第36話 刺激の強い水着姿

 先生に話を聞いたところ、あの女子生徒二人組はミクとミカという名前らしい。


 なんでこの二人が春姉に冷たいかを解明しようと言い出したら春姉はものすごく不安そうな目で俺を疑ってきた。


「大丈夫なの? ゆうちゃん」

「まぁまぁ、ちょっと思うところがあるからさ」

「ごめんね、本当は私がしなくちゃいけないのに」

「いいよ、こういう時こそ先輩後輩関係なくやっていこう」

「うん! ありがと!」


 春姉はそう言うと肩ぐらいの髪の毛を揺らしながら満面の笑みを向ける。


 危うくこんな猛烈な日差しの中見惚れるところだった。


「ねぇねぇ、ちょっといいかな?」

「…………なんですか?」


 ミクとミカが顔を合わせ、なんだコイツといった感じで俺の方を見る。


「あのさ、あの男子の中に好きな子いる?」

「――――っ! な、なんで?」

「ね、ねぇなんでわかったの? ミクちゃんに好きな人いるって」

「ふっふっふ、これが大人というものだよ、お子様たち」


 カッコつけて言ってみたものの、結構わかりやすかった気がする。

 俺じゃなくても、勘のいい子なら気づいてたりする程度だ。


「私ケンタって子が好きなの、あの赤い服着た」

「さっき言いあってた子?」

「そう……嫌われてるのかな?」

「い、いや、喧嘩するほど仲がいいっても言うし」


 あんまりにも、眉毛を下げながら、負のオーラを纏うもんだからあわててフォローに入る。


 しかし、俺のフォローが届いていない様子だった。


「わかってる、男の子が大きいおっぱいが好きなのは」

「いや、全員がそうとは限らないけど……」

「じゃあお兄さんは小さい方と大きい方どっちが好き?」


 純粋な眼差しを向けられ、言葉に詰まる。

 なんだろう、このとてつもない罪悪感。


「そ、それは大きい方が好きっていうか……」

「やっぱり、私じゃダメなんだ、あのお姉ちゃんみたく大きくないから」

「そんなことは……」


 ここで否定しても、またさっきの二の舞になることが予想できたので俺は言葉をググっと押し込んだ。


「ムカムカする、あのお姉ちゃんと仲良くしてると」

「ケンタずっと鼻の下伸ばしてるもんね」

「うん、良くないってわかってるんだけど」


 ミクはそう言うと、しょんぼりしていた。

 その頭をミカがぽんぽんと撫でている。

「そ、そうだったんだ、好きな人……」

「それで春姉が近いから嫉妬してたんだよ」

「やっぱり、おっぱいを大きくするしか……」


 やべ、と思った時にはもう遅かった、春姉は俺のことをギロッと睨むように見てくる。


 そろそろ、本当に怒られそうだと背筋が凍る。


「違うんだ、これはそういう意味じゃ」

「じゃあなによ」


 俺は二人が悩んでいることを春姉に相談した。


「なるほどねー、でも小学生なんてまだまだ成長の余地あるでしょ」

「そ、そ、そうだよねー」


 春姉が分かってくれて安心した。

 しかし、春姉の俺を見る目は冷たい物だった。


「なぁんか、この頃ゆうちゃんがえっちになってきてて私は心配だよ」

「健全な年頃の男の子ってことだ」

「知らない間に成長してるってことだよね」


 春姉は目尻を下げながら、優しく微笑む。


「ようし、次は川遊びだから、みんなで一緒に仲良くなれるように、頑張らないと!」

「そうそう、春姉は笑ってた方がいいよ」

「えー? 笑ってた方が素敵ってこ、と?」


 春姉はニマニマしながら、言って来る。

 からかっているのだろうが、俺だってやられっぱなしじゃない。


「うん、そうだよ? 笑ってる方が可愛い」

「え、え、あ、あの……」

「なにさ?」

「あ、ありがと……」


 春姉は顔を真っ赤にしながら、トボトボと歩いていく。

 あの顔を見れただけでも仕返し成功だ。


 耳まで真っ赤になって、慌ててる春姉はいつもより可愛い。


「よっしゃー! 遊ぶぜー!」

「おー!」


 男子たちは写真の時とは違い、川に直行する。

 他の班の男子と水かけして遊んだりしている。


「ゆうちゃんー、お待たせー時間かかっちゃって」

「おー、そんな慌てなくてもぉっ?!」


 春姉の水着だ。

 春姉の水着を見るなんて小学生ぶりなので、その成長ぶりはすさまじい。


 日差しすらも反射しそうな白桃色の肌。

 とても健康的な肉付きのよい、ふともも。


 それに肩まで伸びていた髪の毛を後ろで結び、小さいポニーテールにしている。

 言わずもがなだが、やはり春姉の大きな両胸の果実は大きく実っている。


 上は白のビキニで、下半身は花柄で白のパレオを着ている。

 なんか、いつもより雰囲気が違くて1歳差とは思えないほどの魅力がある。


 ただ単純に刺激が強い。


「なんでそんなに、びっくりしてるの?」

「い、いや? べ、別に……」

「あ、ごめんだけど、もう日焼け止めとかは塗ってるからえっちなことは起きらないからね?」

「それでびっくりしてたんじゃなぁい!」


 俺が大きな声で否定すると、春姉は手で口許を隠し、クスっと笑う。


「ふふっ、冗談だよ、ごめんね?」


 そう言いながら、背伸びをしながら俺のおでこをツンと指で押してくる。


 俺はそこで、ボーっと立ち止まってしまった。


「ねぇ、女の子の水着見た感想は?」

「…………似合ってるよ、いつもより大人っぽい」

「――――っ、そ、そっか……えへへ」


 春姉は満更でもない顔でにへらっと表情を緩くする。


「んしょっと」


 突然、春姉は水着の上からラッシュガードを着始めた。


「それ着るの?」

「うん、誰かさんが刺激が強いとか思ってそうだし」


 ギクッと心臓を握られるような感覚が俺のことを襲った。

 なんで俺の考えが分かるんだ。


「それに、

「え、見せたい人って……?」

「ん~? さぁ、誰でしょう?」


 春姉は満面の笑みで俺のことを見てくる。

 さっきの大人っぽい表情とは違くて、今度は悪戯っ子のような笑みで。

 

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