第2話 カカオ&アフリカオオコノハズク編

結構なシリアス展開になります。注意してネ。











この2人はパークの長としての役目を四神とそのリーダーであるカエデと黄竜に渡し、知的好奇心を持つフレンズや生まれて知識を付ける時期にある子供に勉強を教えている。

文字に数字、文化、生活の営み。細かいところまで多くのことを教えていた。人間の年齢で言って仕舞えばもう57歳ほどまで生きた2人は多くのフレンズに後の人生を託すための準備に取り掛かっていた。

ある日、2人は書類の束に向かっていた。

彼らの子供を中心に構成された研究団が帰って来て、研究や調査の結果を書類にまとめ、報告したのだ。その分析などをするため、図書館に篭りきりになる2人だった。


「…カカオ、ちょっといいですか?」


「ん?」


「別の島でも同じフレンズが確認できたらしいのです」


「え!?本当!?」


「でも、話し方だとか生活が違うらしいのです…。こっちのアルパカはカフェを営んでいて話し方も特徴的なのです。研究対象のアルパカはカフェは営んでない、話し方はこっちと比べて非常にかっこいい、らしいのです」


「うーん、謎が深まるねぇ」


2人にとってその研究基調査結果は興味深いものだった。同じフレンズなのに違う存在…誰かの子供とも認識できないその内容は2人の知的好奇心を刺激した…が、それよりも知的好奇心を抉る内容があった。


「なっ…!?カカオ、見るのです…!」


「何々?」


「調査先にミライがいた、と言っているのです…!」


「え!?」


「しかも普通のミライなのです!こっちはとうの昔にフレンズ化したはずなのですよ!?」


同じ個体のフレンズが生まれる可能性は十分あり得る。話し方が違えども、それは同じ個体と説明がつく。だが、人間はそうもいかない。瓜二つの人間がいる。それはドッペルゲンガーと捉えるべきか否か。2人は非科学的なことは否定するため、説明することができなかった。


「…と、とりあえず、私が読むので驚かず、全部聞いてほしいのです…」


「うん…」


「『我々が調査した島は驚くべき事実が多かった。これから我々の故郷を1、調査先を2と称する。島自体は1と2は大きく違った。だが、一人のリーダーに見える人間と5人の戦闘するフレンズで構成される探検隊の存在。1では撲滅されたはずのセルリアンの存在。1に存在する瓜二つのミライの存在。その他諸々、この島には不可解なことが多すぎる。

探検隊はリーダーである人間、ドール、ミーアキャット、マイルカ、ハクトウワシ、ライオンで構成されていた。

1 人間

調査先には人間がいた。発見した限りでは探検隊のリーダー、ミライ、カコ、ナナ、カレンダ。この5人だった。彼らは我々オスのフレンズを見た途端目を変え、話しかけて来た。フレンズはオスがいないこと、2でもそれは間違いなかったことから身の危険を感じたため、咄嗟に逃げたため、人間について深いデータを取ることはできなかった。

2 セルリアン

2の島のセルリアンは1で撲滅されたセルリアンと比べて大きく違っていた。1のセルリアンは例外を除き、基本的に青と黒のセルリアンが発見されていた。オレンジの父である理玖もそう話していたことから、間違いないだろう。しかし2のセルリアンは非常にカラフルであり、形も多く見受けられた。大きいものでは四足歩行のものが発見された。身の危険を感じたことから加勢することはできなかったが、非常に凶暴で一体倒すのも数人がかり、ということを目視で確認した。

3 瓜二つのミライ

1にはすでにフレンズの血を得てフレンズ化したミライがいるが、2にはまだ人間の状態のミライがいた。一度接触できたのみだったが、性格等に1との変化は見受けられなかったため、1と2のミライは同一人物であって同一人物ではない、という判断をした。非常に難しい内容である故、このような判断しかできなかった。

他の調査結果は別紙にまとめておく。此度の研究と調査は非常に興味深いものだったと言えるだろう。休憩後、我々は二手に分かれ、この島を調査する班と新たな島を発見する班の二つの班に分かれることとする。のちの研究は責任者である博士と教授に全てを託すこととする。』…」


