花と詩旅~モンステラ様鑑賞され疲れ~
釣ール
Swiss Cheese Plant【スイスチーズプラント】
カムベルの旅は続く。
記録を書くのだから近い場所から遠い世界まで気楽とはいえ風に乗って飛び回る。
花びらに変形することで地球上を風に乗って移動出来るからか、たまに会う異国の子蜘蛛達と話したりもする。
お互いに食性が違って良かったと皮肉を言えるぐらい何度と同じタイミングで飛ぶ蜘蛛もいる。
そこで蜘蛛達のうわさになっていた以前お会いしていたホウライショウ様ことモンステラ・デリシオサ様が、孤独をまぎらしたいとカムベルを探していたと聞いた。
久しぶりどころか二回目で、面識という面識もなく当時残した記録を振り返ってもピンと来なかったのだ。
当時モンステラ様は観賞用として人間と暮らしていた。
しかし人間達は徐々に人生を終えて今やモンステラ様のみ。
まだ植物の中では比較的若い方なのだが人間とは何もかも構造や文化が違うからか、当時と変わらず話せそうだとモンステラ様の元で育った蜘蛛達が言っていたので安心できる。
花びらから元の姿に戻り、記憶と記録を頼りにモンステラ様が住む廃屋へと向かう。
典型的な廃屋の末路として、新たなツタ達が歓迎をせず無言で通してくれる。
仲が悪いわけでは無いが、住処の独占欲が強すぎるツタ達は本体を隠すための部位でありそれぞれ意思がある。
ツタ達のコンプラは厳重で永遠に本体の方と話すことはないだろう。
やっと廃屋の中でモンステラ様と会うことが出来た。
久しぶりとはいえ会話の数は少なく、挨拶を終えた後に世間話をした。
人間が与えた栄養剤や土が良質すぎてその辺の大地では満足出来ず、太陽光のみがモンステラ様を残酷に生き長らえさせる。
廃屋はツタ達によって支えられてしまって誰も訪れることのない廃屋でモンステラ様は過ごすしかない。
カムベルのような植物が羨ましいと何度も愚痴っていて、その度にカムベルはモンステラ様へ共感の意志を伝える。
『気ままも苦労が付き物です』といったエゴイスティックな否定は絶対にしない。
それはカムベルが何度もその地で生きるしかない植物達を知っているから。
やはり会話は少なく、思ったような再会にはお互いならなかった。
託された大きなモンステラ様の果実と種を手に取って散歩をする。
ひいきにしている鳥類へカムベルの居住地に運ぱんしてもらうよう連絡せねば。
人間に鑑賞されて疲れていると満更でもなさそうに話していたあの方が、今や寂しくて疲れるとは。
人間との生活に染まりすぎている。
カムベルはそんな関係によって発生する悲しみを経験せずに生きていることに何処か納得できない感情が芽生えた。
花と詩旅~モンステラ様鑑賞され疲れ~ 釣ール @pixixy1O
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます