第3話 愛犬デューク
少し遅くアパートの帰路に着く。
すると見覚えのある人がポストの前にいた。
昨日、ゴミ捨て場にいた男だ。
「何か盗られませんでしたか?」
ジッと見つめられ真顔で質問される。
一体なんなんだろう。
「いえ、特に何も」
そういうと男の後ろにある階段を登って上に行く気はとても起きない。
仕方なく走ってポストのある方とは逆の奥にある階段を使って走って上に登る。
流石築45年ものの建物だ。
うちは4階だ。エレベーターが欲しい。
男が追いかけてくるのではと思ったがそんな心配はいらなかった。
「あ、新しいの買った?」
匠が棚に置いてるヘアクリップを見て聞いて来た。
「うん。今日買った」
へえっと匠は言うと風呂に入るためか服を脱いでいる。
「ねえさー、今日も会ったんだよ。何か盗られませんでしたかって言って来た人」
「マジで?こえー」と匠はヘラヘラ笑う。
「マジで怖いんだから笑わないでよ!」
と少しキレてしまった。
「分かった。明日は俺が仕事行く前にゴミだすから大丈夫だよ」
と匠は佳奈子を宥める。
「あの人本当になんなんだろ?そもそもここの住人(ひと)なのかな?」
男については疑問が残る。
ここのアパートのポストには部屋の号室しか書いてない。
個人情報漏洩を危惧してるのか表札も我が家も含めてない。
考えこんでいると匠が横から
「あれじゃない?」とニヤっと笑って言うものだから何?と聞くと
「ユーレー」
とイタズラっぽく言ってきたので腹に軽くパンチを入れる。
冗談じゃない。
日中あんたは部屋にいないからって
あんまりじゃなかろうか。
別の事を考えたい。
(デューク見つかってるといいな)
デュークの甘えてきて、じゃれあった顔がよぎった。
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