「…」


この結果報告は、2人にとって驚愕の事実でしかなかった。別の島ではまさかこのようなことがあったと、思ってもいなかった。


「…そっか、ありがとう」


「…これは、研究が難航しそうですね…」


「そう、だね…まず、ミライさんの話からだ。コノハは、どう捉える?」


「…私は、双子なのでは?と考えます」


「双子、か…確かに瓜二つの双子の事例はいくつもある…でも名前まで一緒、なんてことは聞いたことないな…」


「名前まで一緒なら呼ばれるときも困るのです」


この研究は実に難航していた。何から何までわからないことだらけ。何から手をつければいいか、全くわからなかった。



そして数日後、再び帰って来た研究団の報告書が来た。


「内容を読み上げるですよ…?」


「うん…」


「『第二報告書

2は1と同じジャパリパークだということが判明した。それも人間が出入りするための、一種の施設だということだった。しかしセルリアンの対処に追われる形で時間が度々起き、一般向けにオープンされることは今のところないとされる。

2は1のようにフレンズが自由に暮らす、というよりかは人間との共存が目的かのように思われる。体力測定というものを行い、身体の健康度などを確認し、それに対し人間が助言を入れたりすることらしい。そう思うと1のゆうえんちも実は人間との共存のために、人間とフレンズのための施設ではなかったのだろうか。

次に我々は、神々のフレンズである四神に接触してみた。1と比べると試練を課すことが多くあり、特にセイリュウはそれが顕著だった。他の四神も探検隊には自ずと力を貸し、共に戦っているらしい。

1にも2にも存在するフレンズだが、同じ者もいた。マイルカが特にわかりやすかった。しかし、以前のアルパカのように声や性格が違う、ということも少なくはなかった。ドールがそうだった。

今後も調査を続けていきたいが、2でセルリアンの行動が活性化して来ている。危険があれば報告する。』」


セルリアン…今ではフレンズの知識から外されようとする存在。だが、この先の未来、どういう異常が起きてもいいように訓練するフレンズもいる。大きい被害を出しているらしいセルリアンがもしこっちに来たら、危ない、と思う…


「…コノハ、たまには体、動かしておこうか…」


「…ですね…流石にこのセルリアンは幾多の困難を乗り越えて来た我々でも脅威に値するのです。体制は万全にしておくのが、筋なのです」


そこから2人は訓練に励んだ。同居人であるワシミミズクとアップルに悟られぬように。何十年も前のセルリアン撲滅作戦。その頃の勘は失われていなかった。己の羽を射出し、正確に、相手の弱点を突く。かつてしていたことであり、平和となったこの世界では不要な力…と思っていたが、案外危険は近くに来ていたのかもしれない。

そして、次の指示を出した。「セルリアンの動向に深く注意しろ」と。



第三報告書

四足歩行型のセルリアンはかの島に壊滅的な被害をもたらした。皆が避難しろと叫んでいる中、決死の覚悟で探検隊がセルリアンに挑み、撃破した。しかし、ドールが力を失い、パークも本来の目的を果たせなさそうでいた。そのときドールから失われたものを「輝き」と称していたが、おそらくサンドスターで間違いないと思われるが、我々の思い違いである可能性もあるため、観察を続ける。




第四報告書

1と同じセーバルの存在を確認した。セーバルの動向を観察していた結果、「ぶちょリアン」と呼ばれるかつて1にもいたセルリアンを指揮するセルリアンの存在を確認した。ぶちょリアンはセーバルと酷似している姿へと変貌し、襲いかかり、セーバルを海へと連れ去ろうとしたが、アデリーペンギンによって救出された。そのとに、ぶちょリアンはセーバルを追跡せず、ミライに襲いかかり、サンドスターを奪った。その後の会話はよく聞こえなかったが、ミライの性格が大きく変化したと思われる。


第五報告書

セルリウムという物質が発見された。図書館に保管されているサンドスター・ロウは液状だが、セルリウムは宝石のような、物質だった。

カレンダという人間が以前採取していたものはセルリウムと判断する。2のジャパリパークでもより凶暴とされる黒いセルリアンの元となっていると考え、危険物質として採取することをやめた。


第六報告書

2のセルリアンは極めて危険だと改めて判断した。多くの形を持ち、それぞれ攻撃方法が違い、フレンズに多大な被害をもたらす。そしてぶちょリアンのようなセルリアンを指揮する存在が再び現れかねないと考えると、厳重警戒をする必要がある。

輝き…基、サンドスターを奪うと元の動物に戻るわけではなく、そのフレンズの何かを奪っている様子があった。実際トキのサンドスターを奪ったことで声が失われていた。また、巨大なセルリアンから空を飛ぶ物体で逃げようとしていたとき、空を飛ぶセルリアンによってその時いた空を飛ぶフレンズである助手やハクトウワシなどのフレンズもサンドスターを奪われていた。同じ調査隊の班があるサビオには違うとはいえ、見た目が母親同然ということで大きなショックを受けてしまい、リーダーであるヴァイスの判断により、サビオを調査隊から外すことになった。

