#018 微笑ましい光景

 ハナレのリホームは天井と壁まで終わり、今日はカオルとその友達のワカメちゃんを交え、自分でやる部分をまた少し進めた。


「しかし、大胆ですよね~。窓を、無くしちゃうなんて」

「そこはまぁ、仕事場って事でね」

「あんな換気扇、始めて見ましたよ」

「ちょっとワカメ、どこ座ってるのよ!」


 今は作業も終わり、居間にうつって買っておいたドーナツを食べるところだ。


「どこって、空いていたからいいじゃん。ねぇ~、司さん」

「あぁ、今日は助かったよ、本当に、ありがとね」

「そこは! 妹の席で……」

「居ないんだからイイじゃん。というか、それ言ったら私の席、無くなっちゃうし」

「ぐっぬぬぬ……」


 ハナレは床を直した後、電気配線を引き直し、内側に新たな壁を追加した。その際、大胆に既存の窓や扉は塞いでしまった。外から見れば古めかしい田舎の小屋だが、中はわりと完璧な防音室で、防音室用の特殊な換気扇もいれた。


 あとはエアコンと照明、そして元々シャッターがあった部分に新しい扉をつけて完成となる。いや、そこから手作業で、吸音パネル貼りやら機材の設置があるのだが、そこはまぁ、実際に使いながらコツコツ細部をつめていくつもりだ。


「しかし凄いですよね。司さん、配信者ストリーマーだったなんて」

「いや、あくまで裏方だから」


 当然ながらあんな特殊な間取りだ、(別に隠していないが)職業を言わないわけにもいかない。


「でも、配信とかできるようにするんですよね!? 私も、興味あるんですよねぇ~」

「あぁ、もし挑戦するなら……」


 現役JKに距離をつめられて勘違いしてしまいそうになるが、配信やクリエイター系の職業は若い世代に人気がある。大学生あたりになると親の目や現実的な問題もあって下火になるが、それでも身近にそのサポートができる人が居たら、お近づきになりたいと思うのは道理だ。


「ほらッ!! ドーナツ、冷めちゃうよ、食べさせてあげるね」

「ちょまっ、最初から冷えて…………もがっ!? ちっ、力、つよすぎぃ」


 ワカメちゃんの口に、無理やりドーナツが押し込まれていく。


 裏方としてかかわっておいて、いや、かかわっているからこそ、ストリーマーの配信は見れていないのだが…………こうして女の子たちが絡み合っている姿を見るのは微笑ましく、そこにコンテンツとして大きな需要があるのを実感する。


「シナモン、もらうね」

「あ、私も、はんぶん…………ンゴ!!!?」

「ほら、つぎはコレ!!」

「ぐっえ!? ちょっと、マジで、入ってる、はいってるから!!」


 飛び散るドーナツの粉。早苗さんに怒られないよう、あとで掃除しなくては。


「ほら、あ~んして、食べ終わったら、さっさと帰ろうね~」

「せめて、のみもの…………ぐべっ!!」


 飛び散るドーナツだったもの。そういえば床は、安い断熱シートを敷きつめ、その上に防音シート、さらにその上をタイルカーペットで覆う予定だ。あまりホコリが舞わないものを選んだつもりだが、機材もあるのでロボット掃除機や空気清浄機を入れるのもいいかもしれない。


「つぎはお茶だよ~。大人しく飲まないと、大変な事になっちゃうよ~」

「まずっ、それは、お願いだから普通に…………びやぁ!?」


 飛び散る形容しがたいもの。防音性も加味してタイルカーペットにするつもりだったが、掃除の手間などを考えるとフローリングシートも良いかもしれない。




 そんなこんなで悩ましくも楽しいリフォームは、順調にすすんでいた。

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