第4話
それから私たちは、世間話を始めたのだが、途中で彼が私に尋ねてきたのである。
私は固まってしまったのだが彼は続けて話したのである。「実は、僕も事情があってこの国を離れることになったんですよ...............」それを聞いた瞬間、私は思わず彼の顔を見つめてしまった。すると彼は微笑みながら私に言ったのだ。
「それでご提案なのですが、シャーロットさんも殿下を一目見るためにご一緒にいかがですか?」
それを聞いた瞬間、私は頭が真っ白になってしまったのだがしばらくしてから冷静になって考え始めたのだ。(もしかしたら何か手がかりが得られるかもしれない!)そう思うと居ても立ってもいられなくなった私は、彼についていくことに決めて一緒に旅に出ることにしたのである...............。
(ああ、ようやくデューク殿下に会えるんだ...............)そう思うと私はドキドキしてきてしまった。そっと左手につけた指輪を見つめ幸せな気分になった。
それから数日後のこと、私たちは深い森の奥にある湖へと到着したのである。「綺麗ですね」私がそう言うと彼は微笑みながら言った。「でしょう?ここは僕の秘密の場所なんですよ」「そうなんですか!?」私は興味津々で尋ねると彼は説明してくれた。「ええ...............実はこの湖には精霊が住んでいると言われていてね、昔からよく来ている場所なんだ」それを聞いて私は目を輝かせながら食い気味に質問したのである。「それは一体どんな精霊なんですか?」と。すると彼は微笑みながら答えてくれたのである。
「なんでも願いを叶えてくれるみたいだよ、まあ噂程度なんだけどね」
そう言って笑う彼の顔を見ていると、私はますます期待が高まるのを感じていた。「実際に見た人はいるんですか?」
私がそう尋ねると彼は首を横に振った後で言ったのである。「残念ながら、まだいないみたいだね」その言葉を聞くと私はさらに気分が高揚してくるのを感じた。
(デューク殿下と出会えたらいいのにな.............)そんなわずかな期待を背負いながら。
それから私たちは、しばらくの間湖を眺めていたのだが、そこでふと疑問を抱いたのである。
(あれ?どうしてこの方はこんな場所に私を連れてきてくれたんだろう.............?)そう思っていると、突然背後から声をかけられたのだった!驚いて振り返ると、そこには見覚えのある男性が立っていたので更に驚かされることになった。
だがら次の瞬間その男性の姿を見ながら私の心臓は激しく鼓動し始めたのである。
なぜなら、目の前にいたのは紛れもなくデューク殿下だったからである。
私は驚きのあまり言葉を失ってしまい、しばらくの間ただ呆然としていた..............だが、しばらくしてから我に返ると、目の前にいるデューク殿下に声をかけたのだ。
「あ、あの..............ほんとうに、デューク殿下なのですか?」私がそう尋ねると、彼は微笑みながら答えた。「ええ、シャーロットとガフェン、遠路はるばるよく来たね」それを聞いた瞬間、私は固まってしまった。
まさか自分の目の前に、あのデューク殿下がいるなんて思いもしなかったからだ。
すると彼は続けて言ったのである。「さあ、早く中に入りなさい」
そう言われてら私たちはデューク殿下の後に続いていくことになったのだが、建物の中に入るとそこにはまるで別世界のような美しい家具が沢山ある空間が広がっていたのだ。
驚きのあまり言葉を失っていると、突然背後から声をかけられたので振り返ると、そこには見知らぬ女性がいたのだった。
(どなただろう...............?)と思っていると彼女は微笑みながら言ったのである。
「初めましてシャーロットさん、私はマーリンと言います」それを聞いた瞬間、私は目を疑った。何故なら目の前にいる女性が着ている服はこちらの国のものとは似つかない服装だったからだ。
さらに、顔立ちもどこか雰囲気が違うような気がしたため、疑問を抱いていると彼女は微笑みながら言ったのである。
「ようこそ、フルア村へ」と言うではないか。
それを聞いて、私は固まってしまった。するとデューク殿下は笑いながら続けたのだった。
「驚かせてごめんね。彼女は、この村の村長なんだ。」
と言われて私は更に混乱してしまった。
(村長..............つまり村で一番偉い人?でもどうしてそんな人がここに..............?)
