第7話

そして、学園長にも感謝の言葉を伝えた後で、二人で学園祭を楽しむことにしたのである。

ちなみに、私はこの出来事をきっかけに劇に関する本を読むようになったのだが、それはまた別の話である。


図書館で見つけた一冊の本には、劇の素晴らしさを伝える内容が多く記されていた。

『演劇が人々に与える力』というタイトルのその本を読み終えた後でも、私の心は踊ったままだった。

それほどまでに劇に夢中になっていたのである。

「リーゼロッテ、どうしたの?そんなにこにこして」

そう問いかけてきたのは、アルフォンスだった。彼は私の大切な婚約者であり、いつも私のことを気にかけてくれている優しい人物である。

...............だからこそ、私は正直に答えた

「実は私、演劇に興味が出てきたみたいなの!それでね.............」と言いかけたところで、彼が目を輝かせながら身を乗り出してきたのだ。

「それはいい考えだね!一緒に部活動で、劇団を立ち上げてみないかい?」とアルフォンスが言ったので、私は驚きつつも興味を持った。そして、私たちは二人で劇団を立ち上げることになったのだ。

「どんな演目をやろう?」と、アルフォンスが聞いてきたので私は考え込んだ。しかし、いくら考えても良いアイデアは思い浮かばなかった.............。

そこで私は思い切って彼に相談することにした。すると、彼は微笑みながら言ったのである。「大丈夫!僕たちならきっと、素晴らしい劇を作り上げることができるよ!」

彼の自信に満ちた言葉のおかげで、勇気づけられた私は早速練習に取り組むことにしたのだが、いざやってみると、思った以上に難しく感じた...........。

それでも懸命に努力を続けた結果、次第に上達していく自分に気づいたのである。

そんなある日のこと、私はフェルマースさんに相談を持ちかけた。

「ねぇ、今度一緒に練習しない?」と誘ってみると、彼女は笑顔で承諾してくれた。そして私たちは、3人で稽古をすることになったのだが、そのお陰で劇がさらに進化していくことが実感できたのだ。

私は、本当に素晴らしい仲間たちに恵まれていると思うと同時に、このチャンスを逃すわけにはいかないという気持ちを、強く持ったのである。

そう!私たちならばきっと、素晴らしい劇を創り上げることができるに違いない。そんな確信を抱いた私は、ますます稽古に励むことにしたのだった..............。

ある日のこと、私は中庭の大きな木の下に腰掛けながらため息をついていた。

ここ数日間、様々な本を読んで勉強していたものの、劇の脚本や演出について何もアイデアが思い浮かばなかったからである。

「困ったな...............」と呟きながら空を見上げている私の前に、誰かがやってきて声をかけてきたのだ。

そこにいたのは、オーガスタスさんだった。彼は、いつも明るく前向きな性格の持ち主で、友達もたくさんいる人気者なのだ。そんな彼は、誰かと一緒にいるイメージが多く、図書館にいるのは珍しいなと首を傾げる私に、彼は笑顔を浮かべながら言ったのである。

「リーゼロッテちゃん、どうしたんだい?何か悩んでいることがあるなら、相談に乗るよ」

と言ってくれたのだ。そんな彼の優しさに感動した私は、思わず泣きそうになってしまったが、涙をこらえて事情を説明したところ、彼は真剣に聞いてくれた上に、アドバイスまでくれたのである!「そうだな..............まずは自分が書きたいと思う物語をイメージしてみたらどうだい?例えば身近なものからとか、理想を詰め込んだりとかね」と彼は言った。

