#016 外出着
「その…………変じゃ、ないかなぁ?」
「ん? いいんじゃないか??」
3人で出かける事になり、着替えて再集合。しかしケイは、なんとも決まりが悪そうだ。服装は大学生などが着がちな、ラフ目のパンツルックで(男で言うところのジーパンTシャツのように)良いも悪いもなさそうなものだが。
「その、あんまりちゃんとした外着、持ってなくて」
「あぁ、普段ジャージだしな」
そういえば俺も中高と制服だったから、外出着は本当に少なかったし、似たり寄ったりだった。ケイも中学生であり、立派な思春期女子。背伸びしたつもりのコーデだったのかもしれない。
「うぇぇぇぇいい!!」
「ぐふっ!? ジュンは相変わらず、性別不明だな」
「????」
ジュンの全力タックルを受け止める。半ズボンのせいで男の子感が増すものの、ジュンの場合は年齢も不明だ。普通はもっと落ち着きや恥じらいがでる年頃だと思うのだが…………カオルと同じで、たぶん二次成長期まで引っ張って別人に進化するパターンなのだろう。そのままって、ことは無いよな??
「もしかして姉ちゃん…………服、買いに行ったのかもね」
「あぁ~」
朝、カオルの様子が変だったのだが、合点がいった。誘ってくれれば車を出したし、実際に誘う事も考えただろうが…………服の売り場は男女で分かれているし、下着や水着もとなると流石に恥ずかしいだろう。早苗さん曰く、まだ成長しているらしいし。
「それでそれで! 電車で行くのか!?」
「あぁそうだな。駅までは徒歩だ」
「うげぇ~」
「べつに、ケイは自転車でもいいぞ?」
ハナレのリホームもあって車を買うのは当分お預けだが、自転車くらいは買ってもいいかもしれない。
「ん~~、た、たまには歩こうかな? 一人だけってのもアレだし、いちおう」
お腹を摘まむケイ。俺からすれば痩せている部類なのだが、女性は僅かな差も重要。なにより最低限の筋力(体力や基礎代謝)は成長期のうちにある程度つけておいた方がいい。とくにケイの場合は、座って作業する時間が圧倒的に長くなるだろうし。
「いっそ、ジムとか登録してみるか?」
「えぇ~~、そこまでは……」
あからさまに嫌そうな表情だが、後ろ髪惹かれているようにも見える。
「じっさい、ストリーマーは体力がなさ過ぎて(生活習慣が終わっているのも含めて)頻繁に体調を崩す人も多いから、散歩とか、ちょっと意識してやるのも良いかもな。なんなら付き合うぞ」
「それは…………考えておきます」
「なぁなぁ、早く早く!」
「おっと、そうだった。そろそろ行くか」
「おぉ~~!」
「お、おぉ……」
*
「ねぇねぇ、あれ! 若宮さんじゃない!?」
「え? あぁ、ホントだ」
中学生らしき女子が二人、駅へ向かう同級生の姿を見つける。
「嘘だよね? 子連れで、いつのまに結婚……」
「いや、普通に兄と弟じゃね? 兄弟、いるって言ってたし」
「あれ? 女姉妹だったと思ったけど」
「どうだろ? あんまり話したこと無いし」
「もしかして!」
「??」
「パパかつ……」
「なわけあるか! 冗談でも、そういうのよくないぞ。噂が変に広まる事だってあるんだし」
発想が飛躍しがちなA子(仮名)と冷静に突っ込んでいくB子(仮名)。2人はケイのクラスメイトであるものの、席が離れている事もあり、これまであまり接点は無かった。
「へぇ~ぃ。でも年も離れているっぽいし、可能性はゼロじゃ……」
「ゼロだから。こんな田舎で、あり得ないだよ? 兄弟か、従兄かなにかじゃないの??」
「でも、あれ、なんかメスの香りを感じるんだよね」
「メスって……」
「若宮さん、まんざらでもないんじゃない?」
「それならそれで、(援助交際の)線は無くなったわね。立場が逆だから」
「あぁ、それもそうか。じゃあ、普通に年上の彼氏ってことか」
「だから、なんでそうなるのよ! いや、そう、だよね??」
否定はするものの、A子はこのての嗅覚が鋭く、学校でも秘かに付き合っていたカップルを何度も言い当てている。次第にB子も、もしやという気持ちが湧いてくる。
「やっぱり付き合うなら年上だよね~。大学生かな? 紹介してほしいな~」
「やめろって、つか、ホントに止めて。マジだったら本当に悪いじゃん」
じっさいケイの仕草は、多少のぎこちなさこそあるものの、雰囲気は幼馴染カップルのようにも見える。中学生は、年上の異性に憧れを抱きやすい年頃であるのも含め、2人の目にはその光景が輝いて見えた。
「いや、紹介してもらうのはお兄さんの友達だし。まさか……」
「ちが!? そんな私は、べつに!!」
「なるほど、あんな感じがタイプなのね。もし付き合っていなかったら、イイんじゃない??」
「だ~か~ら~」
顔を赤く染めるB子。もちろん本気ではないだろうが、恋に恋する年頃でもあり、過剰に反応してしまう。
「駅に行くみたいね。どうする??」
「どうもしません!!」
こうして2人は、異性と行動するクラスメイトの背中を見送った。
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