51:人間界へ。
◆◆◆◆◆
ルヴィと暮らすようになって一ヶ月経った頃。
急遽人間界の国に行く公務が入ったと宰相より告げられた。
「俺が行かざるを得ない事態か?」
「はい。最低でも三日ほどの滞在時間の確保をしてほしい、と相手方は言われています」
人間の国は色々あるのだが、ルヴィが生まれ育った『エーレンシュタッド王国』とは特に強い結びつきがある。
あの国は特に魔族に対しての偏見が少なく、魔族の受け入れも行ってくれている。
そのエーレンシュタッドで人間の貴族の婚約者を奪って逃げた、という馬鹿な魔族の男が出た。
人間の娘とその魔族の男が愛し合っていたのは周知の事実だったらしく、人間側としてはとにかく話し合いの場を設けたいのに、魔族の男が魔術を巧みに使っており、探し出せない。とのことだった。
「魔族の男の情報は?」
「こちらに」
「……なるほど。わかった」
人間界に行くことが確定したが、ルヴィには行き先を告げなかった。
笑顔で送り出され、少しだけ心臓に痛みを感じた。
エーレンシュタッド王国の上空に浮かび、魔族の魔力を探る。目的の魔力を山の中で発見した。
情報より魔力が膨れ上がっていることを考えると、間違いなく目的の男だろう。
緩やかに飛行し、何重にも掛けられた隠蔽魔法を解除しながら近づいていると、山を揺らすほどの咆哮が轟いた。森から一斉に大量の鳥たちが飛び出し逃げ惑っている。
「俺に向かって吼えるか。番とともに消し炭になりたいのか?」
声に魔力を乗せそう伝えると、咆哮はピタリと止んだ。
これで話し合いが出来るだろう。
二人の隠れ家の前に降り立つと、魔族の男が家の前で片膝をつき臣下の礼を取っていた。
「魔王様、大変御無礼を」
「いい。お前が番を見つけられたことに関しては、心から祝福をする」
頭に枝のような角を二本生やした男に向かって伝えると、竜人の男が更に深く頭を下げた。
二人に事の成り行きを話し、家族や相手の婚約者と話し合うように伝えた。反対されていないと知り驚いていたようだった。
取り敢えず問題は二時間ほどで解決させたのだが、その後の『ついで』の話し合いや晩餐会に時間を取られる事になるとは、このときは思ってもいなかった。
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