6:予感は的中。

 



 ウサ耳魔族の少年――ヒヨルドがガツガツとカレーを食べているのを眺める。既に三杯目。

 ヒョロっとした中学生くらいの体格だけど、よくまぁ入るものだ。


「いや、魔界にも、カレー、ある……けど、これ……」

「喋りながら食べない」

「鬼かよ!」


 ――――なぜだ!


「あ! 口に物入れて喋らない! だ!」

「…………あぁ、まぁ確かにな」


 よし、納得したね? これで鬼回避だよね?


 ヒヨルドがモグモグゴックンしてから、話した内容によると、魔界にも人間界同様の料理があるそうだ。うん、それは知ってる。

 だけど、このカレーは見た目も味も全然違うらしい。

 初めは野菜が入ってないんだなと心の中で思ったけれど、食べたら凄かったと言われた。


「コク、深みっての? あと、こう……ビリッとくる辛さ!」

「……」


 薄っすらと勘づき始めてたけども、もしや作者さんは料理をしない? そもそもあまり興味がなかったパターンかな?

 あと、好き嫌い多そう。

 味噌汁と納豆は嫌いで、カレーは甘口でお野菜ゴロゴロ派だな。


「ふむふむ」


 そういえば他所のお店の敵情視察とか全くやってなかった。

 

「ねぇねぇここの近くで人気の食べ物屋さんってある?」

「おー、何軒かある! けど、アンタの作るやつのほうが美味いと思う……」


 唐揚げの反応も見たくなって、ひとつ渡してみたらペロリと食べてしまった。あとなぜか、トロンとした顔をしている。眠いの?


「あー……なんか、魔力が補充されて気持ちいい感じなんだよ」

「魔力が補充?」

「魔族が魔力を補充する方法はいくつかあるけど、心底満足するものを食べたときの回復率が一番大きいんだよ」

「ほほう?」


 よくわからない感覚だけど、とにかく満腹で満足になったらしいというのはわかった。


「それから、魔族って結構大食いだぜ。店に出すやつはもっと多めにしとけよ?」

「マジか」

「マジだ」


 大盛り飯一択らしい。

 これはストック作り、もう一周すべきなの?

 結構にデスマーチしたわよ?


「魔法通信で連絡くれたら、また手伝ってやるよ」

「……フォン・ダン・ショコラを迎えにやるわね」

「何の嫌がらせだよ!」


 めっちゃキレられたけど、魔法通信なんて出来ないし。フォン・ダン・ショコラなら、なんか匂い覚えてて、どこまでも追いかけてくれそうだし。


「ケルベロスだから……まぁ、できるけどな……」


 結局、ヒヨルドは四日後にまた来てくれるらしい。

 明日も手伝ってよと言ったら、普通に仕事があると言われてしまった。

 働いていたらしい。無職ボンビー疑惑は消えた。


「おま! 失礼すぎるだろ!」

「てへっ」

「可愛くねぇよ!」


 ヒヨルドが何かギャーギャー言いながら帰って行った。

 手を振って見送ったら、ちょっと振り返してくれた。可愛いとこあるな。


「さて、ストック作り二周目、頑張りますか!」

「「わふぅーん」」


 何も手伝いにならないフォン・ダン・ショコラだけど、こういうときの合いの手な返事は嬉しい。

 今日はヒヨルドも捕まえてくれたし、ご飯は山盛りにしてやろうじゃないの。



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