第4話 再会


「あの時と、何も変わってない」


 ベッドに沈む二人と、あの時を重ねて。

「変わったのは、私がおばさんになった事くらいかしら?」

 あの頃から、清純君は女を知っていて、何も知らない私はただ彼に身を委ねる事しか出来ませんでした。

「それを言ったら、俺ももうおっさんじゃん?」

 指を絡ませ、キスをする清純君はすっかり大人の顔になっていて、彼から漂う心地よい香りに眩暈すら覚えてしまい。

「時が過ぎるって、残酷ね……」

 絡み合う舌が熱を帯びて、混ざり合う唾液が淫猥な音を立てました。それは、過ぎ去った月日を取り戻すかの様に、情熱的に互いを求めるもので。何度もキスを交わしながら絡めていた指を解き、私のスカートの中に手を差し入れ、膝から腿を撫でる彼の指先も、あの頃にはなかった色気を感じます。


 あの日を境に、私と清純君の〝恋愛ごっこ〟は始まりました。


 休日は本当の恋人の様に、誰も私たちを知らない遠く離れた街でデートもしましたし、毎日の様に誰にも内緒で体を重ねました。そんな恋愛ごっこをしてるうちに、私は心に何か違和感を感じ始めたのです。

 彼の笑顔が幸せだと思い、彼に触れられる事が悦びだと感じ、彼がいないと寂しく思い、喧嘩をすれば哀しくなりました。

 

—―そうです。私はこの時、本当の愛を知ってしまったのです。


体を重ねる事だけではない、愛情を知りました。互いを思い、互いを尊重し、互いの為に互いを犠牲にできる、本当の愛を。


 ……しかし、それはいけない事だとお互いに分かっていて、これは恋人ごっこの副作用だと、この遊びが終わればこの感情も消えるのだと、私は自分自身に思い込ませていました。


 そして私は、この副作用に長い時間悩まされてしまうのです。


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