61:馬鹿!
「おまっ…………」
「やほー。お城に入れて?」
「はぁぁぁ。ついて来い」
目を見開いて固まるひょろモヤシなヒヨルドに右手を上げて挨拶すると、どデカい溜め息を吐かれた。
お城の中には入れてくれるらしい。
「戻ってきて良かったのか?」
「なんで?」
お城の中を歩きながら、ヒヨルドが少し心配そうな声で聞いてきた。
「いや、普通に人間界で過ごせるんなら、それに越したことはないんじゃねぇの?」
「そう、かなぁ? 私はこっちの方が好きよ?」
「…………ふぅん」
ヒヨルドは素っ気ない返事しかしなかったけど、耳がピルピル動いてるから、ちょっと嬉しいのかも?
なんでそんな格好なんだと聞かれたので、歩いて魔界入りしたと伝えると、ドン引きされた。
「いやほんと、ミネルヴァの行動力はすげぇわ」
「褒めてる?」
「褒めてる褒めてる。ほら、執務室に着いたぞ。オイ、魔王! 客が来てんぞ」
ヒヨルドが何のモーションもなく、執務室のドアを開けた。ノックとかしないんだ? しかも呼び掛けが雑。
「――――面会の予定はなかったはずだ。今は忙しい。待たせておけ」
顔をこちらに向けることなく書類に何かを記入しながら、魔王が低い声でボソリと言い放った。
ほぉん? そういう態度なんだ?
「だとよ?」
ヒヨルドがニヤリと笑いながら私を見る。
ヒヨルドが無言でぺぺッと手を払って、魔王の執務室内にいた使用人ぽい人を追い払うと、ヒヨルド自身も執務室から出ていった。二人きりにしてくれるらしい。
二人きりになったのに、魔王はまだ書類を書き続けている。
これ…………私って気付いてないパターンだよね?
コソッとポケットを漁り、ガーリックペーストボムを手に取る。
――――ていやっ!
レッドペッパーボムにしなかったのは優しさだと思えこんちくしょう。
「――――ぐあっ!? 臭っ。は!? え……は?」
きょとんとした顔の魔王。
部屋がめちゃくちゃニンニク臭いのは置いといて、取り敢えず魔王の度肝を抜くことには成功した。
「ルヴィ……………………?」
「バーカ! 魔王のバーカ!」
オニオン汁ボムを投げつける。臭っ。
「魔王のバカ!」
「…………ルヴィ?」
「バーカ! ヘタレ! すかぽんたん! おたんこなす!」
「どうやって…………なんで、ここにいる?」
魔王はニンニクと玉ねぎまみれになってたけど、ただポカンとしていて、私がここにいるのが理解できていないようだった。
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