最終話:転生悪役令嬢の美味しい成り上がり。

 



 魔王と結婚がどうのとか話していた翌日、そういえばこう……あれがアレであはんしてますけど、特に何も起こらないなと思っていた事をズバッと聞いてみた。


「ねーねー、もしや魔王、種な――――いだぁぁぁぁぁぁ!」


 脳天にチョップされた。


「いま、このタイミングで言うか? あ? キャパ超えの魔力流し込むぞ」

「すみません、言っている意味がわかりまてん!」


 どうやら、魔王はチミチミと私を人型の魔族にする計画を実行していたらしい。私はある程度変貌するのは気にしないとは伝えていたものの、魔王はやっぱりそこが怖いんだとか。可愛いねぇ。


 チミチミ、チミチミと魔力を渡しては、過剰摂取にならないように調節していたそう。過剰摂取になったらどうなるのかと聞いたら、見た目の変貌がものすんごいことになると言われた。


「あ、魔王のお母さん的な?」

「あー、まぁ、親父的には気を付けていたらしいがな。制御が下手くそだったんだろ」

「息子酷い。お父さん、浮かばれない……」

「死んでねぇ」

「……ん!?」


 ちょい待て魔王!

 お父さん生きてんの!?

 挨拶とかしてないよ!?

 お宅の魔王さん預かってます。大丈夫です。元気で健康です。ちゃんと餌やりしてます!って。


「餌やり、言うな」

「餌付け?」

「ハァ。萎えた」

「お? すんまそん」


 とにかく、魔王は私がいつか子供が欲しいと言い出したときのために、チミチミをチミチミしてたらしい。知らなんだ。ご苦労さん。

 私的には、別に角が生えようが、羽が生えようが…………いや、羽欲しいな。なんか頑張って調節して魔王!


「ルヴィはそういうヤツだよな」

「うん」


 否定できないので素直に頷いといた。

 とにかく、羽はよろしくお願いします。

 空飛んでみたいから。


 あと、お父さんはそのうち挨拶に行こうかな? 行かなくていい? いいなら行かないけど。面倒だし。

  



「聞いてない。こんなの、聞いてない!」

「……望み通り生えただろうが」

「生えたよ!? 生えたけどさ、違うじゃん! なんか違うじゃん!?」


 魔王の努力の甲斐あってかは知らないけど、なんか羽が生えた。

 肩甲骨のところに、男の人の手くらいの大きさの、予想よりも小さな小さな黒い羽。


「サキュバスのやつだな」

「なんでよ!?」

「俺、魔王だし。お前は悪役令嬢だし。そんなもんだろ」

「確かに!」


 全く否定できない!

 念願の羽が生えたのに。なんだよぉ、飛べないのかよぉ。力を入れれば羽がパタパタするだけだよぉ。可愛いけどっ!


「ん、可愛いな」

「くそぉぉおう!」


 こういう時、『定食屋で魔王をオトしてウハウハ計画』完全に成功はしているものの、私もオトされているなぁと思う。


 ――――ま、いいか!


 転生悪役令嬢、なかなか美味しい成り上がりが出来てるよね!




 ―― おわり☆ ――



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転生悪役令嬢の美味しい成り上がり。 笛路 @fellows

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