48:軽食な定食。
夕方、ナマズなおじいちゃんが来たので「コトは丸く収まりました」と報告すると、報告の仕方が何か違うとボヤかれた。
こういうときはスルーするのが一番。
ちょこちょこ接客しつつ、鮭(っぽい魚)の切身を焼き網で焼く。暇な時間にちょっと抜け出して魚屋さんに行ったら、骨が殆どない、ピンク色の身をしたシュトラウトとかこの世界では言うらしいけど、この『ほぼ鮭』が良いと言われた。
「なんじゃい、いい匂いがするの?」
「朝食系の定食ってのもいいかなぁと」
「ここの営業は昼からじゃろい」
確かにお昼ちょっと前からの営業だけど、朝は人それぞれだし、何時に食べてもいいじゃない。
徹夜明けとかに、ちょっと軽めに食べたりとか、ね?
取り敢えず今考えているのは、『おにぎり軽食』と『お茶漬け軽食』。
おにぎり軽食は、ほぼ鮭のほぐし身と甘辛い鶏そぼろのおにぎり、それと玉子スープ。
お茶漬け軽食は、鮭茶漬けと卵一個分の玉子焼きに大根おろしを添えて。
両方ともに、きゅうりの浅漬けもつけようかなぁ。
「なるほど、『軽食』とな」
「そっ! お値段も定食類の半額にしようかなぁ」
わかりやすい金額が一番!
お客さんも私も計算しやすい。コレほんと大事。
そんなことを話しつつ、あちあちとおにぎりを握って、海苔を巻いて、ペイっとお皿に並べる。
海苔がこの世界にあって良かった。
「ほぅ、オニギリとはそういう料理か。どうやって食うんじゃ?」
「んんっ?」
よくよく聞いてみたらおじいちゃんは、何かは分からないが『軽食』と言う言葉に納得していただけだった。
海苔ある。おにぎりは知らない。
海苔、なんのためにこの世界に存在してたの?
「スライスチーズでミルフィーユにしたり、くしゃくしゃと丸めて千切って薬味にしたり? ごま油を塗って炙って塩ふって齧ったり?」
「……酒飲みか」
コミックの作者さん、料理はほぼしない確定、酒飲み疑惑勃発。
「うん…………海苔チーズミルフィーユは美味しいね」
そこだけ妙におしゃれだけど。きっと飲み屋で出たんだな? 美味しいものに罪はなしだからオッケー。
おじいちゃんは牛丼定食を頼んでるけど、おにぎりも入ると言うので、試食をお願いした。
もともと試食出来るよって言う人が何人かいたら渡そうと思っていたから、丁度よかった。
「俺も食う」
「おわっ!?」
居住スペースとの通用口から魔王降臨。
しかも、黒髪角なしイケメンの方で。
「……ふむ。そこから出てくるか」
おじいちゃんがニヤリと笑いつつ、魔王にツッコミを入れていた。
魔王は魔王でニヤリと笑いつつドヤ顔をしていた。
何なのこの二人…………。
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