その言葉を受けて、私は目を閉じて考えることにした。

自分が書きたい物語とは、どんなものなのか?それを考えながら、試行錯誤していると、アイデアが次々と浮かんできたのだ。

それはまるで、霧の中から抜け出そうとしているかのような感覚で、非常に難しかったのだが、同時にやりがいもあったように思う。

そして私は、遂に一つの物語を書き上げることに成功したのである! その作品を初めて読んだ時の感動は、言葉にできないほどだった.............。

この感覚を誰かと共有したくてたまらないと思った私は、すぐさまアルフォンスとフェルマースさんのいる場所へと向かった。

そして、自分の作品を二人に読んでもらったのである。

「すごく面白いよ!」とアルフォンスは言ってくれた。続けて、フェルマースさんも微笑みながらこう言ってくれた。「リーゼロッテ、すごい才能ね................こんな素晴らしい作品を書けるなんて羨ましいわ!」と言ってくれたのだ。

その瞬間、私は救われたような気持ちになった。

そしてこれからも、仲間と共に頑張っていこうと心に誓ったのである。


それから私たちは、毎日のように集まって劇の練習に励んだのだった。

そんなある日のこと、図書館で本を読んでいた私はふと視線を感じて顔を上げると、そこにはフェルマースさんが悩んだ様子で立っていたのだ。「どうかした?」と私が尋ねると、彼女は微笑みながら答えてくれた。「実は、リーゼロッテに提案したいことがあるの」と。

彼女の言葉を聞いた瞬間、私は少し驚いたがすぐに気を取り直して、話を聞くことにした。一体どんな話が飛び出すのだろうか..............そう期待しながら待っていると、彼女は口を開いたのである。

「あの、オーガスタスさんも誘ってみてはどう?」と、フェルマースさんは言った。

予想外の提案に私は驚いたものの、同時に嬉しくもあった。

なぜなら、新しいことに挑戦できるチャンスだと感じたからである。

それに、何よりも仲間と共に創作活動ができるのは、非常に魅力的だと思ったからだ。「そうね.............それはいい提案だわ!誘ってみましょう!」私は、力強く答えた。

そして早速オーガスタスさんを探すことにしたのだった。

彼ならば、きっと一緒に楽しんでくれるはずだと確信しながら。


「おお、演劇か!学園祭ぶりで楽しそうだね!図書館で、以前悩んでいたのは、このことだったんだね」

と、オーガスタスさんは喜んで受け入れてくれた。

「良かったね、リーゼロッテ!」と、アルフォンスも祝福してくれたので、私は思わず笑顔になった。そして、私たちは4人で劇の練習を始めることになったのである...............新たな舞台で演じる、自分たちの作品に想いを馳せながら、私たちは一歩ずつ進んでいったのであった。


ある日のこと、私は図書館でもう少しストーリーを練っていた時のことである。

偶然にも、フェルマースさんとオーガスタスさんに出会ったのだ。

「やあ、リーゼロッテ!元気そうだね」と笑いながら声を掛けてきたのは、オーガスタスさんだった。

彼はいつも明るく社交的な性格で、誰とでも親しく話せる気さくな人............そんなオーガスタスさんはら私にとって憧れの存在でもあったのだ。

いつか彼と、良きライバルとして肩を並べられるような人間になりたいという想いを、抱いていたからだった。

「こんにちは、お二人とも!...........これからどちらへ行かれるの?」

「実は演劇の稽古に行くところなんだ」とオーガスタスさんが答えてくれたので、私は驚いたと同時に嬉しくもあった。

まさか、彼がこんなにもやる気に満ち溢れて、同じ目的のために行動していてくれたなんて。

「えっ!そうなんですか?私もこれから向かうところなんですよ」と言うと、彼はにっこりと微笑みながら言った。

「それは偶然だね!それなら、一緒に稽古しようよ」と。その言葉を受けて私は思わず嬉しくなった。

また皆と稽古できるなんて夢みたいだ.............そう思った私は大きくうなずいてから、2人と共に演劇の稽古場へと向かったのである。

その道中、私たちは様々な話題で盛り上がった。趣味や好きな食べ物などについて話し、あっという間に時間が過ぎていったが、とても楽しい時間だった。

そしていよいよ稽古場に到着すると、そこにはすでにアルフォンスが待っていた。

そして私たちも、彼の元へ合流することになったのである。

「こんにちは、アルフォンス!」と元気よく挨拶すると、彼は笑顔で応えてくれた。

その笑顔を見るだけで、何だか幸せな気分になることができた。

「それじゃ始めましょうか。どんな感じにするか、話しながら決めていく感じで!」というアルフォンスの提案で、私たちは話し合いを始めたのである。

...............どんな作品にしたいのか?...............そのためにはどのような演出や演技が必要なのか?