そう思いながら見ていると、彼女は微笑みながら言った。
「初めましてシャーロットさん、あなたのお話は、たくさんお聞きしております。お会いできて光栄ですわ」そんな彼女の様子を見て、私はある確信を得たのである。
なぜなら彼女からは、他の村人とは違った雰囲気を感じたからだ。
そしてそれと同時に、彼女が本当に村長であるならば、デューク殿下がこの場所に私たちを連れてきてくれたことにも納得がいったのである。
それを察した瞬間、私の胸は高鳴り始めたのだ。
それから私たちは、デューク殿下が用意した豪華な夕食をご馳走になった後、ゆっくりと休むことにしたのだった。その後私はデューク殿下と二人きりで会話するために、部屋に招かれたのである。
すると、彼は椅子に腰掛けてから言った。
「...............今日は来てくれてありがとう。君たちが来てくれたお陰で、久しぶりに懐かしい気分を味わえたよ」そう言って微笑む彼の顔を見ると、思わず胸が締め付けられるような感覚に襲われたため、慌てて目を逸らそうとしたのだが、それよりも先に彼が手を差し出してきたので、そのまま手を取ってしまうことになった。
すると次の瞬間、彼は言ったのである。「会いたかったよシャーロット、愛している」その言葉を聞いた瞬間、私は全身に電流が流れるような衝撃を受けたが何とか堪えることができたのだ。
そして震える声で彼に言ったのである。
「私もです.............」と。
それからしばらくの間、私たちは見つめ合っていたのだが、突然彼が私をぎゅっと抱きしめてきたので驚いてしまった。
そして私は長旅で疲れていたのか、いつの間にか眠っていた。
そして翌朝目が覚めると、デューク殿下が歯磨きをしており、その姿を見た瞬間私は嬉しくなってしまった。
信じられないほど幸せな気分だったので、私は心の中で感謝の言葉を呟いたのだった。
「おはようシャーロット、よく眠れたかい?」
そう言って微笑む彼の顔を見た瞬間、私は顔が真っ赤になってしまった。まさか自分がこれほどまでにデューク殿下に惚れ込んでしまうとは思ってもいなかったのである。
(ああ............素敵すぎる!!)と思いながらしばらく彼の顔を見つめ続けていると彼は少し照れた様子を見せてから私に尋ねてきたのだ。「どうかしたのかな?まだ眠いのならもう少し休んでいてもいいんだよ?」その優しさに触れた瞬間、ますます胸が高鳴ってしまうのを感じた私は必死に抑え込みながら返事をした。
「いえ、大丈夫です!」私がそう言うと彼は微笑みながら言った。
「それなら良かった」と言うと彼は部屋を出ていった。私はしばらく呆然としていたが我に返ると、すぐに身支度を始めたのである。それから数時間後に、私はデューク殿下と一緒に村を見て回ることになっていたので、急いで準備をしたのだ。
そして待ち合わせの場所に着くと既に彼が待っていたため、慌てて駆け寄りながら挨拶をすると彼は微笑みながら言ったのである。
「シャーロット、今日は楽しみましょうね」そう言って私の手を取り歩き出したのである。
(ああ...............!なんて幸せなんだろう!!)と思いながら、彼についていくことにしたのであった。
それから私たちは、様々な場所を巡り歩いた後で日が暮れかかってきた頃に村の中心にある大きな湖へと向かったのである。そして、そこで私たちは二人きりになることができたのだが、突然彼が私の頬に口づけをしてきたため、私は頭が真っ白になってしまった。
「今日はありがとう。.................シャーロットたちは、明日にはここを出るくらいかな?」突然そんなことを聞いてきたので私は戸惑いつつも答えた。「はい、そのつもりです」すると彼は微笑みながら言った。
