異世界フレンズ生活〜ラスト〜

プリン制作人

第1話 オレンジ&タイリクオオカミ編

かの事件から何年も経ったとある日。

元々住んでいた家はイナの家庭に譲り、2人は結婚する前のようにロッジに戻っていた。

レオとイナとカエデ。三児の親としての役目を終えた2人は、実に老後といっても変わりない、本当に静かな生活を送っていた。漫画を描くのをやめ、平和で静かなな生活を以前から送っていたタイリクオオカミと強大な力を持ちつつ、平和を観測し続けるオレンジは…


「ほへぇ」


ご覧の通り、アホになっている。そう、マジでやることがない。

以前と比べればロッジに訪れるフレンズも増え、忙しくなったアリツカゲラを手伝う形として料理を作ったり話の話題を振ったりと、騒がしくはなっているが、アミメキリンがいないロッジはどうにも静かすぎて退屈だった。


「…ねぇ」


「…どうしたんだい?」


「久しぶりにさ、3人でパーク、回らない?」


「…急にどうしたんだい?」


「ほら、子供たちの顔も正月から見てないしさ…みんなの様子も見てみたくない?」


「ふふっ、それもそうだね?」


「話は聞きましたよ?私も連れて行ってくれるんですか?」


「もちろんだよ?」


「でもそれじゃあ私がお2人の間に入ってしまう形になって…」


「でもそれじゃアリツさんが寂しいし忙しいでしょ?ここ最近は働き詰めだったし、休暇としてロッジ閉めてさ、息抜きしない?」


「…では、お言葉に甘えてご一緒させていただきますね!」



翌日

しばらくの旅の準備もできて3人はロッジを発った。車はレオの方にあげてしまったことから、全て徒歩で向かうこととなった。最近運動していない2人にとっては十分な運動になることだろう。


「ふふっ、久しぶりに食べるジャパリまんもなかなか美味しいものだね?」


「そうだねぇ…サンドスターの供給もいらなくなった自分たちにとって必ずこれを食べなきゃいけないってわけじゃないしね」


あれから知識が豊富なフレンズたちによって営業されるへいげんのレストランによって多くのフレンズが数日かけてでもここに来るようになった。食事がそこで済ませられる関係上、ジャパリまんの需要も少し減ってしまった…心なしか、ラッキービーストの数も少し減ったような気がする。


「そうですねぇ…料理を覚えてからジャパリまんを食べることも少なくなりましたし…」


「おや、アリツさんは完全には無くなってないのかい?」


「夜遅くにお腹が空いてしまったときに食べてますよ?」


「あー、健康的だ」


「え?そうなのかい?」


「ほら、僕たちは油マシマシの肉野菜炒め作ってるじゃん…」


オレンジとタイリクオオカミの夜食は油マシマシの肉野菜炒めと決まっているため、健康的には良くない。外的変化は一切無いわけだが。


「でも野菜を摂っているだけでも偉いじゃないですか。ほら、レオ君なんか子供の頃は野菜が嫌いだったじゃないですか」


「ふふっ、あの子には苦労させられたよ…オレンジが作ってくれた野菜スムージーでなんとかなったけど…」


「嫌いなものを克服する時は気づかないところに入れるところから始めるのが、基本だよ?」



そうして数時間歩いて着いたのはゆきやまの温泉。2人も昔はしょっちゅう行っていたが、今は仕事が忙しく、なかなか行けていなかった。


「あら、久しぶりね!」


「お、ギンギツネ!久しぶりだね!」


「湯の花の調子はどうだい?」


「もうバッチリよ!私が見に行かなくても自動的に処理される機能は便利ね!」


2人がいつも温泉に入れてくれるお礼として湯の花を自動的に処理する機能を作った。わざわざ寒いゆきやまの中を歩いてみに行くのは大変だろうと思った2人の、ちょっとした配慮だった。


