第2話


 「これって、どっちがタイトルでどっちがあらすじなんだ?」


 赤坂はスマホの画面を俺に向ける。

 何の話だ?と、俺は困惑しながら画面を見た。


 『マルヨム』という小説投稿サイトのトップページだ。


 「あ?こっちがタイトルで、こっちがキャッチコピー」

 「タイトル長ぇな」


 そのくらいの予備知識は持ってからWEB小説書くって言えよ!と、言いたかったが止めておいた。

 面倒なので。



 仕事納めも終わり、年末の気怠い雰囲気の中、赤坂の家に俺と沼田は居た。

 特に何をするでも無い。

 ただ、何となく退屈だったのだ。ここに居ても暇な事は変わらないが……。



 「というか、キャッチコピーより、タイトルの方が内容分かるんだが?」


 何を当たり前の事を言っているんだ?と、その発言に驚いたが、確かに世間一般の常識に当て嵌めるとそう思ってもおかしくは無い。


 「今の時代のスタンダードはそういうもんだ。タイトルで内容明かして興味持たせるんだから」

 「なるほど。そういう事か。これも戦略だと。ならば、桃太郎のタイトルを現代風にアレンジさたとすると【むかしむかしあるところに……】」

 「いや、そうじゃねぇだろ!タイトルで本編始めてどうすんだよっ!全体の内容が分かる様にすりゃ良いだけだ」

 「例えば?」


 なんだ?この大喜利をさせられている様な状況は。

 だが、俺は真剣に考えた。


 「そうだな……【桃から生まれたんだが、チート性能で鬼を無双する~気が付いたら億万長者になってました~】みたいな感じか」

 「なるほど……。概ね伝わってきた」


 「でも、本当は桃太郎ってさ……」

 「今、そういうの良いから」


 沼田が何か余計な事を言おうとしたので釘を刺して置いた。

 適当に終わらせるべき話を拡げるつもりは無い。


 「では、浦島太郎ならどうなるんだ?」


 何故日本昔話シリーズ?

 いや、まぁ、そういう方が分かり易いか。

 下手に難しいお題を出されるよりは、やり易いし、伝えやすい。

 ”お題”?何の話をしてたんだっけ?


 「ん~~。【通りすがりで亀を助けたら、絶世の美女に気に入られて家に招待された件】とかか?」


 俺は本当に何を言っているんだ?と、思いながらもちょっと良くできたかも?という達成感もあった。


 「でも、本当は浦島太郎ってさ……」

 「今、そういうの良いから」


 再び沼田に釘を刺す。

 そもそもトリビアを披露する場じゃない。


 「なるほど、理解した。……では、俺はどんなタイトルから始めればいい?」


 赤坂の言葉に「知らねぇよ」と、答える様な態度で漫画本を読み始めた。

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