「そっか.................気をつけて帰るんだよ」
その言葉を聞くと同時に、私は辛い気持ちになった。
そして、胸に秘めていた気持ちを打ち明けたのである。
「デューク殿下は、国に一緒に帰らないのですか?」
すると彼は少し驚いた様子を見せた後に、すぐに真剣な表情に戻った。
「今はまだ、その時じゃないからね.............」そう言った後彼は私に背を向けた後で再び口を開いたのである。「さあ、もうそろそろ寒くなるし一旦戻ろう」その言葉を聞いた瞬間、私は思わず泣きそうになるのを堪えながら彼の顔を見ることができなかったのである。
(このままお別れなんて絶対に嫌だ.................!)そう思った私は、意を決して彼に言ったのだ。
「お願いします!誓いを約束してください!」と。
それを聞いた瞬間、彼は一瞬だけ動揺したが、すぐに笑顔になって言った。「それはどういう意味だい?」
そう聞かれた私は、勇気を振り絞り、自分の思いを伝えることにした。
「私と、いつか結婚してくださいますか?」と..............。
すると、彼は驚いた後ににっこりとした表情を浮かべてから、口を開いた。
「そうだね、僕達は婚約を交わした仲だ。ちゃんとこの村でやるべきことを果たしてから、絶対に国に戻ることを誓うよ。」と言って私の手を取り、手の甲に口づけをしたのであった。
その瞬間、私は涙を流しながら喜びを感じていた。
「父上にも必ず帰るから、心配しないでほしいということを伝えてほしい。..............よろしく頼めるかな?」
そう聞かれた私は、涙を堪えながら微笑んで答えようとしたのだがうまく返事をすることができずにただ頷くことしかできなかった。
(ああ................やっぱりこの人が好きだ!)
そう思いながら、私はこの幸せが永遠に続いて欲しいと願うしかなかったのである。
そして次の日、ひとまずガフェンさんと私はフルア村を離れることになったのだ。
国王陛下にデューク殿下が元気であったことをお伝えするために。
私は馬車の中でずっとデューク殿下のことを考えていたため、ほとんど眠れなかったのであった。(次はいつ会えるのだろうか.................?)
そんなことを考えているといつの間にか眠りについてしまっていたようだ。
「シャーロットさん、おはようございます。帰って来れましたよ」
朝は、ガフェンさんの声を聞いて目が覚めた。
馬車から降りると、ガフェンさんが挨拶をしたので私も慌てて挨拶を返した。
すると彼は微笑みながら言った。「どうかごゆっくりお過ごしくださいね。..................では、僕もそろそろ失礼いたします」と言った後に、私と別れの挨拶を済ませたのだった。私は寂しい気持ちを抑えながら、王城へと向かったのであった。
王城に着いた私はまず最初に、国王陛下の元へと向かい挨拶をすることにした。
「お久しぶりです、国王陛下」私はそう言ってお辞儀をすると、彼は微笑みながら言った。「久しぶりだねシャーロット、元気にしていたかい?」その言葉を聞いて私は安堵したが、同時に寂しさも感じたのであった。(早く国に帰りたいな................)と思いながらも彼に促されるまま部屋に入った後で椅子に座りながら会話をすることになったのである。それからしばらく私達は話をした後に、私が切り出したのだ.........。
「国王陛下、デューク殿下と会ってきました。」そう言うと彼は少し驚いた様子を見せたがすぐに嬉しそうに言った。「そうか..............何か言っていたか?」そう聞かれた私は首を縦に振った後で言ったのだ。「必ず国に帰るから、心配しないでほしいと仰っておりました」そう言うと、彼は安心した様子を見せてから続けたのだった。「わかった、ありがとうシャーロット」それから少しの間沈黙が続いた後、突然彼が口を開いたのである。