そして、その物質の前で操縦を行っていたとされるラッキービーストのサンドスターも失われ、操縦機能を失った。我々は危険だと判断しつつ、セルリアンの調査を続ける。


第七報告書

2のセルリアンは異常なものだった。小型の白いセルリアンが確認され、追って行ったところ、他のセルリアンに取り憑き、そのセルリアンを白く染めていた。一種の洗脳と言えるだろうか。そのセルリアンを討伐すると、小型のセルリアンがかなりの数発生したことを目視した。おそらく小型のセルリアンを全て討伐しない限り永遠に生まれ続けるだろう。

そして、我々が飛べるセルリアン、通称、ハンターセルに襲われた。非常に強力な個体であり、戦い慣れている我々であっても討伐は困難だった。幸い被害はなかったものの、多数に囲まれた場合、次戦うことになった場合、その他多くの不安を考慮し、さらに慎重な調査を行っていく。


第八報告書

調査の永久中止を要請する。輝きを奪ったハンターセルは以前襲われた個体よりもさらに危険だった。この戦闘によりオウギワシが軽傷を負ったことによりこれ以上の調査は危険だと判断し、帰還した。もう一度要請する。調査の永久中止を要請する。








追記

2に向かう時や1に帰るときに海を越えるが、必ずとあるポイントで視界が歪む。今までは晴れだったが歪んだあとは何故か雨だった、ということもあった。そのポイントの横にはところどころ空間が歪んでいるような場所も見られる。偶然かと思っていたが、何度も起こるということで不安に思い、今回報告に至った。調査をお願いしたい。


事態は思っていた以上に悪化していたようだった。幸いこちらのパークに被害はなかったが、調査を依頼したフレンズに実害が出てしまった以上、要請を受けるしかない。


「…最悪…だ…」


しかし、これまた、気になる内容が多く書かれていた。追記がもし調査隊に危害を加えるようであれば、海を越えることを禁じなければならない。

だが、カカオには歪み、という点に一つ心当たりがあった。


「…ごめん、ちょっと聞き取り行ってくるね」


「?わかったのです…」



図書館の近くにある古びた社。そこにはとあるフレンズが住んでいる。


「すみませーん、いますか?」


「おー、カカオくんか。入って入ってー?」


オイナリサマ。オレンジの姉であり、豊穣を祈る神でもある。


「おぉ、カカオか。今日はどうしたんだ」


フェニックス。オレンジの(自称)兄(違う)であり、オイナリサマと結婚しているフレンズでもある。


「早速本題入らせていただきます。最近、海の向こう側に調査団を派遣させて、何があるか調査させているんです」


「…ほう」


目つきが急に怖いものとなった。何かを見定める…ような目つきをしている。


「2回目の報告でとあるポイントに着くと必ずのように視界が歪み、晴れだった天気が急に雨になる、だとかの報告を受けています。お二人は神であり、人間界にも深く関わっています。何か、知っていることがあれば教えていただけませんか」


「…っ、マジか…今のフレンズはそこまで行くんだな…」


フェニックスの目は見定める目から呆れとも取れる目つきに変わった。


「なるほどな?いいぜ。ここまで至ったお前たちを称賛して、一つ、真理について教えてやるか」


「…まぁ、カカオくんも元々は人間だったからわかるんじゃないかな?」


元人間だからこそわかること。ということなのか。


「いいか、研究しているならよく聞いておけ。これは神々の中でもかなり複雑な話であって、基本的には触れない話だ。それをよく覚えておけ」


「は、はい」


「…あの謎の歪み。単刀直入に言ってしまえば、アレは時空の裂け目、だな」


「時空の裂け目」


「世界を隔てる壁、とでも言うか?あの壁の先は別のジャパリパークが広がっている、そうだな?」


「え、なんでそれを」


「俺たちは、知ってるからだよ。特に今の人間界に通ずるところがあるからな」


「うん。これに関しては今の人間界を知らないと難しいかも…」


「…人間界において、俺たちは一つのコンテンツなんだ。ダイレクトに言ってしまえばな」


「コンテンツ…?」


…理解が追いつかなかった。自分たちがコンテンツの存在。それがどういうことか。


「…なぁ、タイリクオオカミが描いていたまんが。あれ、面白いよな」


「そうですね…非常に評判でしたし、描くのをやめたと聞いたら残念でした」


「俺たちなら、あの世界とこの世界を繋げることができる」


「え…」


「まぁその話は置いておいてだ。さっき言った俺たちが一つのコンテンツ、という話だが…それは決して、コンテンツの中の存在はそのことを知り得ない話だ。俺たちがいるからわかった、とでも言おう」


