24:取り敢えず、計画変更。




 前世で愛読していたコミック。

 カッコイイのに出番が少ない! とぼやいていたキャラクター。

 カッコイイ魔王様。が、偽ヒヨルド。

 んでもって、またお店に来るらしい。


「え? は?」

「「わふぅ?」」


 頭が働かない……心臓がバクバクする。

 なんで? 瞬間移動したからかな?

 そういうことにしとこう。

 魔王の声がどストライクだとかはどうでもいいはず。私はここで、安心安全に新しい人生を歩みたいだけなんだから。


 今後、どうしたらいいの?

 魔王が来るの? このお店に? なんで?

 ……あ、ご飯が気に入ってるからか。

 カレーと唐揚げ大好きな魔王。ちょっと子供っぽい。

 

「あ……そうか!」

「「バウゥ?」」

「そうよ、そうよ! それよ!」


 パニック過ぎて、口から言葉を出し続けないと、どうにも考えがまとまらなかった。


「フォン・ダン・ショコラ!」

「「ガウ!」」

「新たな目標が決定したわよ」

「「ワウッ!」」

「魔王の胃袋を陥落させて、魔界で安心安全ウハウハ生活!」


 どうよ? 素晴らしい計画でしょう!? とフォン・ダン・ショコラを見ると……犬(?)のくせになんとも言えない残念そうな顔をしていた。器用ね?


「でも、次から魔王の格好で来るのかしら? 他のお客さんに迷惑よね?」


 なんとなく、私に姿を見せないようにしてたから、もしかして偽ヒヨルドのままで通すのかしら?

 どっちか分からないわね。


 取り敢えず、問題は起こってから考える派なので、横に置くことにした。




 魔王の胃袋を陥落させるために。

 

「取り敢えず、新メニューづくりよ! おー!」

「「わぅー!」」

「アンタ、どうせそこにいるだけでしょうが!」

「「クゥゥン」」


 フォン・ダン・ショコラがしょんぼりしながらヘチョリと横座りした。座り方がフレンチブルドッグっぽくてちょっと可愛い。


「あはははっ」


 笑いながら、子供がスキスキーなメニューは何か考える。

 うどん? 捏ねるのが大変だから、いつか気が向いたら作ってみよう。

 パスタ類? 普通にどこのお店でも出てるっぽいしなぁ。

 照り焼きチキン? あ、ハニーマスタードチキンもいいわね。

 牛丼、豚丼、親子丼も定番よね。

 

「よし! 魔王の胃袋陥落メシ決定!」


 決定はしたものの、貯蔵庫はかなりパンパン。これ以上は大きい鍋は増やさないほうが良さそうなものの、牛丼と豚丼は大鍋で用意しておきたい。

 どうにか出来ないものなのか、お客さんたちに相談してみようかな?

 特におじいちゃんとか、何かいっぱい知ってそうだし。



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