「ところでシャーロット、一つ聞きたい事があるんだけどいいかね?」
私は戸惑いつつも返事をすると、彼は続けてこう言ったのだ。
「.................もしシャーロットが疲れたと思ったら、他の人と婚約を結んでもいい」
と。
その言葉を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になった。(何を仰っているの.................?)と思い彼の方を見ると、彼は真剣な眼差しでこちらを見つめていたのだった。私は混乱しながらも、必死に答えようとしたのだが、声が震えて上手く喋ることができなかったのである................。しかし、彼はそんな私の様子を気にすることなく更に言葉を続けたのだ。
「君さえ良ければだけどね...............」そう言いながら私の前まで歩み寄ると、しゃがみ込んで私の目を見つめながら続けて言ったのだ。
「シャーロットは、デュークのことを嫌になったかい?」私が首を横に振ると、彼は嬉しそうに微笑んでから言ったのである。「それなら良かった。わしも君のことを家族同然に考えているから、辛かったらなんでも言ってくれ」そう言って私の手を取ると、彼は眩しい笑顔を見せたのであった..............。
それから暫くの間、私たちは無言のまま見つめ合っていたのだが、突然彼が立ち上がってから言ったのだ。「シャーロット、また会いに来てくれるかい?」その言葉に、私は思わず涙が溢れ出てしまったのだが、それを悟られないように必死に堪えていたのである。
すると彼が私の頭を撫でてくれながら言ったのだ。
「泣かないでくれシャーロット、君を泣かせたくはないんだよ...............」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず泣きじゃくってしまった。そして、しばらくの間泣き続けた後で落ち着きを取り戻すことができたので、改めて国王陛下に別れを告げてから、部屋を出ていったのであった。
私は馬車に乗り込んでから、すぐに自国へ出発するように指示を出した後で、窓の外を眺めていた。
すると、不意にデューク殿下のことが頭に浮かんだので思わず溜め息をついてしまったが、それと同時に胸が締め付けられるような痛みを、感じてしまったのである...............。
自国に着いたら、真っ先に家に戻ることにした。
レタやお父様に会うためだ。「ただいま戻りました」と言って玄関を開けると、お父様が出迎えてくれた。
「おかえりシャーロット。疲れただろう?ゆっくり休んでくれ」と言ってくれたので、私は微笑みながら返事をした後、自分の部屋に戻って行った。
するとそこには、お母様が待っていたのである。
「あらシャーロット、体調はどう?」そう聞かれた私は、笑顔で答えた。「元気ですよ!皆にも会えましたし」そう言うと、お母様は安心した様子を見せてから言ったのだ。
「そう..............それなら良かったわ」それから少しの間沈黙が続いた後、お母様が突然口を開き、こう言ったのである。「シャーロット、あなた.............辛いことでもあった?」と。
私は、心臓が飛び出そうになったが、何とか平静を保ちつつ答えた。
「いえ!そんな事ないですよ?」するとお母様は、にっこりと微笑みながら言ったのだ。「ふふ、嘘おっしゃい。デューク殿下と何かあったんでしょう?後で聞かせてちょうだい」と言って、私の手を取りながら言葉を続けたのだった............。