「えっと、つまり?」


「ギロギロはお前を認識しないがお前はギロギロのことを認識しているだろ?それと同じで、お前は人間界の人間を認識しないが、人間界の人間はお前を認識している、というわけだ。この世界はとある一人の男が描いた、とある世界の延長線だ」


…カカオは正直に言ってしまえば人間だった頃の記憶なんてとうの昔に消えている故、今の話もあまり理解できていなかった。


「…その顔は、いかにも理解できてない顔だな」


「…まぁ」


「…なんて言えばいいんだろうな、これ」


「簡単に言っちゃえば別世界だよ。似ているけど違っている世界」


「…?」


「えっとね、このジャパリパークの物語が紡がれるのはいくつかパターンがあるんだよね。確か…4個はあったかな?私も随分とこの世界に定着しちゃってるから、あまり覚えていないんだけど…この世界は、そのパターンの一つの延長線なんだよ」


「は、はぁ…」


「えっと、ちょっと待っててね…?」


本当に理解が及んでいなかった。知能レベルは他のフレンズより遥かに高いと言えども、所詮人間の記憶を無くしたフレンズであり、神の次元の話になるのだから、仕方ないとも言える。と言ってたら、オイナリサマがペンと紙を持って来た。


「さっき私は4個くらいパターンがあるって言ったよね?」


オイナリサマが線を引いて説明してくれる。非常にわかりやすい。


「で、私たちが今生きているのはこの世界…なんだけど、この世界は本来はここで終わっているはずなんだよ。でも、この世界の終焉を惜しんだ人間がこの世界の続きを描いたりしたんだよ。で、今私たちが生きているのはその世界の終焉を惜しんだとある男の人が紡いだ一つの作品なんだよ」


「…なる…ほど…?」


…少し、納得が行った。つまり、自分たちは生きているとはいえ、神々…今やフレンズの王であるカエデや黄竜よりも上の存在がいるということ。自分たちを作り出した、とある存在が。


「この世界はね、一瞬止まったんだよ」


「止まった?」


「うん。詳しいことを言うともっとわからなくなるだろうから控えておくけど、それでも人間界のみんなが覚えていてくれるから、この世界がまだ生きているんだよ」


「ほうほう…」


「この世界をここまで紡いだ男は、誰か一人でもこの物語を覚えていてくれればその世界、人物の続きは描かれ続ける。育ち続けるという考えを持っている。今もこうして俺たちが生きていられるのも、人間界の人間が覚えていてくれるから、とも言えるな」


「そんな中で人々に忘れられちゃって、消えちゃった世界もあるの。でも、力強く存在する世界もあるの」


「お前たちが調査しているのは、その力強く存在する世界だ。人間界の中でも大衆に認知され、今でも動いている世界だ」


「…あのね。今から言うけど…これだけは本当に、守ってくれる?」


「え」


また、2人の顔が真面目なものになった。


「君たちはね、本当に知的好奇心旺盛でここまでわかっちゃったの、すごいなって思うよ。でも、このことにはもう二度と触れないで」


「な、なんで…」


「あちら側に渡った存在が消滅しかねない」


「嘘…」


消滅。かつて戦って来た悪しき存在が消滅を免れた後思うほど、消滅が怖いこと。それは何度も見て来ている。


「俺たちはちゃんとした渡り方を知ってるが…お前たちは本来存在しないはずの入り口から入っている。それが修復されたら二度とあちら側にはいけない。そのときあちら側を調査していたフレンズはどうなると思う?」