「ここに来た、ということは、温泉に入るのよね?」


「もっちろん!あ、今日は3人ね?」


「あら、アリツカゲラじゃない!この前のロッジの時は助かったわ!」


「無事帰れて良かったです!あの怪我は少し大変でしたからね…」


実は少し前、ロッジに向かうギンギツネが珍しく派手に転んだ結果、割と酷めな怪我を負った。


「今じゃ治療のおかげもあって元気よ!ささ、寒かったでしょう?ゆっくりして行くといいわ!」


「…あ、オレンジだ」


「おっと。キタキツネ、久しぶりだね?」


「久しぶりに一緒にゲームしたい」


「ちょっと!3人とも歩いて来たのよ!?先にお風呂に入らせてあげるのが筋よ!」


「えー…」


「まぁまぁ、一回くらいなら僕も温泉前に相手になれるよ?さ、2人は先に入ってて?どうせお風呂は別々だし」


「うん、わかったよ。さ、アリツさん、行こうか」


「はい…あ、お邪魔しますね」



「あー!負けた!?」


「やった!勝てた…!」


オレンジとキタキツネがやっているのは格闘ゲーム。この2人が出会った時からやっていたゲームであり、元いた世界の知識もあったオレンジが最初は優勢だったが、オレンジの影響もあり、今では即死コンボを覚えてしまい、オレンジをも超えてしまったキタキツネだった。


「全くもう…あなたと出会ってから本当に大変だったのよ?ゲームに没頭して、あなたに勝つことばかり考えていて…」


「あはは…でも、熱中できるようなことがあってよかったじゃないか…」


「そうだよ。ここまで変われたのもオレンジのおかげ」


「うっ…まぁ、私もオレンジを利用してキタキツネに色々手伝ってもらうことをしていたからあなたたちのこと言えないわね…」


「ギンギツネもやってみたら?結構面白いよ?」


「いや…あなたたちの様子を見てますますやる気が無くなったわよ…」


「ん、残念…」



お風呂に入って体を温め、温泉を出立し、次に着いたのは日々PPPのみんなが活躍するステージ…今日は予定にない通り、ステージ上にいなかった。

だが、オレンジたちはレッスン場に入ることを許されている。故に…


「やっほー?」


入るしかない。


「あら!オレンジじゃない!」


「久しぶりだなー!」


PPPの5人とマーゲイが出迎えてくれた。だが、今日はいつもはいないフレンズが二人。


「あら、懐かしい顔ですね」


「本当だね。何年ぶりだろうか」


そこにいたのはゴールデンタビータイガーことルビーとマルタタイガーことルターだった。

この2人はオレンジやイナたちと出会ったことで生き方が大きく変わったフレンズの2人でもある。オレンジに女の子らしさを教えられ、イナたちにメス同士の愛について教わった結果、ルビーとルターが結婚し、つがいになってしまった。2組目のメス同士のつがいになった。


「おっと、2人とも、久しぶりだね」


「ロッジは開けてきたのかな?」


「はい、少しの休暇として来ました!」


「あ、ごめんね、今日は差し入れ持って来てないんだ」


「あぁ、大丈夫だ。逆にもらってばかりで少し困っていたんだ」


「あ…それはごめん」


話を聞くに、ここ最近では今日はルビーとルターに教わっていたが、多くのフレンズの協力を得て、劇に挑戦しようという試みがあったらしい。故にルビーとルターにロマンチックな展開とその演技法について教わっていたらしい。適任すぎる。



