伯爵
エリーナが指さした商店街の奥へ歩を進めるうちに、ガイトもエリーナが何を嗅ぎ取ったのか気が付いた。
「ヘンなニオイ、ね。加齢臭、ってことか……? なるほどな。これがあの距離でわかるってのは。素人にしておくには惜しいくらいだ。……ま、君子危うきに近寄らず。ってのは、淑女もその辺はご同様だろうし、だったら。ニオイから逃げ回ればトラブルからは避けられる、か」
ガイトはスマホを取り出すと電話をかける。
「ガイトというものだ。
彼の目の前には、仕立てのいいスーツを着て、前を歩く白人の老紳士。
「先々月の立川の件、おまけを見つけたから追加なしでくれてやる。住宅地で少し派手になるんでな、遅れたら警察に全部持っていかれるとそう言ってくれ。んじゃ」
スマホをジャケットのポケットにしまい、急ぎ足で前を歩く老紳士に追いつく。
「よぉ、伯爵。まだ日本に居たのか」
「立川以来だな、
意外にも普通の発音の日本語と、変に発音の良い英単語の返事が返ってきた。
「人をおかしな名前で呼ぶんじゃねぇ、ガイトだ。漢字で書ける、って何回言ったらわかんだよ!」
「私は漢字が良くわからなくてな。……そも、
「あんたらは、ホンモノの
「貴様は神も悪魔も敵であったな」
「敵も味方もねぇ、ってのは前にも言った。立ち位置はあくまで中立、障害になるならどっちだろうとぶん殴る、それだけだ」
「相変わらずで何よりだ。ただ、さっきの電話はいただけない、こんなところにまでprofessorにこられてはたまらない。
「立川ではひどい目にあったからな。今度こそ人体実験の材料としてプロフェッサーに引き渡してやる」
「Societyなどと。あのような品性を疑う集団とは組むな、と言っている」
「利があるならば組むだろうよ、何回でも言うが個人業者だからな。それに、あんたらみたいな腐れ外道なら儀も立つさ。あんたらと並べたら、ソサエティも変わり者の集団にしか見えん」
「お互い、理解しあえると思うのだがね。
「わかりあ……、ぐ!」
突然ガイトの首が絞まり、身体が空中へとゆっくり持ち上がる。
「てめ、……言ってることと、やってる、ことが!」
「会話と戦闘は両立できるだろう、さして中身のある話でも無い」
ガイトの首筋になにかに締められているようなへこみが浮かび、脂汗が噴き出す。
「サイコキネシスト、……。まだ、伯爵本人の、ほかにも超能力者が、居やがった、のか!」
ガイトの顔色がみるみる赤黒くなっていく。
相当な握力で掴まれているらしい。
「掴んでしまえばどうということはないな。我々の使うこの力は、まさに貴様の言う物理そのもの。……この場で処理してくれる」
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