第7話


 予想の斜め上を行くグー〇ル先生の解答に驚き、何をしていたのか忘れていた。

 そうだ”可愛い”スキルについて考えていたのだった。

 ……別に思い出さなくても良い事だったな。


 だが、思い出してしまったついでに考えてみるか。


 語学表現について語れる学は無いので、あくまで俺の独断と偏見ではある――


 ”可愛いスキル”の場合、その”スキル”自体が可愛いものだと想像した。

 が、”可愛い”スキルにすると、”可愛い”という事が、スキルになった印象を受けた。

 急に小悪魔感が生まれる。


 その上で『”可愛い”スキルで、追い出しを始めました』という部分に着目し考えてみた。

 ”可愛い”を武器にした令嬢が、何かを排除していく話なのか?とも想像出来てくる。

 悪徳令嬢モノを、転生するでも無く、そのまま悪徳令嬢として描く作品か?

 もしくは、悪徳令嬢である事を隠しながら”可愛い”スキルで、邪魔なモノを排除していくとか……

 少し興味が湧いてきた。


 だが、我に返り思い出す。


 令嬢はお腹がゆるいのだ……。

 ついでにバトルもの……。


 わけわかんねぇよっ!!

 何でチョイスが微妙におかしいんだ?赤坂の頭の中はどうなっている?

 シャケイクラ論争(気になった方は調べて下さい。解決済み案件です)以上に、意味不明だ。


 俺が真剣になるべき事では無いのだが、創作の有力なヒントがあるのに、そこを敢えて避けているような流れが実にもどかしい。

 例えるなら、音声案内をオフにしたカーナビで、目的地をセットしているのに、案内表示に全く従わない運転手を、助手席から黙って見ている心境だ。

 まぁ、そんな場面はほぼ無いと思うが……。



 「何をそんなに難しい顔をしているんだ?何か考えがあるなら言ってみてくれ?」


 お前が何を書きたいのか、さっぱり分かんねぇんだよ!と思い、言葉にしようとしたところ――


 「そう言えばさぁ。昔は”かわいい”って”恥ずかしい”って意味で使われてるのが多かったみたいだよ?」


 炬燵で寝転んでいた沼田が、また突然、訳の分からないトリビアを口にした。


 「なるほど!では、”恥ずかしいスキル”もしくは、”恥ずかしい”スキルでも、良いという事か!」


 赤坂は何か閃いた様子だった。



 『ゆるい(お腹の)令嬢が、可愛い(恥ずかしい)スキルで、追い出しを始めます』って……品の無いギャグ作品くらいしか出来ないだろ?どうバトルすんだよ?


 興を削がれた俺は、完全に読書(漫画)モードに入った。



 何となく手に取った、現代の「斜め上」の語源となる本を読みながら「やっぱ、すげぇなぁ」と、感心していた。

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