ちょっと見学させてもらったところでまた出立し、今度は図書館に着いた。


「おいーっす!カカオ!」


「お!オレンジか!また見ないうちに…うん、変わってないね!」


「変わるわけないよ!フレンズだもの!」


図書館に着いて最初に出迎えてくれたのはオレンジの大親友であるカカオだった。ちょうど洗濯物を干していたところだったらしい。


「ところでオオカミさんもアリツさんも揃って、どうしたの?」


「あぁ、少し仕事を休んで、息抜きとして旅をしてたのさ」


「ほほう、なるほど!…でももうこんなに夕方だけど…」


「…そうだね」


正直その日のうちにどれだけ進むだとか、何も考えていなかった。ただ普通にその日行けるところまで進んでいた。だが、今日の限界は図書館までだった。


「…泊まっていく?みんな疲れたでしょ?」


「そう言ってくれるなら、お言葉に甘えようかな?2人はいい?」


「あぁ、いいよ?」


「いいですよ!私はどこでもよかったですし!」


「了解!じゃあ…今日は僕がご飯当番だし、みんなはゆっくりしてて!あ、あの3人には事情を話しておいてほしいな?」


「ほいよー」



「…というわけで、今日泊まらせてくれない?」


「別に構わないですよ。我々、いつでも誰かが泊まれるように万全にしてあるです」


「そうなのです!ありがたく思うですよ!」


「…それにしても本当に久しぶりだね…俺はロッジにいかなかったからかもしれないけど」


図書館の中にはアフリカオオコノハズク基博士とワシミミズク基助手とアップルがいた。みんな大量にあった本の片付けをしていたらしい。


「オレンジ、せっかく泊まらせてもらうわけだし、片付け、手伝わないかい?」


「それもそうだね…よし、手伝おう!」


「いや、別に手伝わなくていいのです!」


「そうなのです。場所とかわからないはずです。座ってるといいです」


そうしている間に2人が焦って片付けに行ってしまった。


「…事情説明しておくか。あのね、ここに謎の鍵が以前発見されてね、図書館から少しかけ離れた場所に書庫があった。だから、俺たち4人でさらにそこの書庫の本を読み尽くそうとしているんだよ」


「ほ、ほう…で、なぜ2人は隠そうと?」


「…少し、ね。これまた欲情を促すような本を見つけてね…そういった本は正直結婚してないフレンズたちには早すぎるしもしものことを危惧した結果、自分たちで厳重に保管しようという判断に落ち着いたわけなんだけど…どうにか、2人が最近それを見ることになって…」


「…あぁ、羞恥心ってことね?」


「そういうことだね。俺は俺に任された本を読み漁っていくだけだけど…」



カカオが作ってくれた夕飯はカレーだった。今日はカカオと博士のとある記念日だということで、思い出の品を作るためにカレーにしたらしい。


「…ところで、その記念日って?」


「我々に第一子が産まれた日なのです。こういう細かいことでも我々に取っては記念日なのです」


「おぉ!ところであの子たちは…」


「ヴァイスとユルとサビオの3人が中心になって飛べるフレンズたちで研究団を結成し、海の向こう側に長期的に研究をしに行ったのです。研究結果が楽しみなのです…!」


…海の向こう側。かばんが何かちょろっと言ってたような気もするけど、ミライもパークの外のヒトの世界からやって来たと聞いた。


「…ただ、少し悩んでいることがあるのです」


「ほほう?」


「我々はこうして結婚をし、つがいとなり、子を産み、人間らしい生活を送って来ているのです。…ですが、我々はフレンズ。けものらしい生活を送るべきでないか、という判断もあるのです」


「…そっか…」


「このままフレンズの皆に人間らしい生活を送らせることを望むのであれば所謂都市開発とやらを進めなければならないのです。フレンズに我々が住むような建造物を与え、知識を与え、そして豊かな生活を提供するのです」


「うーん…確かに、パークのこれからを決める重要なことだね…」


「これに関しては我々で考えていますが、全ては四神に最終決定権があるのです。我々は案を考えるだけなのです」


「あー、その心配はないよ?」


聞き慣れた声が聞こえ、後ろを向けばそこには…


「あ!お父さん!なんでここに?」


「カエデ!?」


カエデがいた。その資格も威厳もないと言っていたはずのカエデが、ジャパリパークの王としてのカエデが姿を見せてくれた。まぁ至って変わってないわけだが。


「…まぁ、ちょうどその話もこっちで決定されたことだから、報告して行くね?…この書類にまとめてあるけど、口頭でも伝えさせてもらうね?」


…この書類を見ればカエデがどれだけ成長したのか、すごくわかりやすい。見やすくまとめられた書類はカエデの性格を表していた。必要な要点のみをまとめ、簡単に、わかりやすく伝える。おおらかな性格のカエデらしい書類だった。


