9:本日開店です!
朝起きて、身綺麗にして、店内外の確認。
「清掃よし! お皿の準備よし! レジよし! 看板よし!」
「「バウッ!」」
十一時、『ルヴィ食堂』営業開始!
お店の前に立ち、お客さんの呼び込みをしてみることにした。
「ルヴィ食堂、本日オープンです! 本日は特別価格! 定食はすべて半額ですよー」
ルヴィってどこから出てきたのかって? 名前がミネルヴァだからルヴァと迷ったけど、ルヴィのほうが語感が良かった。まさかのそれだけっていうね。
「来たぞ」
「出たな、偽ヒヨルド! いらっしゃいませ!」
「それは……歓迎してるのか?」
してるに決まってるじゃないの。まさかの第一号が偽ヒヨルド。いや、今日開店してみるって宣言してたけどね。
「ほう、メニューは壁のとこから選ぶのか」
たぶん、ここ元々はバルのようなものだったんだと思う。壁が黒板になっていたのでそこに定食メニューを書いた。
絵はあまり描けないので、簡単な説明文も付けておいたので、どんな料理かはなんとなくわかるかな?
「またカレーが食べたいが……唐揚げ定食も気になる…………」
「唐揚げ定食のご飯をミニカレーにしましょうか?」
「ん!」
まぁ、これくらいはサービスしてあげよう。一人目のお客様だし。次からはしっかりと追加料金もらうけど。
定食のご飯とおかずの量は、前世の倍盛りくらいにしといた。なので、普段は一〇〇〇ウパ。これでもかなり安いほうだとは思う。
定食屋といえば、薄利多売! 勝手な印象だけど、薄利多売っ!
そんな薄利多売なのに、今日はなんと半額なのだ!
偽ヒヨルドにお水を出して、唐揚げ定食の準備。
千切りキャベツに特製ドレッシングを掛けて、唐揚げは八個、白飯はカレーにして、スープはキャロットポタージュ。お盆に乗せて偽ヒヨルドに渡すと、勢いよく唐揚げに齧り付いていた。
「む……唐揚げが………………」
ザクッ、ザクッザクッと偽ヒヨルドが咀嚼する音だけが響く。唐揚げが、の続きが気になるんだけど!?
無言のまま食べ続ける偽ヒヨルドを見つめていたら、カランカランとドアベルが鳴り響いた。
「のぉ、外に書いてある五〇〇ウパってのは本当かい?」
どことなくナマズっぽい見た目のおじいちゃんが入ってきた。二人目のお客さんかな?
「はい! 黒板にある定食は今日はどれでも半額の五〇〇ウパですよー!」
「ほほぉ? 食べてみるか。どこに座ったらいいかね?」
「ありがとうございます! カウンターのこちらにどうぞ!」
偽ヒヨルドと一席空けた場所を案内した。
ナマズなおじいちゃんは黒板を見つつ、偽ヒヨルドを見る……ザクッ……ザクッザクッ…………偽ヒヨルドのせいなのか、カリカリ唐揚げにしたせいなのか、ザクザクうるさい。
「唐揚げ、おかわり」
「流石に追加料金取りますよ?」
「ん。いい。おかわり」
「じょ、嬢ちゃん! ワシもその少年と同じものを!」
定食はカレーじゃなくて白ごはんになると伝えたら、唐揚げがどうしても気になるから構わないとのことだった。
ほほいと盛り付けて、二人に渡す。
ザックザクと鳴り響く音を聞きながら、どうせなら素敵なBGMが良かったな。ループ再生オルゴールみたいな魔具があったわよねぇ……なんて考えつつ、遠い目になってしまった。
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