そんなことを議論しながら、アイディアを出し合い始めたのだが、これが想像以上に刺激的で、楽しい時間となったのである。

今までに経験したことがないほどの、高揚感に包まれた私は、自然と笑みが溢れてくるのを感じていた。

そして稽古が始まり、私たちは真剣に作品を創り上げていった。

自分自身が考えたアイディアや演出を実践しながら、試行錯誤を重ねていくうちに、ますます熱中していったのである。

...............その過程は決して楽なものでは無かったけれど、それが余計に私たちの結束を強めていったようにも感じていた。

そう!私たちの絆は、確実に深まっていくのを感じていたのだ。

そして、いよいよ迎えた本番当日、私たちの劇は大成功を収めたのであった。

観客たちの歓声と拍手に包まれる中、私たちは最高の笑顔を浮かべながら、舞台を降りていったのである。

それからというもの、私たちは毎日のように集まって練習するようになっていった。

それは単なる演劇の練習ではなく、友情や信頼の証でもあり、そして何より互いの才能を認め合い高め合うことでもあったのだ。

こうして私たちは、劇団を設立して活動を続けていくことになったのである。

それがどんな結末を迎えるのかはまだ分からないが、それでもきっと素晴らしい未来が待っているだろうと確信していたのだった................。


定期テストが終わり、部活動の劇団も落ち着いてきて、劇の練習に集中できるようになった頃、私はふとある疑問を抱いた。

「あの..............思ったんだけど、皆はなぜ演劇に興味を持ったのですか?」と。

その質問に対して真っ先に答えたのは、アルフォンスだった。「私は昔から物語を見聞くのが好きだったんだ。だから、誰かが書いた脚本を楽しむことが夢だったんだ。

でも、なかなか機会がなくて困っていた時に、演劇部の話を聞いたんだよ!」と、彼は笑顔で答えてくれたのである。

次に口を開いたのは、オーガスタスさんだった。彼は照れ笑いを浮かべながら、「僕は小さい頃から物語を描くのが好きだったんだけど、友達と一緒に劇を作ってみたいと思ったんだよ。

でも一人じゃ難しいと分かっていたから、仲間が欲しかったんだ」と教えてくれた。

最後に、フェルマースさんが口を開いた。

彼女は微笑みながら、思い出を遡りながらこう言った。

「私は、幼い頃からお芝居が好きでした。そして、学園祭でみんなと演じた劇が本当に楽しかったんです!きっと大切な仲間とだから。それ以来、自分でも舞台に立ちたいと思ったんです。」

その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏にはある光景が浮かんだ──それは観客たちの歓声を浴びながら仲間たちと共に作り上げた最高の舞台であり、そこで自分自身が演じた役は物語の主人公と酷似していることに気付いたのだ。それはまるで私自身が主人公のようで、舞台の上で仲間たちと共に踊っているかのような感覚に陥らせるものだった。そしてその瞬間、私は心の底からの満足感に満たされていたのである──これは、まさに私の求めていたものだと確信したのだ。

「皆、演劇が大好きなんですね!」と私が言うと、彼らは笑顔で大きくうなずいてくれた。

私は心に決めた──この先も、仲間たちと共に最高の作品を作り上げていくことを...........そしていつか、本当の舞台に立つことができる日が来ることを、夢見て頑張ることを決意したのである。


「ふぅ...........今日も天気がいいですね」

快晴の天気を見ながら、私は校舎の外にあるテラスでゆっくり休憩していた。周囲には誰もおらず、静かな空気が流れていた……そんな中、私はふとあることを考え始めていた。それは自分自身の将来の夢についてだった──幼い頃から演劇が大好きで、いつか自分も物語の世界に身を投じるような人生を歩みたいという強い想いを抱いていたのだが、その実現のためにはどうすればいいのか?と自問自答していたのだ。

