7:謎の襲来。
「約束を果たしに来た」
ストック作り二周目な四日目。
ヒヨルドとの約束の時間に現れたのは、ヒヨルドの見た目をした謎の人物。
白ウサ耳のヒョロもやし系少年。
なのに、謎の尊大さと、謎のイケメンヴォイス。
「……誰!?」
「ヒヨルドだ」
堂々と言い張られた。
「いや、絶対に違うし!」
「「クキューン」」
「あっ! こらっ!」
明らかに怪しいヒヨルド姿の謎人物にツッコミをしていたら、フォン・ダン・ショコラがキッチンに入ってきて、私の後ろに隠れてしまった。
キッチンは立入禁止なのに!
「ほう、ケルベロスが懐いているのか」
謎人物は、ヒョロもやしの姿で仁王立ちで顎に右手を当てて何やら感心している。
いやほんともう、誰よ!?
「人間が定住して飯屋を開く。その手伝いの約束をしたから行かなければならないとヒヨルドから聞いてな」
何やら緊急の仕事を回したら、ヒヨルドが私のところに行くからと仕事の代理を探していたらしい。
ヒヨルド……逆でしょ、逆。
普通は私のところに行く代理を探しなさいよ。もしくはごめんねって言うだけでいいでしょ。
「ふむ。まぁ、そうだな。で、私が来た」
「…………なぜにヒヨルドの格好で? もしや双子とか?」
「いや――――」
ヒヨルドが自分じゃないと警戒されるから!とか粘ったらしく、じゃあお前の格好で行くからいいだろう。仕事に行け。となったらしい。
よく意味がわからん。
「で、氷魔法で何をすればいい」
普通に手伝ってくれるらしい。ヒヨルドの格好のままで。
違和感が半端ないけれど、非常に助かるのでツッコミを入れるのは諦めた。
上手い。
驚くほどに、冷却が上手い。
ヒヨルドに手伝ってもらっていた時より格段に出来上がりが早い。冷却温度が一定で作りやすいというのもあった。
「普通の魔族にここまでの一定放出は難しい」
「貴方は普通の魔族じゃないってこと?」
「……」
普通じゃない魔族って何なんだろう? 偽ヒヨルドが言うから気になって聞いたのに、無視された。
「はぁぁぁ、終わった! 偽ヒヨルドさんありがとう」
「あぁ、なかなか面白い体験だった。飯を出せ」
いや、態度デカいな。出すけど。
「ヒヨルドが食べたカレーがいい」
「はいはい、用意しますんでカウンターで待ってて下さいね」
「ん」
偽ヒヨルドは、素直にカウンターに座ってこちらをじーっと見つめて待っている。
なんだろうな……中身は大型の狩猟犬みたいな人だなぁ。
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