「四神としての決断は基本的にけものらしい生活をすること。しかしつがいとなったフレンズは例外…という判断に至った、といった感じかな?」


「ほう、もう少し詳しく聞かせてほしいのです」


「確かに僕たちが生まれる前からお父さんたちによって世界に文明がもたされた、と言っても過言では無いよ?でも、四神的には人間は愚行を繰り返す存在であり、正直言ってしまえばお父さんたちよりも過去の話、パークが人間に来なくなった事件から人間のことをあまり信用できなくなっていた四神がもし人間らしい暮らしを普通のフレンズに与えたら?ということを、考えたら怖かったんだ。僕も四神の術で追体験させてもらったけど…酷かったの一言に尽きたよ。だから、極力勧めない。けど望むのであれば相談すること、ということになったかな?」


「…なるほど。わかったのです」


「カエデ…大きくなったなぁ…」


「ふふっ、お父さん、それ何度も聞いた」


「いや、お母さんだって何度も思うさ!今ではこうしてパークを守る役目を果たして…母親として誇りに思うけどね?」


本当に、大きく成長した。別に野心だとか持ってるわけでもないカエデがまさか今では王になっていた。びっくりするものだ。


「…とりあえずそのように手筈を整えておくのです。ありがとうなのです」


「うん!じゃあ僕はそろそろ帰るね!」


「あ、カエデくん…ご飯、食べて行かない?」


「あー、ごめんなさい!ビャッコを待たせているんで!」


「あー、そりゃ仕方ないね」


「ビャッコ、本当に可愛いんですよ?あれだけかっこいい振る舞いをしているのに気づいたらドジるんですから…!」


…仲良くなったとはいえ、まだ神という次元が恐ろしいものである故、畏れ多いところがあるのにカエデは同じ領域まで至った上にビャッコのことを可愛いと言う。


「…さて、自分もお腹が空いたのでそろそろ!」


「わかったのです。報告ありがとうなのです」


「またいつか!では!ね


今まで見ていた頃と比べて信じられないくらいのスピードで森の中に消えていった。これも四神の力だというのか。



そのままご飯を食べ、寝て、起きて、礼をしたら即出立。次はへいげんについた。そこでは…


「よっしゃー!俺が入れた!」


「あー!負けたでござるー!」


皆で運動に勤しんでいるへいげんのみんながいた。もちろん、プラムも。


「お!オレンジとタイリクオオカミとアリツカゲラじゃねーか!久しいな!」


「ん!プラムー!」


「あ、もう創造はしないからな?もう疲れたからな…」


あれから神から与えられた術…所謂、神術はみんな封印することにした。超次元的な技はもう必要ない、とした。


「必要ないって!」


「…ところで、何故ここまで?」


「それは…」


the 割愛


「…なるほど!といってもまだ朝の8時だもんな。朝ごはんは…食べているか。どうだ?少し触って話でもしないか?」


「ん、そうだね…」



へいげんのみんなが運動しているのがよく見える位置に座って、雑談が始まる。ちなみにタイリクオオカミは運動に参加して、アリツカゲラは城にお邪魔することになった。


「…ところでさ、シキとシンはどうしているの?」


「2人ともジャングルに住んでいるぞ?シキはトランスバールライオンと結婚して、シンはサーベルタイガーと結婚している…まぁ、ライオンだとかが集まる百獣の王の一族の集まり関係だな。シンとサーベルタイガーは各地を放浪しながら過ごしているらしいからどこにいるかわからないが…たまに帰ってくるんだよな」


「ほうほう…じゃあ、シキくんには会っていこうかな?」


「あー、いや、やめといた方がいいぞ。あそこはマジで迷う場所だからな。俺も挨拶しに行ったときには丸一日迷ったからな…あそこに行くなら、ラッキーは必須だ」


「oh…あの2人は迷わないの?」


「そりゃあ、迷わないだろ。もはやジャングルは2人にとって庭みたいなものだからな」


…正直、ジャングルで生活するフレンズを舐めてたのもあった。確かにそこまでなければ生活もままならないのか。


「…お前んところは、どうなんだ?」


「…オオカミ連盟がすごいことになってるよ」


「あー、お前がリーダーやってるところだったか?」


「そそ。レオの子供が多くてね…成長してくれたからすごく助かる仲間になってくれたんだけど、小さい頃はもっと苦労させられていたし、今でも人数が多いからまとめ上げるのがもう大変大変…」


