第21話 白組のチアガール赤組の学ラン応援団

 俺は、今玉入れの競技に参加している。

 自チームの応援のところに、学ランの応援団が居てくれる。


 狩人先輩の姿も見えるが……女子に囲まれて対応に困っているようだった。


「うちの応援団すごいな」

「だよな、荒風先輩がいてくれれば迫力倍だからな」

「あー、前に言ってた風紀委員の人か」


 荒風先輩の学ラン姿には、この学校じゃ右に出る者はいない。


 赤組が優勢だったとき、白組の方からものすごい歓声が聞こえてくる。

 それは……白組の応援団にはチアガールがいた。


 その先頭に立っているのは、朱羽先輩だった。

 その隣には、ものすごい笑顔を振りまいている春姉がいる。


「す、すげぇな……」

「チアガールか……男子生徒は燃えるだろうな」

「クソ、こっちもかっこいいが、あっちもいいな」

「そうだな」


 与一がそう言葉を溢す。

 たしかに、チアガールは羨ましすぎる……。


 男子は試合どころじゃなくなりそうだが……。


 1年生の玉入れの勝負は白組の勝利に終わった。


「ふふふん! どう? この白組の強さ」

「あ、朱羽先輩お疲れ様です」

「お疲れ様、少年」


 春姉の勝ち誇った表情がムカついたので、朱羽先輩に挨拶をして無視する。


「チアガールの衣装なんですね」

「あぁ、小春がこれがいいってね」

「また振り回されてるんですね……」


 俺がお疲れ様ですと苦笑いすると、朱羽先輩は笑っていた。


「ハハッ違うよ、私が最初に立候補して、小春をつき合わせてる」

「意外です」

「まぁ、振り回されたり、つき合わされる方が多いけどね」

「ですよね、共感します」


 俺と朱羽先輩の会話が気に食わなかったのか、ムッと頬を膨らませている春姉が見つめてくる。


「小春が少年とお話ししたいってさ」

「ち、違うもんっ。、し、しゅうちゃんと話したいだけ!」

「頼むよ、少年」


 ニヤついた、小悪魔のような表情で、春姉をいじり倒している。

 いじられて、あたふたしている春姉がなんとも可愛らしい。


「あー、話したいのかーしょうがないなー」

「べ、別に……」

「あ、そう? じゃあ帰るね」


 俺がそう言って、振り向いて立ち去ろうとすると、俺の袖をつかんできた。


「や、やっぱり……お話に付き合ってほ、ほしいかも」

「はいよ」


 そう答えると、春姉は笑顔になり、ルンルンとスキップをしながら、手を引っ張ってくる。


「じゃあ、私は邪魔すると、アレだし戻るよ」

「な、なんかすみません」

「いいや」


 朱羽先輩は振り返らずに、手だけ振ってくる。

 なんで俺の先輩たちはこうもかっこいいんだよ。


 ――――ということで、春姉とお話しすることになった。


「次の競技までには、戻るよ春姉」

「そんなの当然っ」

「よかった、そこはちゃんと思ってたんだ」

「うん、今は敵同士だからね」


キリッとした目つきで言って来るが、さっきの言動があるので全くかっこよくない。


「さぁて、罰ゲームの内容何にするか、考えなきゃなー」

「もう勝った気になってるの? まだまだだね」


 俺がやれやれって感じで言うと、春姉も乗ってくる。


「ふ、ふふふ、もう時はすでに遅いのだよ」

「まだ、初日の午前の競技だから」

「ゆうちゃんは罰ゲームの内容は決めてるの? まぁ、受ける側だと思うけど」


 プププと小バカにしたような言い方で口元を抑えながら話される。


「う~ん、まだ考えてはないけど、できる限りめんどくさくて嫌だなって思うのを受けてもらいたいかな」

「やぁ~ん、何する気……」

「もういいよ、それは」


 俺は苦笑いしながら、春姉の言葉に呆れる。

 毎回同じ反応をされると俺も疲れてくる。


「ゆうちゃんのいじわる」

「いじわるしてるのはそっちだろ」

「あ、そっか」


 生徒会の時の春姉はめちゃくちゃ頼れる先輩って感じなのに、今は全くそうは思わない。


「私はねー、もう実は決めてるんだ」

「そうなの? さっきどうしようとか言ってたけど」

「うん! 実はね、もう決まってる」

「ふぅん? ちなみに聞いてもいいの?」


 俺がそう聞くと、春姉は一瞬考えた。

 しかし、バツと両手で表してくる。


「勝敗がついた時に分かるのも楽しみか」

「うん、だから言わないし……今言ったら叶いそうになくなりそうだから言わない」

「今言わなくても叶わないよ」

「……っ! ど、どうしてぇっ!?」


 赤組が勝つからと言いたかったのだが、予想の斜め上を行く反応をされると戸惑う。


「なぁんだ、そんなことか」

「なんだと思ったんだよ」

「そ、それは――――べ、別になんでもないもんっ」

「はぁ? なんでもないってのはないだろ、あんなに取り乱して」

「と、取り乱してなんかないもん……」


 頬を膨らませ、口をとがらせながら小学生の言い訳のようなことを言って来る。


「あー、わかったよ、もうそろそろ戻ろうか」

「フンッ!」

「俺は戻るからな」

「…………私も戻る」


 結局か、と言いたくなったがグッと堪えた。

 そんなことを言うのは火に油を注ぐ行為だ。


「じゃあ、また」

「今度も白組が勝つから」

「いーや、この借りは必ず返すよ、赤組として」

「じゃあね!」


 そう言って、自分の教室に帰ろうとする春姉を呼び止める。


「ど、どうしたの?」

「チアガールの衣装似合ってるよ、それじゃ」

「…………も、も~そういうとこだぞ!」

「何がだよ」


 春姉は顔を赤くしながら、怒ったあと、両手で顔を隠していた。


 赤組と白組、俺と春姉の賭けはまだまだ終わらない。

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