「よし、まずは一度自分の原点に戻ってみることにしよう............」そう思った私はノートを取り出すとそこに自分自身の好きなことや得意なことを書き出していった──そしてその中から何か一つを選び、それを追求していこうと決めたのである。

「あら、リーゼロッテ!こんにちは」

物思いに耽っていると、フェルマースさんが現れてにこにこと微笑んでくれた。その笑顔を見た瞬間、私も自然と笑みが溢れてくる……やっぱり彼女は私にとって特別な存在なのだと思った。

「こんにちは、フェルマースさん!今日も元気そうですね」

私も笑顔で挨拶を返すと、彼女は微笑みながら言った──「はい、元気さが取り柄ですから!」

そう笑いながら答える彼女の姿に私はとても癒されていた……彼女の明るさや前向きな性格は私にとって憧れであると同時に尊敬の対象でもあったのだ。だからこそ彼女と過ごす時間はいつも幸せな気持ちになることができていた──きっと彼女も同じように感じてくれていたに違いないだろう。

「そうだ、良かったら一緒にお茶でもしませんか?」と私が誘うと、彼女は喜んで応じてくれた──そして私たちはテラスでお茶を楽しむことにしたのだ。

そこで私は彼女に自分の夢について相談してみることにした。演劇の世界に飛び込んでみることを迷っていることを伝えるが、彼女は真剣に話を聞いてくれた後に優しく微笑んでから言うのであった──「大丈夫、リーゼロッテが決めた夢なら私はどこまでも応援するわ!」と勇気づけてくれたのだ……そのおかげで私の心は少しずつ前向きになっていったような気がした……彼女の励ましの言葉に感謝しながら、私も質問することにした。

「フェルマースさんは、何か悩み事とかない?」

そう聞くと、彼女は顔を真っ赤にしながら俯き、小さくうんうんと頷いた。

「その...........誰にも言わない?」

と小さな声で尋ねてきたので、私は「うん!約束します!」と答えた。すると彼女は少し安心した様子で話してくれた……。

「実は私、オーガスタスさんのことが好きかもしれないの」

と衝撃的な告白を聞かされて私は一瞬固まってしまった。

「えっ、オーガスタスさんですか!?」

思わず大声で叫んでしまった私に、彼女もビクッと反応し顔を真っ赤にしながら慌てて両手を口に当てて塞いだ。その姿を見た私はつい笑い出してしまったが、彼女は恥ずかしそうな表情のまま俯いていた。その様子を見ていた私も何だかドキドキしてきてしまった……まさか彼女がそこまで好きだったなんて……と思いながらも冷静に彼女の言葉に耳を傾けることにした。

「それでね、この気持ちをどうしたらいいのかわからなくて...........」と悩みを打ち明けてくれた彼女の姿はとても可愛らしく感じられた。

「その気持ちを、私に話してくれてありがとう、フェルマースさん!」と私は感謝の気持ちを込めて伝えた。

「ううん、気にしないで!リーゼロッテに相談できてよかったよ」と彼女は明るい笑顔で答えてくれたが、それでもまだ不安そうな表情をしているように見えたので私は言葉を続けた──「オーガスタスさんはどんな女性が好きなんだろう?」

その質問に対して彼女は考え込んでしまったが、やがて自信なさそうに答えた──「わからないんだけど..........でも、この前他の女の子と一緒に話しているのを見かけたときがあったのよ……」

「えっ、誰ですか?」と私が聞き返すと、彼女はさらに顔を赤くしながら小さな声で答えた──

「同じクラスの女の子なんだけど...........いつも私に突っかかってくるの.........」

その言葉を聞いて、私はピンときた。きっと、その子が嫉妬心を抱いて、フェルマースさんに嫌がらせをしているんじゃないか?と疑っていたのだ。それで思わずこう言った──「でも、どうしてその人が怪しいと思ったの?もし違ったら困るから、聞いてみてもいいですか?」