「はは…そりゃ、お疲れさんだな…俺んとこもシキとシンの子供が増えてな、大変なんだ。あ、シンとサーベルタイガーは各地を放浪していると言ったがな、妊娠してからはどこかに家を建てて静かに暮らしているらしいんだが…その家がどこを探しても全く見つからないんだ」


「え?どういうこと?」


「いや、言葉のままだ。本当に見つからん。リョコウバトに手を貸してもらったことがあるんだが、見慣れた建物しか見なかった、と言っていてな…」


…不思議なこともあるもんだなぁ。限られた大地の島なのに見つからないなんて。


「まぁ、7年くらいに一回くらいの周期で帰ってくるからな。その時に聞いてもいいな」


「え、長くない?」



しばらく雑談をして、2人を呼んで出立。次はこはん。道なりに進んで見えて来たのは…以前からあったヤグラのようなもの…に加え、立派な木造の一軒家。


「…ん?」


「…あ、オレンジさん…ですか」


森の中から声が聞こえたかと思ってそっちを向いてみればそこには、コスモスとフェネックの子供であるシオンがいた。


「…あ、シオンくん!久しぶりだね!」


「…はい、久しぶりですね」


やっぱり引っ込み思案な性格はいつまでも変わらなかった。


「えっと、ここで何を?」


「聞いていないんですか。…僕はプレーリーとビーバーと結婚したんです」


…まさかの重婚。確かに正式に四神によって許されてはいるが、本当にするとは思っていなかった。


「2人と!?」


「はい…最初はプレーリーのことが大好きでしたが、ビーバーのことも不安にさせたくなくて…」


「あー…優しいが故、だったか。まぁ、いいんじゃない?」


「…あ、立ち話も疲れますし…家…来ますか…?」



家に案内された。家の中は外見から見られるように、木造の家具や道具が非常に多い。これもあの2人が作ったのか。


「あ!オレンジ殿ではありませんか!それにタイリクオオカミ殿にアリツカゲラ殿!」


「お久しぶりです…!」


「ふふっ、久しぶりだね?ロッジに家具を提供してくれた時は助かったよ」


「本当ですね!たくさん使わせてもらってます!」


以前この2人から家具をもらったことがある。机に椅子、壊れたドアの修理もしてくれて結構助かってる。


「…コーヒー、ぜひ飲んでください」


「ん、ありがとね!」


「3人はどうしてここまで…?もしかして、私たちに修理の依頼ですか…?」


「あ、いや、ただの旅だよ。たまには休暇を取るのもいいかなって思ってさ?」


「仕事人は大変でありますなぁ…最近のロッジはどうでありますか?」


「そりゃまぁ、大盛況だよ。ご飯を食べに来るフレンズはもちろん、数日かけて他のちほーに行く目的があるフレンズにも利用してもらってるよ」


「できるなら僕たちも手伝いたかったんだけど…場所が場所だから行くのが…」


「ううん、私たちはその気持ちだけでも助かるよ。事実、3人でも忙しいけど回ってるし、その忙しさが逆に心地よく感じるんだ」


「私たちもありますなぁ…」


「シオンさんのサポートがあって、私たちも非常に作業がしやすいです…!」



こはんを出て、次はさばく…と言いたいが、すでにあの2人はさばくにいないことを知ってた上、暑いところが苦手だった3人は猛スピードでさばくを抜け、ロープウェイに乗り、こうざんのカフェまで来た。


「アルパカー、いるー?」


「いらっしゃあい!」


出迎えてくれたのはもちろんアルパカ。昔と比べてカフェの質も上がっていて、レストランまで料理を学びに来て、今ではカフェで出てくるような簡単なサンドイッチなどを作れるようになった。


