第3話 みそ汁と日記と

 次のお家も一軒屋、萌ゆる桜の葉っぱ達のような緑の二階建てのお家は、緑山みどりやまさくらちゃんのおうちです。今年ピッカピカの小学一年生になったさくらちゃんは、二階の個室の勉強机にまっさらなノートを広げて、うんうん唸っています。


「日記って何書いたらいいのかな?」


 ある理由から、今日から日記を書くぞと張り切っていたさくらちゃんでしたが、まだ起きて朝ごはんを食べたばかりなのでこれと言って書くことがありません。お母さんのおみそ汁の具でも書けば良いのでしょうか。でもなんだか、すがすがしい五月始めにつける日記の第一歩としては、普通過ぎてミソっぽくて、可愛さも美しさもない気がします。ほうれん草とお豆腐のみそ汁かけご飯を三杯もお代わりしたのも忘れて、結局みそ汁のお話は却下されました。


 勉強机のすぐ前にある窓の外を気晴らしに眺めたさくらちゃんの大きな瞳に、タンポポのわた毛が映りました。青空の中を飛ぶ白い種子は、雲の一切れが降りてきてこんにちはをしてくれたみたいです。


 さくらちゃんの日記の最初の文章が決まりました。


「きょうから日っきをかくことにします。タンポポのわたげが、まどの外をとおって、かわいかったです。」

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