第12話 鷹村優弥、生徒会に入る
生徒会に入ろうと決心した俺は、準備に力を入れ、春姉にも手伝ってもらった結果、無事に生徒会庶務として仲間入りすることになった。
「改めて、これからよろしくね? ゆうちゃん」
「うん、よろしく」
「これで家だけじゃなく一緒にいられるね!」
「いや、学校でも春姉からくっついてくるでしょ」
俺が苦笑いしながらそう言うと、春姉は「いやぁ~」と言いながら、照れ臭そうに自分の頭を触っている。
「今日の放課後集まりがあるから、ちゃんと来るんだよ」
「大丈夫、忘れないようにメモしてあるから」
「そう? じゃあ大丈夫だね」
ウインクをしようとしているようだが、春姉は両目が閉じているのでできていない。
「春姉……ウインクしてるつもり?」
「う、うん……」
「できてない」
「し、知ってるからっ!」
顔が赤くなる春姉を見て、俺は笑ってしまった。
完璧な副会長なんて呼ばれてたりするが、やっぱり春姉は抜けているところがある。
◆
教室では、与一が生徒会に入った俺のことを褒めてきた。
「すげぇな、本当に」
「ありがとうって言っても、俺だけの力じゃないんだけどね」
「まぁ、なんにせよ生徒会に入ったんだから頑張れよ」
「うん、頑張るよ」
俺がそう答えると、与一は何やらニヤニヤとし始めた。
「それで? あの巨乳美女と一緒の生徒会だろ?」
「言い方」
「やっぱり嬉しいよな」
「それ目当てで入ったみたいじゃないか」
「違うのか?」
俺は与一のその問いにすぐに「違う」とは言えなかった。
多少春姉と一緒になれたらと思ってしまっている自分がいるからだ。
「全然ないって言ったら嘘だけど……」
「ほらそうじゃねぇかよ」
仕方ないだろう、男子なら生徒会なんて聞いたら、宮野小春副会長のことを思うだろう。
「悪い、ちょっとトイレ行って来るわ」
そう言いながらトイレに向かった。
「あ……、鷹村さん」
「田畑さん、おはよう」
「す、すごいですね……生徒会に入るって決めて、しっかりと入るなんて」
「周りの人のお陰だよ」
「だとしても、すごすぎです……」
田畑さんはそう言いながら、もじもじしている。
「あはは、ありがとう」
「か、か、かっこいいとおもいまひたっ!」
噛んだ……。
田畑さんの反応に最初に感じたのはそれだった。
「か、噛んでしまいました……」
「いいじゃん、可愛らしくて」
「いいえ……いい感じのことを言おうとしたときに噛むなんて」
「ありがとう、気持ちは伝わってるよ」
田畑さんの気持ちは伝わっているし、俺の方が彼女にお礼を言わなければならないのにと感じていた。
「生徒会に入ったからって、学級委員の仕事はしっかりとやるからね」
「は、はいっ!」
「それじゃあ、これからもよろしくね」
「こちらこそです、ご迷惑をお掛けするばかりでしょうが」
そう言いながら、田畑さんは親戚の挨拶みたいなことをして、教室へ戻って行く。
◆
「お、ちゃんと来たね」
「そりゃあね」
「えらいえらいっ」
「やめろっ春姉」
春姉はいつも通り、俺の頭を撫でて子ども扱いをしてくる。
「それでは、これから生徒会集会を始める」
「よろしくお願いします」
生徒会長の号令から、全員でお辞儀をして始まる。
「生徒会長の
そこから、一人ずつ生徒会メンバーの自己紹介を始めた。
紹介が終わったら、今後の活動を大まかに話してもらった。
「――――ということで、今日の集まりは以上だ。なにか聞きたいことはあるか?」
誰も挙手などをしなかったため、今日の集まりは終了した。
「うわー、疲れたねー」
「ぐえぇっ、な、何してんだよ」
「んー? ゆうちゃんの頭を休憩所にしてるー」
「俺の頭をそんなところにするな」
春姉は今日の集まりで副会長という立場であったため、とてもしっかりとしていた。
姿勢も正していたから、胸が強調されていたことも……。
「いま、ゆうちゃん、変なこと考えてたでしょ」
「考えてない」
「胸見て鼻の下伸ばしてたくせに」
「えっ……」
「ま、嘘だけど」
またやられた……。
ニヤニヤと俺の反応を見て楽しんでやがる。
自分の胸が武器だという事を春姉はわかっているのだ。
「でも今日はちゃんとしててかっこよかったよ」
「え?」
「俺の知ってる春姉じゃないみたいだった」
「か、かっこいい……?」
「うん」
俺が素の反応でそう言うと、春姉は驚くぐらい顔が赤くなっている。
まるで熟したリンゴの様に頬が赤くなっている。
「あれ? 照れちゃったかな?」
「う、うるさいぞ~?」
「春姉も照れたりするんだね~」
「誰のせいだと思ってるの」
頬を膨らませながら、プイッとそっぽ向いてプリプリと怒っている。
可愛いじゃなく、かっこいいと言われ、恥ずかしがっている姿。
そんな姿に可愛いなと思ってしまった。
気づいたら、俺も顔が熱くなった。
「あはは、やり返せて気持ちいいよ」
「さいてー、本当によくないよ」
「お互い様だね」
「じゃあ、それでいいや」
そんな、昔のような懐かしいやり取りを交わして、俺と春姉は生徒会室から出ていった。
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