私の質問に彼女は少し考え込んでいたが、やがて覚悟を決めたように話してくれた──それは彼女の恋心を応援するために必要なことだと思ったからだ。

「実は、その子もオーガスタスさんのことが好きみたい..........。でも最近、妙に私とオーガスタスさんが話している時に割り込んできたりしてくることがあるのよ...........。」

そう不安そうに話す彼女の言葉を聞いて私は確信を持った。やはりその女の子こそが嫉妬心から嫌がらせをしているに違いない!そう思った私は彼女の力になろうと心に決めたのである──それが友達としてできることだと思うから。そして私たちは相談しながら今後どうするかを決めることにしたのだった............。

翌日、私は早速行動を起こすことにした。まずはオーガスタスさんに話しかけることにしたのだ。

「こんにちは、オーガスタスさん!ちょっと相談したいことがあるんですけど...........」と私が話しかけると、彼は笑顔で答えてくれた。「もちろん大丈夫だよ」

そして私たちは人気のない場所に移動しながら話をすることにした──その間、彼女は恥ずかしそうにしながらも私たちの話を黙って聞いていた。

「実はですね、少し気になっていたのですが、オーガスタスさんはどんな女性がお好きなんですか?」

と私が尋ねると、彼は少し戸惑いながらも答えてくれた──

「え、えっと...........明るくて優しい女性が好きだよ」

その答えを聞いた私は心の中でガッツポーズをしながら言った──「それは..........フェルマースさんのような女性とか?」

その言葉を聞いた瞬間、彼の顔が驚きに染まったのを私は見逃さなかった。

そう聞くと、彼は悩んだ素振りを見せながら口を開いた。

「............僕には、好きな人がいるんだ。厳密に言うと、その人が好きだな。」

その言葉を聞いた瞬間、私の脳内では様々な考えが浮かんでいた──彼が好きになった人って誰なんだろう?と妄想を繰り広げながら彼の話に耳を傾けた。すると彼は微笑みながら続けた──「でも、彼女は僕を受け入れてくれるだろうか...........?」と不安げに尋ねてきたのである。

私はドキドキしながら答えた──「オーガスタスさんなら大丈夫だと思います!その方に勇気を出して告白してみてはどうですか?」

私が提案すると、彼は真剣な表情で考え込んだ後、大きくうなずいて言った。

「わかった、ありがとう。勇気を出して告白してみるよ!」

その言葉を聞いた私は思わず心の中でガッツポーズをした……これでやっと彼の恋が実る時が来たんだなと感じていたのだ。

「オーガスタスさん!絶対に頑張ってくださいね!」と私はエールを送った──それに対して彼は自信に満ちた表情で答えたのである。

「ああ、きっと成功させてみせるよ」と言う彼の言葉を聞いた時は感動で胸がいっぱいになった……本当に良かったと思いながらも、フェルマースさんがどんな反応をするのか気になって仕方なかった……果たして喜んでもらえるだろうか?

それとも、悲しませてしまうだろうか?もし上手くいかなかったとしたらどうなるのだろう?……様々な思いが頭の中を駆け巡ったが、今はただ2人が幸せになってくれることを願うばかりだった──。


その後、私はフェルマースさんに先程のオーガスタスさんとの話を打ち明けてみた。

すると、少し悲しそうな表情をしながらも、彼女は微笑んだ。

「オーガスタスさん、好きな方がいらっしゃったのですね...........」

そして彼女はぽつりと呟いた。

「でも、これで良かったんです!好きな人の幸せを願うのが、恋なんですから...........」

そんな彼女の言葉を聞いて私は心が締め付けられるような気持ちになった……こんなに素敵な人を悲しませてしまったことに罪悪感を覚えたのである。そして同時に彼女がこんなにも一途な女性だと知ったからこそ、オーガスタスさんは好きになったのかもしれないと感じずにはいられなかった──だからこそ自分の気持ちを押し殺して彼の恋を応援しようとしたのだろう……そんな彼女の姿勢に感銘を受けると同時に胸が痛くなった。

