50:魔王の一日。
魔王の一日は、わりと早かった。
六時、鍛錬場で戦闘狂の臣下たちを相手に訓練。
魔法戦や肉弾戦、色々とやるそう。
八時、シャワーを浴びてから執務室へ。
魔王城で働く者たちからの申請書や嘆願書の確認。
紛れ込ませているファンレターやラブレターは本人の目の前に飛ばして燃やす。
――――燃やす!?
九時、各省庁との会議を日替わりで。
魔界内での注意すべき出来事やイベントなど、多岐にわたっての報告が主。
十二時、各省庁とした会議の議事録確認。
再考すべき案件やゴーサインを出していいものもこのときに決める。
十三時、謁見の予定があるとき以外は自由時間。
このときに抜け出して来ることが多いらしい。抜け出せないときは、昼食後に鍛錬したりしているそうな。
十五時、書類の内容を確認し、サインをしまくる時間。
魔王のサインが必要なものを読みまくり、サインしまくる。
このときも、疲れたら抜け出して私のところに来ていたらしい。
「何にサインしてるの?」
「河川工事の予算とか、人間界と貿易するための製品リストとか、人間界での活動許可書とか……まぁ、いろいろだ」
十七時、夕礼の時間。
各部署のトップたちが集まって今日あった報告すべきこと話したり、雑談したり。
わりと面白いのでなるべく参加するようにしている。
「何が面白いの?」
「ん? ヒヨルドがジジイにまた断わられたとか、侍女の前に紙が飛んできて燃えたとか。まぁ、いろいろだ」
魔王、いい性格してるわね……燃やしたの自分でしょうに。っていうか、やっぱりモテてるのね。
毎日は入ってないって言うけれど、週何回か入ってるのも凄い事だと思うんだけど。
あと、燃やされるってわかってて出す人たちも、なかなかに強い。
「そもそも何で燃やすようにしたの?」
「ん? 下心しかないだろ?」
「…………うーん?」
どうなんだろ?
魔王っていう立場は、いわゆる人間界の国王とかだろうし、顔も良いから、そりゃそういうので擦り寄ってくる人はいないとは言えないけど。
そもそも、私もその一人なんだけど?
「ルヴィは面白いから」
「……そこは綺麗だとか、可愛いだとか、優しいだとか、言うべきじゃない!?」
「んー、飯がうまいから?」
なによ、本当に定食屋で魔王の胃袋陥落作戦が成功してるじゃない。どんなラッキーなのよ。悔しいことに、ちょっと嬉しいじゃないの。
「フッ。耳が赤い」
「うるさいわよ。明日も早いんでしょ? 寝るわよ」
「ん。おやすみ」
魔王に抱きしめられ、おでこにキスをされ、目をつぶる。
安心感というか、多幸感というか、なんともいえない暖かな気持ちが心地よい。
「んー、おやすみぃ、まおー……すきよ」
「っ……ん」
眠りに落ちる直前、唇に温かいものが触れた気がした。
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