ロータス・プロミア
音紅
第1話 過去の夢
「ねぇねぇ、さっくん」
「どうしたの?りーちゃん」
これは……夢だろうか。夢だとしたら、また随分と昔の夢を見ている。俺がりーちゃん……
「今日は、さっくんはいつまでいるの?」
「今日は……わからないなぁ。お父さんのおしごとがおわるまでだから……まだもう少しはいられるんじゃないかなぁ」
「そっかぁ……」
夢の中の莉亜は俺が帰ることを残念がっている。この頃は
「わたしはね、さっくん。さっくんとずっといっしょにいられる方ほうを考えたの!」
「ぼくと、ずっといっしょにいられる方ほう?」
「うん!かんたんだよ!大人になったら、りあとさっくんがけっこんするの!」
「けっこん……ってなあに?」
「けっこんっていうのはね!りあとさっくんがこれからもずっといっしょにいられるやくそくなんだって!」
「やくそく?」
「そう!やくそく!」
懐かしいな……この頃はお互い純粋で、俺は結婚が何なのかも分かってなかったんだっけ。でも、この頃から莉亜は結婚について若干理解してる節はあった。だからこそ、俺に対して結婚の約束なんてしたんだろう。そんな約束、絶対に守れるはずがないのに.....
「ぼくも、りーちゃんといっしょにいたいな。ずっと、ずーっと!」
「だよね!でも、けっこんは大人じゃないと出来ないらしいんだ〜」
「そうなんだ……じゃあ、ぼくとりーちゃんはいっしょになれないの?」
「そんなことないよ!だから、これはやくそく!」
「やくそく?」
「うん!わたしとさっくんは大人になったら、けっこんするっていうやくそく!」
この頃は、まだ養父とは打ち解けられてなかった。よくよく考えれば無理もない。いきなり自分を拾った男が新しい父だと告げられ、直ぐに打ち解けられる程、大人にはなれない。当時はそもそも6歳とかそのくらいだったはずだ。余計に無理であろう。
そんな俺を見て悩みに悩んだ結果、養父は九頭龍家現当主であり莉亜の父親である
「それで、本当にぼくとりーちゃんはずっといっしょになれるの?」
「うん!本当だよ!」
「なら……やくそくする!ぼくも、りーちゃんとずっといっしょにいたい!」
「なら、やくそくね!」
「ゆーび切ーりげーんまーん、うーそつーいたーらはーりせんぼんのーます!」
「「ゆーび切った!」」
この後、帰宅後にこの話をしたら親父は少し苦い顔をしてたな。ただ、当時は子供の約束程度としか思われてなかっただろうし、実際に今もこの約束を莉亜が覚えてるかは謎だ。ただ、覚えていたとしてももう関係ないだろう。今は俺は九頭龍家に仕える使用人だ。それに、九頭龍家のご令嬢である以上、俺みたいな虫が近付くのも本当は嫌だろう。参ったなぁ.....これを莉亜が覚えてたら針を千本も飲まされることになるのか.....まあ、その時はその時だ。そして、そんな昔の夢も、終わりを迎える。この夢を見るのは3度目だが1度目も、2度目も同じ場所で目覚めたのだ。恐らく、今回も同じ場所で目覚めることになるだろう。
ピッピッピッピッ......
「......んう?くあぁ.......朝か」
この夢は1度目も2度目も指切りげんまんをした後に目覚めた。どうやら、今日も同じだったようだ。
「しっかし、未だに莉亜の夢を見るとはな。あいつとはただの親友で九頭龍家では主従関係だろ......ったく」
最近は昔の夢を見る機会が増えたように思う。それもこれも恐らく莉亜と同じ高校になったからかもしれない。小・中学は元々別の学校だったからな......久々にちゃんと顔を合わせた莉亜は入学式から俺の胸にダイブしてきて大変だった。クラスの面子に対して誤解を解くのは中々に骨の折れる作業で初日から疲れさせられたのを覚えている。だが、抱きついた当の本人は全く反省の色がなかったともう1人の親友から連絡があった時はどうしてやろうか迷ったぐらいだ。あくまで今の莉亜との関係は親友止まりでそれ以上のことは無いというのに......全く、初日から面倒なことをやらかしてくれたものである。
「お兄ちゃ〜ん!朝ごはん出来たよー!早く降りてきて〜!」
「分かったからあんまりデカい声を朝から出すなよ光。もう少ししたら着替え終わるから」
「冷える前に着替えてね〜。冷えたら美味しくないよ〜!」
妹である
ロータス・プロミア 音紅 @Neiro_Yukino
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