34:魔王が可愛い問題。
片付けが終わって、さあもういい時間だしご飯にしよう。と思ったところで、ふと気が付いた。いつもより一人多いことに。
横にいる銀髪黒角の魔王をちらりと見る。
――――いつまでいるんだろ?
「魔王、ご飯食べて行くの?」
「食べる」
「はぁい」
何にしようかなぁと考えていて、魔王胃袋陥落しなきゃだし、手の込んだ物を作らないといけないよなぁと思った。
だけど、めんどい。
…………親子丼でいいや。
鶏もも肉を二センチ大、玉ねぎは五ミリ幅に切る。
合わせ調味料を小手鍋に入れて、玉ねぎも入れて軽く煮る。
私はクタクタの玉ねぎが好きなのだ!
「いい匂いがする」
「お? 醤油系もイケるのねぇ」
「ん」
玉ねぎがしんなりしたら鶏肉を入れて三分から五分ほど煮詰め、あまり混ぜていない溶き卵を流し込み、火を止めて予熱で蒸らす。
大きな丼にご飯をふんわりと盛って、小手鍋から三分の二を魔王の丼に。残りを私の丼に。
「魔王はつゆがいっぱいがすき?」
「ん!」
魔王はつゆだく派らしい。
それなら小手鍋に残っていたつゆを全部魔王のにいれちゃえ。
「ほい、お待たせー。スプーンとお箸はどっち?」
親子丼は、お箸で食べるの大変だから、私はスプーン派なのよね。
「スプーンがいい」
「お、私もー!」
…………ん? この世界に親子丼ってあるの?
気になって聞いてみた。
「ない」
「ないんかーい!」
ならなんでつゆだく派なんだ!? と思ったら、理由は明確だった。
ご飯に掛けるんだからカレーみたいなものだろうという予測から、カレールーは多いほうが好きなので、汁も多いほうがすき。で、返事したと。
――――頭いい。
ただつゆだくにするか聞いただけなのに、まさかいろいろと連想して好みの正解にたどり着くとは……。
「ん、美味い」
「一味唐辛子とかかけても美味しいよ」
「イチミトウガラシ?」
またもや前世の名前で言っちゃった。
時々伝わらないのがあるのよね。
「チリペッパー! 粗めのやつ」
「ふむ?」
魔王がちょこっとかけて食べてみていた。
もぐもぐ、咀嚼。一時停止。からの、かき込みもぐもぐ。
これはこれは……間違いなく気に入りましたねぇ? むふふふ。
「…………おかわり、あるか?」
「ない!」
「ん……」
魔王まさかのしょーんぼり。
足りなかったのかと聞いたら、足りはしたけれど、美味しかったからもうちょっと食べたかった、と言われた。
なにそれ、魔王、可愛くない!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます