55:魔王の居ぬ間に。
◇◇◇◇◇
魔王がなんだかしょんぼりとしながら、大きな仕事が入って数日留守にすると言ってきた。
魔王なんだからそら大変な仕事だろう、頑張れよー! と笑顔で送り出したら、なぜか渋い顔をされた。
酷くないかな?
久しぶりに一人寝すると、キングサイズのベッドはなかなか広い。
魔王だからキングサイズにしたのかと言ったら、アイアンクローされたのはなかなかいい思い出よね、たぶん。
ゴロゴロとベッドの上を転がって転がりまくって、ちょっと疲れて大の字で寝転んで一人寝を堪能した。
魔王留守二日目。
明日は休みだし、魔王が居ぬ間に、なーんか作りたい。
煮込む系、時間が掛かる系って最近やってないから、そこら辺に手出ししようかなぁ?
んんんーん?
いいや、めんどいからゴロゴロしとこ。
魔王留守三日目。
宣言通りにお昼すぎまでゴロゴロしていたけど、なんとなく手持ち無沙汰になってしまった。
お昼は軽く済ませて何か作ろう。
さっぱりとしてて、ピリッとしてて、肉肉してくて、手軽に食べれる…………タコス。タコスだタコス。
タコスが食べたい。
「急ですが、タコスを作ります!」
「「わふぅ?」」
「何を言っているかわかりません! タコス作ります!」
フォン・ダン・ショコラが三頭とも首を傾げているけれど、完全に無視することにした。
小麦粉に油をちょいと入れ、コーンスープもちょいと入れる。本当はコーンフラワーが良かったけどなかったから、風味付けにコーンスープを水分の代わりにした。
こね捏ねコネして、丸めた生地に濡れ布巾をかけて三〇分ほど寝かせる。
その間にサルサ作り。
みじん切りにしたセロリと玉ねぎとトマトをボウルにひとまとめにして、塩コショウ。そしてライムの絞り汁と
酸味と辛味とトマトのほのかな甘みが奇跡的なマリアージュを起こし、得も言われぬ美味さになる。
お肉は必ず牛ミンチを使う。
こちらにもみじん切りのセロリと玉ねぎを入れる。にんにくペーストも忘れずに!
きつね色になるまでしっかりと炒めてからお肉と合わせて、オレガノやクミンをこれでもかと入れて、塩コショウやソースで味付けしてよく炒める。
もう、この時点でヨダレを垂らせそうなほどに『スパイシーな肉っ!』って感じの胃にガツンとくる匂いがキッチンに充満している。
最後にライムを絞り入れて混ぜればお肉は完成!
レタスは手で少し小さめに千切っておく。
アボカドのペーストは個人的にそんなでもないので用意しない。
寝かせていた生地を卓球ボールくらいに丸め、麺棒で二〇センチ程度に伸ばす。
フライパンで一枚一枚焼くのだけど、個人的には油たっぷりで揚げ焼きに近い仕上げにするほうが好み。
この際、カロリーなんて気にしたら駄目。
「よし! 焼くぞぉ!」
「「ワウゥゥゥゥ!」」
「ワウーッ!」
フォン・ダン・ショコラと一緒に遠吠えしつつ、タコス生地を焼いた。
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