「邪魔するよー」


「何飲むぅ?オレンジなら紅茶だと思うけどぅぉ!」


「うん、紅茶お願いするよ。2人は?」


「私も紅茶でいいかな」


「私もそれでお願いします!」


「あ、あとサンドイッチを3人分、お願い!」


「ちょっと待っててねぇ!」


学びに来た時とは大違いで慣れた手つきで素早く準備していく。本当に素晴らしいと思った。


「…ところで、トキたちは?」


「あの2人はねぇ、確かPPPの歌のレッスンをしに行くって言って今さっき出て行ったゆぉ!紅茶を持たせたから問題ないと思うよぉ!」


「あ、それはよかった」


あの絶望的な音痴が治る紅茶。アレを持たせていなかったらどうなっていたか、知ることはできないし、想像もしたくない。


「どう?カフェは滞りない?」


「トキたちが手伝ってくれるからすごく楽だゆぉ!」


「あ、手伝ってくれるならよかった。人手が足りないなら大変だなって思って」


「全然大丈夫だよぉ!お待たせぇ、サンドイッチと紅茶だよぉ!」


「ん!ありがと!いただきます!」


「…すごい精巧に作られているね…」


「これね、すっごく練習したんだゆぉ?」


「ふふっ、だからか…私もこれぐらい上手く作れたらいいんだけどね…オレンジをもっと喜ばせることができるんだけど…」


「ううん、今でも十分嬉しいよ。オオカミが作ってくれるだけでもすごく嬉しいし、その度に幸せを感じてるよ?」


「ふふっ、そう言ってくれて助かるよ」


「…本当に2人はお似合いの夫婦だねぇ。結婚するフレンズが増えて来て、お客さんが増えてくれるかなぁ」


「うん、きっと増えてくれると思うよ?」



カフェで軽く昼食を取ってロープウェイで下に降りて次はじゃんぐる…は、なぜかフレンズの気配を近くに感じられなかった。よく大勢のじゃんぐるのフレンズを巻き込んでシキくんとトランスバールライオンが遊んだり食事しているとプラムから聞いたからそういうことかもしれない。道を外れて探して迷ったら大変だからそのまま歩いて次はさばんなに向かった。

しばらく歩いているとコスモスとフェネックの家が見えて来た。


「…ん、なんだ、お前たちか」


近づいてくると家の前にずらっと植えられている花に水を与えていたコスモスの声が聞こえてくる。耳が良くなったから、ちょっと遠くでも聞こえる。


「うん、ちょっと休暇でね」


「なるほど、うちでゆっくりしていけ。久しぶりに会ったんだ、積もる話もあるんじゃないか?」



「やーやー、揃いも揃って久しぶりだねぇ。今のうちは騒がしいよー」


入るとフェネックが出迎えてくれた。そして…


「あー!ひどいのだー!」


「元からオレのだろうがぁ!?」


騒がしい声が。確かに騒がしい。


「…こういうことだよー」


「…まぁ、予感はしてた」


「まぁ、ゆっくりして行ってよー。お茶も出すよー?」



リビングでは慌てふためくアライグマとそれにツッコミを入れるツチノコとそれをお茶を飲みながら飽きていそうに見つめるスナネコ。どういう状況なのか、よくわからない。


「…あ、オレンジさんじゃないですか」


「あん?おぉ!?オレンジじゃないか!」


「久しぶりなのだー!」


「久しぶりだね!元気してる?」


「もちろんなのだ!」


「まぁ…見ての通りだな!」


「私はいつも通りですよ」


…あの静かな家がここまでうるさいのも違和感に感じる。だが、このうるささが逆に新鮮味があってこの家に新しい楽しみを生み出しているのかもしれない。


「で、お前らは何をしに来たんだ?」


「休暇を取るために各地を回ってるって感じ」


「じゃあ、何か不思議はなかったのだ?」


「不思議なもの…?」


「私たちはここ最近、この5人で昔みたいに旅をして何かを発見したり文化を探したりしてるのさー」


「ほほう、なるほどね?まぁ、不思議なものは見なかったかな…しばらくロッジに篭ってたような僕たちから見ればこの状況が不思議に見えるんだけど。あ、ツチノコ、ジャパリコイン」


