第13話 初めての生徒会活動と狩人先輩
「新生徒会の最初の仕事は風紀委員との合同で挨拶週間というのを正門の前で行う」
前回の集まりの時に生徒会長から、今後の活動について教えてもらった。
その時に、今週から始まるのが挨拶運動だ。
「ゆうちゃん、まだ嫌だなって思ってるの?」
「そりゃあ、嫌でしょ、高校生にもなって……ガキみたいじゃん」
「私はその考えが子供だと思うけど?」
春姉にそう言われて、俺はそれ以降、挨拶運動が嫌だなとは思わなくなった。
面倒くさいなとは思うが……。
あと、起きれるかどうかが問題である……。
「七時半から八時の間の三十分間だ」
当番が決められているので、一週間に、1,2回程度だ。
「ゆうちゃん、起きれる?」
「お、起きれるよ」
「私と同じ日だったら、起こして一緒に行ってあげられるのにねー」
「べ、別にいいよっ!」
俺はそう言って、春姉の言葉を否定したが、その後春姉と一緒の日数がよかったと思った。
◆
ジリリリリッという目覚ましで起きる。
時計を見た時に、俺は心臓が握りつぶされるかのような気持ちになった。
時計を見たら、もう既に7時になっていた。
冷や汗が止まらずに、深呼吸をする。
生徒会活動の最初から遅刻するという、前代未聞の生徒だ。
急いで学校に行ったのだが……、目つきの悪い、怖そうな女性が立っていた。
制服をピシッと着こなしていて、どこか近寄りがたい雰囲気を出している。
その女性の腕章には風紀員と書かれている。
「あ、あのすみません……生徒会庶務の鷹村と申します」
「……たかむらぁ? なんだお前、遅刻したのか」
「は、はい」
「初日から遅刻するなんて、いい度胸しているじゃないか」
「いや、度胸は人並みと言いますか……」
「アァ? お前ふざけてるのか?」
風紀委員の彼女はそう言いながら、キッとした目つきを俺に向けてくる。
狙いを定める、肉食動物みたいな瞳をしている。
絶対にあれ、狩りとかしたことのある目だって……。
「い、いや……ごめんなさい」
「お前、明日は来るのか?」
明日? なんで明日なんだろう。と不思議に思いながらも、彼女の問いに答える。
「いや、日にちで交代なので、俺は明日は別に……」
「じゃあたかむら、お前は明日も来い」
「はい? ど、どうしてですか?」
「当たり前だろ、お前は当番である今日、遅刻してきたのになんで逃れられると思ってるんだ?」
彼女の正論が俺の心臓に突き刺さる。
そう、この話の中で俺がすべて悪いので、何を言ってもいけないのだ。
「い、いや……他の人とのアレもあるので、その」
「ふぅむ、そうか」
「今日残りの仕事頑張ります」
「もう終わりだぞ」
「え?」
「今日の仕事はもう終わりだ」
そう告げられて、本当にやらかしてしまったのだと確信した。
申し訳ない気持ちになりながら、俺は教室へ行こうとするところを止められる。
「もしもし、神野か?」
なにやら、怖い狩人先輩は電話をしている。
その電話相手は、彼氏さんか? こんなに怖い人でも彼氏にはデレデレだったりして。
そんな、ふざけたことを考えている俺に鉄槌が下る。
「おい、お前」
「は、はいっ!」
「生徒会長の神野と話をしたら、すべて私に任せるそうだ」
「え、えっと……それはどういう」
神野――――電話の相手は、生徒会長だった。
え、まって、なんでそもそもこの人、気軽に生徒会長と電話してるわけ?
色々と思考がパンクしそうだった。
「つまり、お前の遅刻の処分は私に任されてという事になる」
嫌な予感しかしなかった。
狩人先輩は俺のことを睨みつけながらも、口元はニヤついていた。
弱者をいたぶる顔をしていた……。
「たかむら、お前は明日からの挨拶運動へ強制参加だ」
「き、強制参加……」
「なんだ? 言いたいことがあるかもしれないが、反論は許さん」
「わ、分かりました……」
こうして俺は生徒会、風紀委員の合同挨拶週間のすべての日程に参加しなくては行けなくなってしまった。
「改めて、私の名前は
「俺は鷹村優弥です……」
「よろしくな優弥」
「……うっす」
急な名前呼びにもびっくりしたが、そんなことに反応できるメンタルではない。
「憎むなら、遅刻した自分を憎め」
「わかってます」
「意外と素直なんだな」
「はい、全部自分が悪いですから、ここまできたらもうやるしかないです」
俺が覚悟を決めたようない方をすると、狩人先輩は大笑いする。
男子の大笑いに劣らない声量だった。
「ち、ちょっと! 声が大きいですよ」
「お前みたいな奴は好きだよ」
「おっと、今日初めて会ったのに、好きになってしまいましたか」
「何を言っているんだお前は」
そんな風に茶化すと、バシンッと背中を叩かれる。
え? 待って、こんなに痛いの?
「お前は、馬鹿なんだな」
「今のは、ふざけただけです……」
「まぁいい。これからよろしく頼むぞ」
「は、はい」
「それと、次遅刻でもしたら……どうなるかわかってるな?」
なんだろう……殺されるのかな。
「……はい」
俺は噛み締めるように、小さく返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます