#039 量販店

「まさか、こんなところで王子と一緒になるとわね~」

「えっと、さすがに外で王子は、はずかしいかな」

「まったく、なんでワカメまで……」


 今日はカオルとメイヤちゃん、そこにワカメちゃんも加えて近所の(ホームセンター併設の)家電量販店に来ていた。ちなみにメイヤちゃんの中学時代のあだ名は王子だったらしい。


「えぇ~、それじゃあ何て呼べば??」

「いや、メイヤとか適当に呼び捨てにしてくれれば」

「ダメダメ、それが許されるのは、若宮薫だけなんだから~」

「ちょっと、変なこと言わないでよね!」


 3人寄れば姦しいとはよくいったものだ。3人は中学まで同じ学校に通っていた事もあり、昔話に花が咲く。


 それはさておき、今回集まったのはパソコン教室に向けてパソコンやキーボードを見に来たわけだ。まぁ、ひと通り揃っているし、ウチでもよかったのだが、やはり"他の選択肢"もあるていど見せておきたい。


「えっと、ついたけど、そろそろイイかな?」

「はい、今黙らせます!」

「ぐぇ……」

「それ、完全に入っていない?」


 一瞬でワカメちゃんを締め落とす(多分すん止め)カオル。なんとも頼もしいかぎりだ。


「いちおう教室には備え付けのパソコンがあるから、授業だけなら無くてもいけるけど、いちおうどんな感じのものがあるか、軽く見ていこうか」

「やっぱり、けっこう高いですね」

「国内大手のメーカーパソコンはね」


 量販店に並ぶパソコンは、サポートの問題もあって国内大手を中心に有名どころのミドルグレードパソコンが多い。まぁようするに、高いわりに性能は中途半端なのだ。そのあたり品質やサポートの問題もあるので、売り逃げスタイルの中華ガジェットと同列に語るべきではないが、やはり帯に短し襷に長し感が拭えない。


「あぁ、リンゴロウブックだ! スマホもリンゴロウだし、やっぱりいいよね~」

「いや、それは。ダメとは言わないけど……」


 海外大手のリンゴロウ社の製品は一種のブランドになっており、愛好家も多い。しかしそのあたりは独自OSを使っており、ようするに互換性が無い。いちおうオフィスなどは使えるのでデメリットを理解したうえで買うならいいのだが、使えるソフトの選択肢が一気に狭くなるので今後の事を考えるとお勧めできない。


「リンゴロウ、ダメなんですか?」

「いちおう、デザイン業界とかプロシーンでも愛用する人はいるけど、汎用性は低いから、まだ何をするかハッキリ決まっていない段階だと、お勧めできないかな。じっさい、大学の入学の時に紹介される斡旋パソコンは、基本的にソッチ(国内大手)のグループだし」

「ん~、あっ! これならCMでみたことあるかも」


 国内大手の強みは、販売後のサポートもそうだが、販売時のサポートも欠かせない。しっかりとしたカタログに、商品を理解している店員。不具合があっても購入店に持ち込めばあるていど対応して貰える。海外製品はその点、不良品をひいてしまった時は最悪で、なかにはサイトに記載されている仕様と実物の仕様が異なる詐欺まがいなケースも存在する。


「あぁ、そっちは国内大手のオシャレ枠だね。ちなみにパソコン教室に備え付けてあるのは…………むこうの隅にある系統だよ」

「えぇ、これですか……」


 これでも多少良くなったのだが、やはり企業向けパソコンは華が無い。もしかしたら、メーカーも(一般向け機種を売るために)わざとダサめに作っているのかもしれないが、アニメで言うところのモブキャラ感が漂っている。


「まぁ、デザインとか性能に関係ないし、あと、このグループは企業向けに大量生産しているからお得だし…………これの中古は、もう驚くほど安いからリサイクルショップでよく投げ売りされているね」

「あぁ、そういえばポルチューブで、見たことあるかも」

「ボクは、それでいいかな」


 あっ、メイヤちゃんってボクっこなんだ。


「ダメダメ! 王子はもっとカッコイイの、やっぱりリンゴロウで!!」

「いや、よく分からないし。そんなに出せないよ」

「結局、どれにすればいいんですか?」

「いや、どれも選ばないよ。ぶっちゃけ高いし」

「「えぇ……」」


 そう、パソコンヘビーユーザーは基本的に大手メーカー製のパソコンは買わない。半分お洒落でリンゴロウブックを持っている人はいるが、やはり専門店や通販でカスタムモデルを買う(作る)ことになる。


「パソコン教室的には、サポートもしっかりしている(国内大手の安いモデル)そのあたりをオススメしているけど…………まぁ、いっちゃなんだけど、ぶっちゃけ何も知らないお年寄り向けだよ」

「「あぁ……」」


 そう、このあたりのパソコンは、年賀状や家計簿などをつけるくらいにしか使わないライトユーザー向け。その目的でこのスペックは過剰なのだが、だからといって旧型の激安品では単価が安すぎてサポート体制を維持できない。


「そっちはひとまず忘れて。こっち」

「え? ここって……」


 やってきたのは周辺機器コーナー。


「わざわざパソコンを買わなくても、このあたりのキーボードならスマホやタブレットにも繋げるから。練習ならこれで充分」

「「えぇ~~」」


 今のスマホは、下手な中古パソコンよりも高機能高性能だ。画面もそこそこ大きいし、練習だけならスマホ接続可能なキーボードを買えば事たりる。


「いちおう資格目的だから、オシャレやコンパクトモデルじゃなくて、こっちの規格順守のモデルがいいね」

「けっこう、安いのもありますね」

「打鍵感とかいろいろ違いはあるけど、練習用だし、このあたりで充分だよ。パソコンは…………まぁ、必要なら用途に合わせて、あらためてしっかりしたものを紹介するから」




 そんなこんなで今回は、パソコンを下見すると見せかけて、キーボードなどの周辺機器を紹介した。

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