「フェルマースさん、もしどんなことがあっても、私はあなたのことが大好きです」

そう伝えた時、彼女は優しく微笑んでくれた──「ありがとう、リーゼロッテ。私もあなたのことが大好きよ」

彼女の笑顔を見た私は心の底から安心したのだった……そしてこれからは彼女を支えていこうと心に誓ったのである。

それからというもの、私とフェルマースさんの関係は以前よりも親密になっていった気がする──お互いに悩みや相談事を打ち明けることができるようになり、何でも話せる存在になっていったのだ。そして今日も一緒にランチを楽しんでから帰るところである……

「ねぇ、リーゼロッテ?今日の晩御飯は何にするつもりなの?」と彼女が聞いてくるので、私は考え込んだ末に答えた──「うーん、そうだなぁ..........今日は簡単に作れるものにしようかな?」

そう答えると彼女は少し嬉しそうに笑みを浮かべながら頷いた。

「わかったわ!じゃあ早く帰って作りましょう!」と言いながら私の手を握ってくるフェルマースさんを見ていると自然と笑みがこぼれてくる──こんなにも可愛らしい彼女が私の友達でいてくれることに感謝しながら私たちは家路についたのだった。

家で手軽に作られるものを用意していると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

家で手軽に作られるものを用意していると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

私は玄関に向かい、扉を開けるとそこにはオーガスタスさんが立っていた。

「やあ、リーゼロッテ..........ちょっと聞きたいことがあるんだけれど、いいかな?」と言う彼の顔は少し暗かった。その様子を見て心配になった私はすぐに家の中に招き入れて話を聞くことにした──すると彼は驚きの言葉を口にするのだった。

「実は、その好きな人に婚約者がいると噂で聞いてしまって。」

「えっ、婚約者!?」と思わず聞き返してしまった。まさかオーガスタスさんがそんな相手を持っているなんて考えもしなかったからだ……一体どういうことなのだろう?

「うん、そうなんだよ。だからもう諦めようと思っているんだけど...........」と彼は辛そうな表情を浮かべながら言った。

私は、すぐに励ましの言葉をかけることにした──「諦めないでください!まだチャンスがあるかもしれませんし!」と言うと、彼は驚いたような顔を見せた後、少しだけ元気を取り戻したように笑みを浮かべた。

それから、私たちは一緒に夕食の準備をすることになった。

今の状態の彼が1人になると、辛くなると思うから。

間も彼の暗い表情は変わらなかったけれど、食事中だけは明るい表情を見せるように努めていた..........きっと、悩み事を抱え込んでいるせいだと思うと胸が痛んだが、今はただ見守ることしかできなかった。

次の日からオーガスタスさんは以前のような明るい笑顔を取り戻すことができたようだ。

だが、どこか無理をしているような様子も感じられて心配だった。そのことを感じ取った私は、彼を元気づけるためにまた何かできないかと考えていた──そして思いついたのがお茶会を開くことだった──これなら話しやすい雰囲気で話すことができて気分転換になるかもしれないと思ったのだ。

「オーガスタスさん、実はですね……今度お茶会を開くことになったんですよ!」と私は明るく話しかけることにした。

「それは楽しそうだね!でもどうして急に開催することになったの?」と彼が興味深そうに聞いてくるので、私は詳しく説明をすることにした。「実はオーガスタスさんが最近元気がないので気分転換になるかなと思って企画したんです!もしオーガスタスさんも皆さんとご一緒に参加いただけるなら、大歓迎ですよ!」

すると、彼は少し考えるような素振りを見せたが、すぐに笑顔になって答えてくれた。

──「うん、ぜひ参加させてもらうよ!リーゼロッテのお茶会なら、絶対楽しいだろうからね!」

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