#042 保護者
「いやぁ、期待させちゃって申し訳ない」
「いえ、ボクも勢いで、無茶言っちゃって」
夕方、キタカタサイクルで購入した自転車を調整してもらいながら、メイヤちゃんとご褒美の件について話す。
「いちおうある程度は善処したいんだけど、さすがにね。できればモチベーションを落とさないでもらえると助かるんだけど」
「そこまで、気にする事は」
ちなみに購入した自転車は絶好調で、とくに問題はない。しかし購入後、乗っているうちにワイヤーやスポークがこなれてベストな状態ではなくなることがあるそうだ。キタカタサイクルでは、その対策として無料点検が購入特典としてついてくる。
「あまり、娘を甘やかさないでください」
「あぁ、そうですよね。すいません」
「いえ、責めているわけじゃ。その、むしろ感謝しているというか」
俺の立場は保護者兼お財布だが、はたから見れば『得体のしれないオジサンが年頃の少女を連れまわす』状況になる。周囲の目もそうだが、娘を持つ親としては素直に承諾できない展開だろう。
「保護者としてしっかり監督しますし、もちろん早めに帰すつもりです」
「その、世話をかけます」
俺はあくまで親戚とその友達。ご褒美としてはプールか外食を奢るだけでも充分なのだ。しかし相手は女子高生。ご褒美の内容はともかく、安全や世間体は配慮しなければならない。それこそ先輩のように気軽につるみ、そのままどちらかの家で雑魚寝ってのはもってのほかだ。
「その、無理しなくても、遊ぶ口実さえあれば、いいかと」
まぁ、結局それなんだよな。楽しめればそれでいいわけで、とくに相手は高校生。大学生や社会人ほど、内容を値踏みしてくるって事もないだろう。
「いっそ、家でバーベキューってんなら楽なんだけど……」
「それです!!」
「お、おぉ」
急に乗り出してきたメイヤちゃんに驚く。それはさておき、家でバーベキューなら泳ぐ以外の問題は解決する。若宮家なら近所迷惑を気にする必要はないし、友達の家なので親御さんも安心。俺は道具と食材を買うだけ、送迎の必要もなくなる。
「そしてそのまま、パジャマパーティーなんて…………ぐふっ、でゅふふふ」
「えっと、泳ぐのは、なしでいいのかな?」
「それはまぁ、約束さえ、とりつければ」
まぁ、プールならお小遣いで足りるし、いっそ保護者が居ない方が楽しめるか。
「それじゃあ3人でプールに行ってきて、後半戦は家でバーベキュー。家の人や参加者と相談して、お泊りやら女子会はご自由にってことで良いかな?」
「はい、それでいきましょう!」
他の子とも相談しなくてはならないが、メイヤちゃんは完全にその気になっている。あとワカメちゃんは、ノリもいいし(グレードダウンに残念がるかもしれないが)拒否するってことはないだろう。
ただしカオルや、迷惑をかけるであろう早苗さんたちがちょっと分からない。若宮の女性陣は、あんがい『パーソナルスペースを確保したい派』なのだ。
「
「それでは、その方向で調整してみます」
「ぐへへ、カオルと、お泊り……」
「「…………」」
そんなわけでご褒美の内容も固まり、もうすぐ、夏休みが始まる。
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