41:久しぶり。

 



 昨日の休みは本当に謎だった。

 ほぼ丸一日、魔王がいた。普通に夕食まで食べて帰って行った。ちゃんとお金を払って。

 時々休憩なのか何なのか、私が読み終わってテーブルに置いていた本を読んだりもしていたけど。


「さぁ、今日も頑張りますか!」

「おう!」


 今日の午前はダンがお手伝い。

 ダンはちょっと口が悪いけど、フォンやショコラと一緒で、根はとてもいい子。だからなのか、お客さんからもよく可愛がられている。


「おっ! 今日はダン坊か」


 最近よく来てくれている、高速移動馬車の御者さんが、ニカッと笑いながらダンの頭を撫でていた。


「なんだよ、わるいか」

「ははは! 俺ぁ、餃子定食な」

「はーい。ダン、お願いね」


 ダンが貯蔵庫に向かうと、御者さんがニコニコとその後ろ姿を眺める。

 御者さんには同じくらいの娘がいるらしいんだけど、最近冷たくされていて凹んでいるらしい。


「パパとはお風呂に入らない! とか言われると、マジで泣きそうだぜ?」

「あー。定番ですね……」

「わかってんだよぉ!? わかってるけど、なぁ。お、ありがとよ」


 ダンが持ってきてくれた餃子定食を受け取り、しょんぼり顔のまま餃子をがぶり。


「っ! んまいっ!」


 御者さんがニコニコな笑顔に戻って、餃子をモリモリと食べていた。


「このパリッとしているのに、もちもちの皮。こいつが引き締まった野菜たっぷりの肉ダネを包んで、完璧なおかずになっているんだよなぁ。見た目からは米と合うなんて想像もしていなかったぜ」


 やっぱり魔族。食レポが饒舌だ。

 今度は娘を誘ってここに来ると言っていてた。小さな子ならかき氷とか間違いなく好きだろうし、お父さん株の回復のためなら、ちょっとは手伝ってあげよう。




「ってことがあったのー」


 久しぶりに本物の方のヒヨルドが来たから、この前のことを話していた。魔王が人の家に居座ってたやつ。


「あんのアホ上司! 一日消えたと思ってたら……」


 仕事をサボっていて、その一端を私も加勢していたのかと不安になっていたら、まさかの返事。

 きちんと書類仕事をしていたうえに、いつもより進んでいたそう。

 それなら良かった。


 ――――良かったのかしら?


「しかし、やっぱりアンタの飯は美味い! ミックスフライ定食……いい」


 ちょっとだけ出が悪かったフライものとかをあわせ技にしてヒヨルドに押し付けてみた。コロッケ二個、とんかつ半分、エビフライ一本、唐揚げ一個。

 

 カレーのトッピング用としてても良かったんだけど、フライ系って美味しいんだよってアピールしたかった。

 目論見は成功。

 なんなら、ちょうどそのときに来たお客さんたちがこぞって注文してくれた。



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