「…あっちに…残される…?」


「そうだ。そしてこの世界がデータ化されている以上、人間を楽しませるために、バグ…不穏な存在は取り除かれなければならない。そうして、消滅を迎える」


「…」


「だから、何度も言う。あちら側に干渉するな。それがお前たちのためであり、あちら側のためにもなる。…実害、出てるんだろ?」


「…はい」


「なら、今すぐにでもやめさせろ。そして海に生きるフレンズたちにもあまり遠くに行きすぎるな、と勧告しておけ」


「わかり、ました」


「…だが、この報告、感謝する」


「え?」


「俺たちも、動かなければならなくなった」



「サビオ、今までご苦労だったのです…」


「博士…すみません…僕が不甲斐ないばかりに…」


「いいのです…私が悪いのです…私が、こんな指示さえ出さなければ…こんなことにはなってなかったのです…」


「それなら、さっき帰って来たばっかりのみんなに言ってあげてほしいのです…それが、僕に取って一番嬉しいこと、なのです…」


「…わかった、のです…」



「コノハ」


「あ、おかえりなのです…」


「…ちょっと、また出かけてくるね?」


「私も、ちょっと出かけてくるです…」


「…どうしたの?元気ないよ…?」


「…あんな報告を見て、私は間違っていたんだって…」


…確かに、カカオもそれは思っていた。その危険性を、実感していないからこその判断だったと。もっと早く、判断できていればこんなことにはなっていなかったと。


「…コノハ、大丈夫」


「カカオ…カカオは何故、こんなに平気なのですか…?」


「僕だって辛いよ…もっと早く判断できていればって思うよ…だけど、これを糧にしないと…」


「…カカオ…あなたは、本当にすごいのです…私の夫であるはずなのに、釣り合わないみたいなのです…」


「…ううん、十分釣り合ってるよ…大変なら、僕になんでもぶつけてくれていいから…」


「…ありがとう、なのです…ですが、まだ、やるべきことが残っているのです」


「うん…泣くのは、これが終わってからね」



「オウギワシ」


「博士か。どうしたんだ?」


「…申し訳ないのです」


「おいおい、急にどうしたんだ」


「私の判断が遅れたせいで、こんな事態になってしまったのです…!何ヶ月も、怖い思いをさせて本当に申し訳ないのです…!」


「…私は問題ないな。だが、要請は受けてもらえるのか?」


「…あの、永久中止のことですか…?」


「そうだ…ヴァイスとユル…博士の子供なんだろ?子供くらい、大切にしてやれ…あの二人、かなり危険な行動をとっていたからな…私たちがいたから助かったが、もしいなかったら今頃サンドスターを失って記憶も何もかも失っていたんだぞ…」


「…そう、ですか…」


「私は軽症で済んだから大丈夫だ。労いの言葉なら、あいつらにかけてやれ…」



海に着いた。この先には自分が報告されていただけで、知らない世界が広がっていると考えるとどうしても行きたくなってしまう。だが、危険であって、こっちにも被害が出かねないと考えるとやめないとならない。


「…さて、最後の仕事だ…」


海を歩き、多くのフレンズに話しかけて行った。あまり陸から離れるな。調査結果であり、危険が迫って来ていると。おおらかに考えるフレンズや己が強いと信じ込んでいるフレンズがいる以上、かなり壮大に伝えるとが一番いいと判断した。



「ただいま、コノハ」


「おかえりなのです…カカオ…子供に、謝りに行きたいのです…」


「うん…いこっか…」


「お母さん、聞こえてるですよ」


「え…」


そこにはなんともないヴァイスとユルが立っていた。いつも見る、笑顔で。


「僕たちはこの通り、なんともないから安心してほしいですよ?」


「よ…よ…」


「よ?」


「よかったのですぅぅ…!」


「ちょっ!?お母さん!?」


「あんな報告書を見て、もしお前たちに何かあったらと思ったら怖くて怖くて…!」


「…2人とも…」


「お父さん…」


「…よく頑張ったね。お疲れ様。そして…ごめんなさい」


「お、お父さんまで…ユル、こりゃ…大変になりそう…」


「あはは…ですね…」



あれからまた数年。僕たちは昔に戻ったかのように、幸せに生きている。みんなに知恵を与え、また自分たちも知恵を深め、美味しいご飯を食べ、みんなで寄り添って寝る。そんな何気ない日常が、その数年前と比べれば段違いで幸せに満ち溢れていた。妻が、子供がそばで幸せになってくれていること。笑顔になってくれていること。妻と子供が自分を愛し、愛すること。それが何にも変えられない、自分にとっての一番な幸せだということ。


「お父さん、ここはどうすれば…」


「ここはね…」


「カカオ、ちょっと見てもらいたいことが…」


「お父さん!見て!」


「あー!ちょっと待ってって!順番!順番ね!」


あの時神々がどうしたか、僕にも知らされていない。でも、そんなのはどうでもいい。触れたら、また涙が溢れてしまう。涙が溢れないように、過去の過ちをもって、今を幸せに生き、死ぬまでに最高の生活を送り、最後を看取ってもらう。それが、今の望みであるから。

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