23:偽ヒヨルドの正体を知ってしまった。
偽ヒヨルドの忘れ物を届けに出かけたら、まさかの魔王城に到着してしまった。
フォン・ダン・ショコラはここに偽ヒヨルドがいるって言い張る、というか雰囲気でそう伝えてきてるだけだけど。
門兵さんにちらっとヒヨルドの見た目とかを伝えてみたら、魔具庁の長官だとかどえらく偉そうな役職名が出てきた。
「……どのようなお知り合いで?」
なぜか五人になった門兵さんたちにザッと一歩詰められてしまった。
人間が魔王城に何の用だとか、妙に魔力を感じるとか、怪しいとか、増援を頼めとかボソボソと話し声が聞こえる。
ちょっとこれは不味いかも?
逃げる?
でも動物型の魔族にはどうやっても敵うわけがないし……。
でもでも、とりあえず逃げてみようかな?と、こっそり後退りした瞬間だった。トスンと背中に温かい感触。
誰かにぶつかった? 誰?
「――――何を、している?」
聞き覚えのあるような声。
お腹に後ろから右腕が回され、抱きとめられた。
何でか振り返れない。
「「魔王様!」」
門兵が素早く一列に並び、敬礼をした。
「「ワフッ!」」
「ああ、持ってきたのか。助かった」
私の後ろでフォン・ダン・ショコラと、低い声の男性が話している。魔王様とか聞こえたけど?
後ろにいた人が私の右ポケットをまさぐって、指輪を取り出すと、中指に嵌めた。
「良くここが分ったな」
「「ワフワフゥ! ワフッ!」」
「んはは。そうか」
後ろの人がずっとフォン・ダン・ショコラと楽しそうに話している。
ねえ、門兵さんが魔王様って言ったよね?
フォン・ダン・ショコラは知り合いなの?
何で魔王様って呼ばれてる人に抱きとめられてるの?
何で魔王様って呼ばれてる人の声に聞き覚えがあるの?
ねぇ、何で、私は声が出ないの?
「「わふぅ?」」
「ん? ああ、サイレントの魔法を掛けた。コイツは危ないからな」
「「ワフッ! ワフフッ!」」
「ん? いいだろう」
急に眼の前が真っ暗になって、フワッと身体が浮いて、何処かに着地したと思ったら、定食屋のカウンターの前だった。
――――瞬間移動?
いつも偽ヒヨルドが座る席の前にいる、わね?
「忘れた俺も悪かったが、無茶はするな」
「「わふぅ」」
「ん、お前がちゃんと守れ。ルヴィ、また来る」
後ろ抱きにされていた感覚がふわりとなくなって、後頭部が大きな手で撫でられた。なんとなく私よりもかなり身長の高い男の人に。
『ルヴィ』って愛称で呼ばれた。
腰が抜けて、ペタンと床に座り込んでしまった。
わけが分からなさすぎる。
今日一日で得てしまった情報が多すぎる。
「ねぇ、フォン……さっきの人って、魔王様?」
「わふん!」
「ねぇ、ダン……さっきの人って、偽ヒヨルド?」
「ワフ!」
「ねぇ、ショコラ……さっきの人、また来るの?」
「ワフワフッ!」
コミックで見ていた、あのカッコイイ魔王様が、偽ヒヨルドで、またお店に来るらしい。
――――え? どうすればいいの?
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