それから夕食の時間になり、家族揃って食事をすることになったのだが、いつものような楽しい雰囲気が感じられず、重苦しい空気に包まれていたのだ。
そんな時、お父様が口を開いたのだ。
「シャーロット、デューク殿下とは仲良くなれたかい?」私はお父様を心配させたくないばかりに、少し悩んだ末にこう答えた。
「はい!もちろんです!」と。
お母様は一言も言葉を発さず、食事を終えた。
私は、心の中で安堵したり焦ったりしながら、食事を続けたのである。
そして食事を終えた後、自分の部屋に戻った後でベッドに横たわり目を閉じると、デューク殿下の顔ばかり浮かんできてしまうのである。
(会いたいな................)と思っていたら、扉をノックする音が聞こえてきて、お母様がゆっくりと部屋に入ってきた。
私が起き上がると、お母様は私の横に座ると優しい声で話しかけて来た。「ねぇシャーロット、デューク殿下と何があったのかしら?」
そわそわとしたお母様を見た私は少し戸惑ったが素直に答えることにしたのである。
「はい、.............実は、デューク殿下は用事で国に帰ってくることが難しいそうで............。」そう言うと、お母様は切なそうな表情を見せた。
そして、私に言い聞かせるように言ったのである
「これからは何があっても、あなたを守るから安心してね」私は戸惑いながらも、微笑み返してこう言ったのだ。「ありがとうお母様!」そして私は暫くの間、静かに泣いたのであった。
翌日、お父様は隣国にお仕事のため出かけてしまったので、私は一人で過ごしていたのだが、途中でお母様に呼び止められたのである。
「シャーロット、今から少し一緒に出掛けましょう?」と言われた私は、断るわけにもいかずついて行くことになったのだった。
馬車に乗り込むと、お母様が突然私の頭を撫でながら言ったのだ。「シャーロット、辛い時は我慢せずに何でも言うのよ」そう言われた私は思わず涙が溢れそうになったが、何とか堪えて頷いたのだった。
そして暫くの間馬車に揺られていると、目的地に到着したようで、お母様に手を引かれながら歩いていくとそこには大きな花畑が広がっていたのだ。「...............うわぁー!凄い!」思わず感嘆の声を漏らすと、お母様は微笑みながら言った。「ここなら、誰も来なくてゆっくり過ごせるわ。さあ行きましょう」と言った後、私の手を引きながら歩き始めるのだった。
しばらく歩いているうちに疲れてしまった私は、座り込むと同時にほっとして泣き始めてしまったのだが、そんな私をお母様は何も言わずに抱きしめてくれたのである。
そして泣き止んだ後も暫くの間そこに座っていたのだが、やがてお母様は立ち上がり私に向かって微笑みながら言った。「落ち着いたかしら?また辛くなったらいつでも行きましょう。そろそろ帰りましょうか?」
私はお母様に手を引かれながら、馬車に乗り込み家路についたのである。
「お帰りなさいませ、シャーロットお嬢様」
家につくなりレタが出迎えてくれた。
か彼女の顔を見たら、辛い気持ちも和らいだ気がする。
久しぶりにレタのいれた紅茶が飲みたくて、つい頼んでしまった。
「ねぇレタ、久しぶりに紅茶をいれてくれないかしら?」
「かしこまりました、今すぐご用意いたしますね」
私が言うと、レタは笑顔で頷きながらキッチンへと向かってくれたのだ。
しばらく待っていると、目の前に紅茶が置かれてあったので早速飲んでみた。
懐かしい味にホッとすると同時に、とても幸せな気分になったのである..............。それから私は暫くの間、レタと一緒にお喋りをしていたのだがあることを思い出したのだ。
(そうだ!デューク殿下にお手紙を書いてみよう..............!)そう思った私は、自分の部屋に戻りペンを取ったのだがここで問題が発生したのである!