「オァァァ!?」


持って来ていてよかった。ロッジに泊まらせてくれたお礼ということでたまに誰かから貰えたりする。こういうもの、ツチノコは好きということは知っている。


「どうだ、オレンジ。騒がしいだろう」


「あはは…そうだね」


コスモスが帰ってきた。花が好きなのは昔から変わっていなかったらしい。


「もし2人の旅のきっかけになるようなネタがあったら提供してやってほしい。俺たちの暇つぶしにも繋がるからな」


「うん…わかったけど、そうそうないからなぁ。そういうのは大体神のフレンズが事実を知っちゃってるわけだし」


「それを新しい解釈で感じるのも俺たちのやることだからな。そう言わずに教えてやってほしい。特に…ラッキービーストのことに関しては伝えてやってくれないか」


「ラッキーのことについて?」


「あぁ。あいつのことは未だに謎に包まれている部分が多い。ジャパリまんもだ。すでに人が来ていないのにどうやって稼働されているのか。ジャパリまんはどうやって製造されているのか。俺も知りたいからな」


「うーん、わかった。ロッジでも来てくれたらフレンズに聞いてみるよ」


「マスター権限を与えられたお前でもわからないことが多いんだ。何か知ることができれば有効活用の幅も広がるだろう」



5人のこれからの話を聞きながら、事情を聞き、ロッジに帰ろうとして歩いていたら、あの2人がいた。


「おーい!かばんさんやー!」


「あ!オレンジさーん!」


赤い服にイメージとも取れる羽のついた帽子とかばん。そして隣にいるのはもちろん、サーバルキャットだった。

この2人は言わずと知れたパークの有名人である。同性婚が許されているこのパークにて、友達、相棒の関係でいたいと言うことで結婚を拒否した2人でもある。今のかばんは背も初めてあった時と比べて大きくなり、成長している。だがサンドスターが成長を妨げているのか、大人一歩手前の姿になっている。これだけ生きていれば十分大きくなっていいと思ったのだが。


「久しぶり!サーバルも!」


「うん!久しぶりだね!」


「今日はどうしたんですか?こんなところまで」


「ロッジの営業の休暇としてみんなで旅してた!」


「休暇ですか!ずっとロッジで働いていた3人ですし、結構久しぶりに会ったフレンズさんもいたんじゃないですか?」


「何年振りのスケールのフレンズもいたしねぇ。かばんさんはこの前ロッジに来てくれたもんね。何ヶ月前だっけ…」


「大体三ヶ月前ですよ!あの時はゆきやまの温泉に用があって寄って行ったんです!」


「あ、そうなんだ…」


「オオカミさんも、オレンジさんとうまく付き合えていますか?」


「もちろんさ。ちゃんとまだ夫婦らしい生活を送れているよ?」


「アリツさんも、ロッジは大丈夫でしょうか?人手は足りていますか?」


「大丈夫です!お気遣いありがとうございます!」


「ならよかったです!」


「あのねあのね、この前かばんちゃんはね、すごいことしてくれたの!」


「ほほう、すごいことって?」



そこからしばらくサーバルからかばんのすごいところを聞いていた。正直すごいと思ってしまった。人間的にも、フレンズ的にも成長を遂げていたかばんはすごいことをしていたということを実感した。

そして、ロッジに帰ってきた。


「ただいまー!」


「帰って来ましたね!お二人も疲れてますよね?今日の夕飯は用意しておきますので、お二人は休んでいてください!」


というわけで、アリツカゲラの言葉に甘えて自室に2人で戻ってきた。


「ふふっ、楽しかったね?」


「そうだね?オオカミは、いい休暇になった?」


「風もたくさん浴びたし、話もたくさんしたから楽しかったよ。でも、一つ不満があったなぁ…」


「え?何か悪いことしちゃった?」


「ほら、オレンジは他のフレンズと話ばっかしてたじゃないか。私と話す時は移動する時くらいで…」


「あ…ごめん…」


「ふふっ、その分は…今日の夜、たくさん甘えるとするかな…?私はちょっと不満だから、覚悟することだよ?」


「…はい」


反省した夜だった。



そして翌日…

いつも通りロッジの清掃をしていた。そして、ロッジのドアが開いた。


「おっ!いらっしゃい!」


オレンジは今日もロッジの仕事にタイリクオオカミとアリツカゲラと共に勤しむ。亡くなった父と母のためにも、残りの人生を少しでも充実させ、幸せに生きるために。

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