【聖奈さん、零くん、落ち着いて。あのですね、霊界もこの世界もさほど変わらないって話です。これ真剣に話してます】


友奈が真剣に話してる目が、俺達を黙らせた。


※ストロベリーパフェお待たせしたました※


【……友奈。で、それで、私をを呼んだ理由は?🍓酸っぱ!!何か問題でも?】


【零くん、パニクって大変になるかと…】


【零〜パニクってるの?だらし無いな〜。👻が怖いよ〜友奈ちゃーんって?もう、しっかりしなさい!!】


【姉貴!お前いいかげんにしろよな。ちゃんと友奈の話を聞けよ。あー、そうか、解ったぞ!!姉貴こそ👻怖いから誤魔化してるんだ〜なるほどね〜聖奈ちゃん守ってあげるからね】


【なっ、お前、馬鹿にして!!】


※バチーン※ いって〜、ひっぱたきやがった…


【お前、もう許さん!!弱点の腰くすぐり30秒!】


※コチョコチョ!!※


【ギャハハ…ごめん、零!!勘弁〜】


駄目だ、許さん!!ここ弱点だよな?子供の頃から。


※コチョコチョ!!※


【駄目だ…ごめんって。ギャハハ!!ちょっとちょっと息が出来ない〜息が〜零〜】


【零くん、ほんとに息が、やめてあげて!!】


しゃーない。ここまでにしておこう。


【ふー、ふ〜、はー。苦しかった…】


【姉貴が悪いんだぞ!】


【だからって、ここまでする?】


【聖奈さんも、零くんも、話を聞く気無いならやめます。そんなに時間無いです。…この馬鹿姉弟…】



……友奈、とんでもない発言した?……



【ごめん、聞く。ちゃんと聞く…👻怖いけど】


姉貴、怖かったんだ。それで話をそらして。


【友奈、俺もちゃんと聞く】


友奈は、深呼吸して、それともため息か?


【霊界もここと同じように過ごしているの。でね、こっちと繋がるトンネルがあってね。琴美は霊界の人だから。零のこと好きだったんだって】


琴美…


【じゃ、もう会えないの?】


【うん】


そんな…


【零のこと、大好きで、琴美。ただ一度だけのトンネルを使って】


【そんなんだ…】


 ふざけていた自分はどこ行った?琴美に会いたいよ。そしてもう会えないから余計に。


【あのさ、友奈。俺、遊園地で不思議な体験したよね、俺。あの時に会ったのは琴美?】


【そうだと思うけど。零、そうとう霊感強いかも。何か会話したの?】


【うん。信念を貫いてって言われたことは覚えている。あと、覚えてないかって…】


【零くん、琴美のこと私だけが覚えているけど、それも徐々に記憶が薄れていくから。それが琴美の能力で、優しさでもあるんだ】


【何で琴美は?俺なんかに、会いにきたのかな?】


【守ってくれたからって、大切なもの】


【何を?何も守ってないけど?覚えてないよ】


【琴美の絵を褒めてくれたって。みんなと距離をおいて学校に通っていて、校庭の隅でいつも書いていた風景を、零だけが褒めてくれたって】


友奈は辛そうに、苦しそうに、


【この先は言えない…私から言えない…やっぱ無理!!ごめんなさい】


友奈は立ち上がり、千円を置いて、


【何があったんだよ!!】


友奈は涙目で、


【……聖奈さん、零くんのことお願いします】


友奈は飛び出していった。



……………………………………………………………



何だよ、友奈がパニクってるじゃん。


【零、何となく解らない?】


【解らない】


【にぶいな〜】


【姉貴は解るのかよ!!】


【琴美はね、事故か何かで亡くなったんだよ】


【何で!?事故?そんなこと無かったよ。それだったらみんな覚えているはずじゃん!!覚えている?、あれ?覚えてないのかな?】


【さっき言っていたじゃん。友奈】


忘れるってことか…そういうこと!!


【私はね、養子に来たから前の両親とか言うよりも生みの親のこと忘れたよ。覚えていないっていうのが正しいけどさ】


【姉ちゃん…ごめん…思い出したくないことを】


【あれれ…もしかして同情してる?ん?零】


【そんなことは、でも、同情はある】


【じゃ、零、これからよろしく!!】


なんでよろしく何だ?


【俺さ、何となく琴美と出会って、少ししかいれなかったけど、初めて恋をした。初めて知った…もう会えないか…辛いな…】


【零、人は恋して大人になるから】


【琴美が教えてくれたんだね】


【いい男にならないとね。琴美のためにも】


【姉ちゃん、初めて感謝する。ここに姉ちゃんがいてくれて、耐えられる俺がいる】


【ヤバっ!!私に恋してどうするの?駄目駄目!】


【馬鹿か?誰が誰に恋してるって?琴美にだよ!】


【うん。大丈夫そうだね。帰ろう】


【励ましてくれたの?姉ちゃん…】


【バレた〜てヘヘッ!!】


ありがとう、姉ちゃん。



俺は琴美のこと、いつか忘れてしまう。


それが琴美の望みなら、受け入れて生きていこう。












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