21:精神干渉ではありません。

 



 シャクッ。

 かき氷にスプーンを刺すと、なんとも優しい音がした。

 そして、驚くほどに懐かしい。


「何だこれは…………」


 偽ヒヨルドが一口食べて無言になり、一時停止。

 そして、目を見張る早さで食べ進めだした。


「あっ! ストップすとっぷストーップ!」

「ぐあっ!? 精神干渉か!?」


 ――――精神干渉!?


 よく分からない言葉はスルーするとして、隣でおじいちゃんも蟀谷を押さえていたので、説明する。

 どうやら、冷たいものを一気食いすると頭痛を引き起こす事を知らなかったらしい。

 よく考えたら魔族だし大丈夫かもとか一瞬だけ思ったけど、やっぱり駄目だった。

 かき氷の攻撃力は色んな意味で高いのだ。 


「しかし、ただの氷なのに、これほどに美味いとはのぉ」

「ああ、桃の芳醇な甘みとクリームチーズのほのかな酸味、そして氷の柔らかさと儚さ。素晴らしいマリアージュだ」

「魔……オヌシも甘味が好きだったのか」

「ん」


 何やら二人でイチャイチャと食べ比べしつつ、ボソボソと感想を言い合っている。見た感じは、孫とお祖父ちゃんなんだけどね。なんか、イチャイチャ。

 要約すると、初めての食感に驚いたことと、とても美味しかったらしい。




「ふぅ、美味かった! 嬢ちゃん、良い体験じゃったよ。また夜に来るぞい」

「はーい! ありがとう、おじいちゃん!」


 おじいちゃんは満足顔で帰って行った。今から寝るらしい。まさかの徹夜で作ってくれていたとか。感謝してもしきれないくらいありがたい。

 

「む、もうこんな時間か。氷のストックはどこに置けばいい」

「貯蔵庫にお願いします」


 ポンポンと貯蔵庫の棚に氷を山積みにされた。二〇個も。

 こんなにいらない、貯蔵庫の圧迫が凄いと言ったら、しばらく来れないこと、絶対にこれくらいは必要なことを説かれた。素直にありがとうと言っとこう。


「だから、数日分持ち帰りさせろ」


 いや態度でかいな。まあいいけど。

 唐揚げを五人前、オムライスは作っている時間がないようなので、チキンライスのみで五人前、ビーフシチュー、クリームシチューも五人前大皿や小鍋に入れて渡した。

 偽ヒヨルドの手許でヒュンヒュンと消えていく。


「え?」


 ストレージとかいうものがあって、亜空間に保管できるのだそう。

 貯蔵庫はその劣化版なのだとか。

 コミックでは出てこなかったので、この世界にあるのを知らなかった。他のコミックアニメでは有名だったけども。


「またな」


 そうしてまたもや、偽ヒヨルドは瞬間移動でひゅんと消えていった。



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