第10話 隠し事

何故?どうして?メールアプリは無事なのに。


※コンコン※ 【零、入るよ】


【…………】


【零?】


【姉ちゃん、メールないんだ、琴美の】


【彼女ってこと?記録ないの?電話した?】


【聞いてはいたけど、さっき初めて電話を、そうしたら、この番号は現在使われてないって、そんなことあるのかな?】


何もかも失ったみたいだ。


側にいる姉ちゃんは、寂しそうに俺を見てる。


【零、ご飯食べよう】


【いらない】


【腹が減っては、何とかってさ】


【いらないって言ってるだろ!!出てってよ】


【零…】


 八つ当たりした。情けないけど、自分でも解ってる。こんな風に突然ってドラマや映画ではよくあるけど、切ないもんだな。


 それで、俺が家まで送るって言った時に拒んだのか。なんだ、冷静になると予兆あったじゃないか。


だったら、どうして付き合ったとか言ったんだよ。



………そして誰も琴美のことを覚えてない…………



疑問が残る。琴美の学校でのことも思い出せない。


全てが謎。琴美って?


琴美?俺何で琴美って呼んでたんだ?


記憶が、記憶が、少しずつ消えていく。


不安だ!!メモだ!!とりあえずなにかに残そう。



※琴美、彼女、遊園地、同級生、🐕散歩、👻屋敷※



これで、あとは英二に聞いてみよう。



📧※英二、琴美って本当に覚えてない?※


📧※さっきのお前、何かおかしかったぞ※


📧※自分でも解らなくなってきた※


📧※それ、不安だな※


📧※なぁ、人の記憶なんて当てにならないよな?※


📧※ほとんど解明されてないよな、脳の仕組み。実は10%程度しか使われてないとか※


📧※琴美のこと、妄想だといいたいのか?※


📧※冷静になるとさ、だってお前以外は覚えてないんだろ?だから俺にこんな📧してきてるんだろ?※


📧※そうだな、俺、どうかしてた※


📧※ゲームは?気分転換に、休みは決まってゲームのお前からゲーム取り上げたら…※


📧※何も残らないってか!失礼だな!※


📧※気にすんなって!気分転換しろ※


📧※解ったよ。じゃあな、さっきは悪かった※


📧※じゃ、今度、お前の姉貴と友奈と合わせろ※



何かと姉貴だな、英二。ほっておこう。📧終わり。



おっ、何でまだいたのか、姉貴。



【怒鳴ってごめん、姉ちゃん】


【零の気持ちわからずにこっちこそごめん】


【あのさ、ちょっとログインしてゲームするから、少しの間、話を聞いてもらう。その人と会話してると不思議とスッキリするんだ。ログアウトしたら夕飯食べに行くよ】


さて、ログインっと!


【零、あのね…】


姉ちゃん、何か言いかけた?


【えっ、何?とりあえずログインしたけど、ちょっと待って、あれ、珍しい…あの人ログインしてない。いつもこの時間は大抵ログインしてるのにな】


姉ちゃん、離れないな~もう、それじゃ、


【じゃあ、夕飯食べに行けばいいよな。それで納得するんだろ。それにしても姉ちゃん過保護過ぎないか?もう、俺、大人だぞ】



【零、ごめんなさい!!】



何、謝ってんだ?


【謝ることない…どうしたの?】


姉貴、大粒の涙で、しゃがみこんで、


俺、俺、なんかした?


【姉ちゃん、どうした?】


【零!!】


わあ~ん!


大泣きでしがみついてきて、


【ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!】


【ちょっと、ちょっと、落ち着いて。とりあえず離れて。あ〜あ、俺の服びしょびしょだよ。何でそんなに泣くんだよ。どうしたの?】


【零、あのね、二つ隠し事してたの】


【なんだ。そんなこと。隠し事なんて誰にでもあるよ。そんなことで泣くなよ。あー、びっくりした】


【違うの!!凄く大事なこと】


【聞くよ。どうせ俺のアイス食べちゃったとか?】


【零…ゲームの相手、私なの…】


ふーん、そんなこと…えっ!!


 ゲームってオンラインでいろいろ話した相手!姉ちゃん?嘘だろ!


【あのさ、落ち着いて、えーと、んーと、あの凄く上手い人だよ】


【そう…】


【結構いろいろ俺のこと話しちゃった人だよ!】


【そう…】


【うわー、俺の汚点が〜、恥ずかしい。なんてことだ。会わないから、会えないから話したのに〜】


【零、ごめんね。忘れるから】


【でもさ、でもさ、おかしいよ。だってね、何かイライラした時とかさ、ヤキモチなのかな?とか、姉ちゃんならそんなこと言わないでしょ?】


【うん、そんなこと合ったね。零、なんかウキウキしてたような。でもさ、logに残ってないから解らないし、ちょうど覚えてなくていいかも…】


【俺がウキウキしたら嫌なの?】


【それなんだけどね、もう一つのこと】


何だよ、何だよ、俺の汚点に関することやめてよ。


【もう、俺、ボロボロだけど、俺の汚点まだあるの?】


【零に汚点なんか無いよ…えーと…どうしよう…】


※バタン※ 


こらー!!お袋〜何勝手に入ってきてるんだよ。


【泣き声聞こえたから。私から話す】


【俺、姉ちゃんいじめてないよ。勘違い…】


【そうじゃないの。零、しっかり受け止めてよ!!】


怖い、何だよ。


お袋は深呼吸して、


【聖奈は養子なの!!】


これ、なんのドッキリ?


【またまたまた〜そんな冗談面白くないって】


※バチーン※ いったー、ズキズキ…


【お袋、何でいきなり、いたた…何?】


【冷静に受け止めて!!本当のことなの】



マジ?



マジ?



マジ?それ、姉ちゃんが姉ちゃんじゃない?



【零は生まれた時から聖奈いたよね。子供欲しくてもなかなか出来なくて、どうしてもね。それでお父さんと話して養子を。小さい子供で聖奈も本当のこと知らなかった。それでね、海外に長期出張ってなってね、そこでいろいろ書類が必要になって、間違っても取得した書類で全てを知ったの、聖奈は】



姉ちゃん、血の繋がりのない女性。



 でも、謝ることなんて無かったよ。泣くことなんて無かったよ。


【姉ちゃん、血の繋がりって関係あるの?俺にとっては姉ちゃんは変わらないよ。優しくて、綺麗で】


【零…ありがとう…でもね…】


お袋は、


【聖奈、これからは自分で伝えなさい。それでも変わらず娘は娘。どんなことあっても娘。だから安心して伝えること伝えて】


 何を伝えるんだ?もうたくさんのことが頭に流れ込みパニクってるよ、俺。でも姉ちゃんのことは変わらない!!大丈夫だ。安心して。


【全て話していいよ。俺は何聞いても大丈夫!!】









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