何を書けば良いのか全く思い付かなかったのだ。(どうしよう..............)と悩んでいるうちに、いつの間にか手紙は完成していた。「できた!」と喜んでいるのも束の間、この手紙をどうやって渡そうかと考え始めたところでハッとしたのである。
(そうだ!レタは出かけることが多いし、ついでにお願いして郵便で届けてもらえばいいんだ!)そう思った私は、早速レタの部屋に向かっていったのだった。
レタの部屋の前に着くと扉をノックしたのだが、返事が無かったため、不思議に思った私はゆっくりと扉を開けてみると、中には誰もいなかったのである。
(レタはどこに行ったのかな?)と考えていると、突然背後から声を掛けられたのである。驚いて振り返ると、そこにはレタの姿があった。「お嬢様、どうかされましたか?」
「ねえ、レタ...............これ私から郵便まで持って行ってもらえないかしら?」
と言うと、彼女は不思議そうに私を見つめた後に、首を傾げながら言ったのだ。「どうしてですか?直接会ってお話をした方が早いのでは............」
私は考えを整理してから、話し出したのである。
「でもほら、直接会いに行ったらデューク殿下に迷惑がかかるかもしれないし..............それに、レタはよくお出かけするからっついでにと思って」と言い訳を並べた後に、彼女は納得した様子を見せたので内心ホッとしたのである。
そして、私は彼女と共に玄関に向かうことにした。
「では行ってきます」とレタが言うと、私は笑いながら「行ってらっしゃい!」と言って見送ったのだった。
そんな私は、街に出かけることにした。(そうだ!久しぶりにドレスを買いに行こう)そう思い立った私は早速街へ出掛けていったのである。
街を歩き回るうちに、一軒のお店の前で立ち止まった私はお店の中へ入っていった。「いらっしゃいませ」という声が聞こえたのでそちらを向くと、店員の女性と目が合ったのだ。その女性は優しそうな笑顔を浮かべていたので、安心した気持ちになったのだが次の瞬間.............信じられない声が聞こえてきたのである。
「あら?シャーロットじゃない!」突然名前を呼ばれたので驚いてしまったのだが、よく見るとそこには幼馴染みのエマがいたのである。
久しぶりで私が驚き戸惑っている間にも、彼女は次々と質問攻めをしてきたのだ。
「シャーロット!今までどこに行っていたのよ!全然連絡もよこさないでさ、心配したんだからね!」と言って怒った様子を見せながらも、私を抱き締めてくれたのである。
そんな彼女の優しさに、私は思わず涙を流してしまった。
そして暫くの間抱き合っていると、彼女は私に言ったのだ。
「ねぇシャーロット?よかったら、お茶しない?話したいことも沢山あるし」そう言って誘ってくれたので、私は喜んで了承したのである。それから私達は、近くの喫茶店へ向かったのだった。
喫茶店に入ると早速注文を済ませた後で、私達はお互いの近況報告を始めたのである。
まず最初に、エマの方から話してくれたのだが、彼女はなんとギルド長をしているらしいのだ。「すごいね!おめでとう」と言うと彼女は少し照れ臭そうにしながら言った。
「ありがとうシャーロット、あなたのおかげよ..............」
「ううん、こちらこそあなたの存在に助けられていたわ」と私も感謝を伝えると、それに対してエマが微笑みをたたえたのである。
更に話を続けて行くと、エマが真剣な表情になったのを見て、私も姿勢を正した。
「シャーロット、あなたに話したいことがあるの」とエマが言うので、私は頷きながら答えると、彼女は話し始めた。
「あのね、実は最近ギルド内で怪しい動きをしている人たちが、いるみたいなんだけど..............」と言って口ごもってしまったので、私は優しく微笑んでからこう答えたのである。
「うん!大丈夫だよ!何でも言ってみて?」すると、彼女は安心したような表情を見せてから、話してくれたのだ。
その内容を聞いた私は、驚きつつも納得してしまうのだった。
エマが一通り話し終わった後、私の話も聞きたいと期待しの眼差しを向けてきた。
「................実は、隣国の王子のデューク王太子殿下と、婚約をしているの」
私の言葉を聞いて驚いたエマは、口に含んだお茶をむせていた。
私は、そんなエマの背中をさすりながら!言ったのである。
「落ち着いて」それから少し時間が経って落ち着きを取り戻したエマが私に向かって質問を投げかけてきたのだ。
「ねぇシャーロット、それって本当なの?」と聞かれたので、私は素直に頷いて答えた。
するとエマは言ったのだ。「おめでとうシャーロット!あなたは幸せになってね!」と。「ありがとう!でも.............そのデューク王太子殿下は、現在お忙しいみたいで.............」と私が答えると、エマは真剣に考え込みながらにっこりと笑った。
「大変だと思うけれど負けないで。辛かったら、いつでも私を頼って!」
そう言ってくれたのである。私は嬉しくなって笑顔で感謝を伝えたのだった。
そして、その日はエマと一緒に過ごした後に別れたのだった。
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