第6話

「リーゼロッテ、これからもよろしくね」と言って、手を差し出してきた彼に対して、私は笑顔で応えると、彼もまた笑顔で握り返してくれたのである。

その瞬間私は確信したのだーー。この人は信頼できる人物であり、今後も仲良くしていきたいと思ったのである。

(よし.............!明日オーガスタスさんに会ったら真っ先にお礼を言わないとね............!)

そう心に決めた私だった。

そろそろ帰ろうと思い踵を返すと、誰かにぶつかってしまった。

「わっごめんなさ..............」

鼻を押さえて謝りながら相手を見上げたら、なんとオーガスタスさんがいたのだ。「リーゼロッテちゃんじゃないか、怪我はない?」と彼は心配そうに声を掛けてきた。私は慌てて、大丈夫であることをアピールする。

「よかった、気をつけてね」と言って、優しい笑顔を見せてくれる彼に対して、私も精一杯の笑顔を浮かべて応えるのだった。

(本当に素敵な人.............!)

私が頷いていると、オーガスタスさんは私をじっと見てからにっこり笑って言った。

「リーゼロッテちゃん、ドレス姿もすごく可愛いんだね」

そう言われた瞬間、私の心臓は大きく跳ね上がった。

(わ、私が可愛いって............!?)

恥ずかしさのあまり言葉が出ずにいると、彼は優しく頭を撫でてくれるのだった。

まるで子供をあやすように。

(なんだか照れてしまうわ.............!)

その後も、彼との楽しいひとときは続いたのだが、やがて終わりを告げる時がやってきたようだ。

「リーゼロッテちゃん、もうそろそろ帰らなきゃいけない時間だろう?また今度一緒に遊ぼうね」と言ってくれたので、私も満面の笑みで応じた後その場を後にしたのだった。

(オーガスタスさん、ありがとう............!)

心の中でお礼を言いながら会場を出た私は屋敷へと戻った。その足取りはとても軽いものだったのである。


(..............なんだか、いい匂いがするわね?)

重たい瞼を開けながら私が辺りを見回すと、そこは見慣れた自分の部屋だった。

いい匂いの正体を見つけるために、キッチンに向かうと、アルフォンスが料理をしていた。

「おはようございます」と声を掛けると、彼は笑顔で応じてくれた。

「ああ、おはようリーゼロッテ」と言いながら、彼がお皿を持って渡してきた。

(何かしら..............?)

不思議に思って見てみると、中に入っていたのはお菓子で............しかも私が好きなベリーパイだったのである!私が目を輝かせていると、アルフォンスは言った。

「頑張って作ってみたんだ、君が気に入ってくれるといいんだけどな」

(なんて愛おしいのかしら!すっくごくいい匂いで美味しそう)

感動しつつも、私は感謝の言葉を述べた後で、早速そのお菓子をいただくことにした。

「いただきます!」と言って一口食べると、口の中に甘酸っぱい味が広がっていった。

今まで食べたどのお菓子よりも美味しく感じられたのは、きっと彼のおかげだろう。

その後も私は夢中でベリーパイを頬張っていき、あっという間に平らげてしまった。

そんな私を見たアルフォンスは、微笑みながら言ったのである。「気に入ってくれたみたいで、嬉しいよ」と言われてしまったものだから、恥ずかしくなって、顔を背けることしかできなかった。

その後も、しばらくの間彼と会話を楽しんでいたが、ふとあることを思い出した私は、彼にお礼を言うことにした。

昨日のことについてである。

(アルフォンスとオーガスタスさんは、話したことはあるのかしら?)

そんなことを考えながら問いかけると、彼は少し考えた後でゆっくりと口を開いた。「いや、話したことはないな..............どうしてだい?」と聞き返してきたので、私は正直に答えることにした。

「昨日助けてもらったの...........」と言うと、彼は驚いた様子を見せながらも優しく微笑んでくれた。

「なるほど、そういうことだったんだね」

(あれ?なんだか機嫌が悪くなったような?気のせいかしら...............?)

疑問に思ったものの、それ以上追及することはしなかった。

その後、朝食を食べ終えた私たちはお出かけすることにした。

目的地は私が行きたがっていた湖畔だ。

「わぁっ!綺麗.............!」と言ってはしゃぐ私に、アルフォンスは微笑みながら言った。「ここは私のお気に入りの場所なんだ、気に入ってくれたみたいで何よりだよ」と。

彼の口調はとても穏やかで落ち着いているため、聞いているだけで心が安らぐような感じがする。それと同時に安心感を覚えるのであった。

(この人とならずっと一緒にいたいな.............)

そう思いながら、彼と一緒に湖の周りを散策していると、不意に彼が立ち止まった。「どうしたの?」と声を掛けると彼は少し照れた様子でこう言ったのである。

「君があまりにも可愛いものだからつい見惚れてしまったんだ...............すまない」

(か、かわいい!?)

その一言で私の顔は真っ赤になってしまった。

心臓の音がバクバク鳴っているのを感じる。

そんな中で私が取った行動は、なんと彼に思いきり抱きついたことである!(何やってるのよ私!!)という考えとは裏腹に、私の身体は勝手に動いてしまったのだ.............頭では止められないほどに彼を愛おしく感じてしまったのだから、仕方のないことだろう。

「リーゼロッテ?」アルフォンスは困惑しているようだが、私は構わず抱きついたままでいた。

すると、彼もまた優しく抱きしめてくれたのだ。

彼の温もりを感じながら幸せな気分に浸っていると、不意に「もう離さない」と言われた。

私は、嬉しさのあまり涙を流すことしかできなかった。こんなに幸せな気持ちになったのは初めてだったから................。

そして、私たちはそのまま手を繋いで家に帰ったのである。

アルフォンスとの一件から数日後。

私は普段通りの生活に戻っていたのだが、一つだけ変わったことがある。

それは、彼の名前がより身近に感じられるようになったということである。

(ああ、今日も素敵だなぁ.............)

そう思いながら見惚れていると、ふと目が合った際に微笑みかけられることがあったりするのだ。そのたびに私の心臓は跳ね上がり、顔が熱くなるのが分かる。

今思えば、あれは一目惚れだったのではないだろうか............?

(私ったら、なんてことをしたんだろう!)

冷静になった頭で考えると、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり悶えてしまうのであった。

(でも、後悔はしていないわ!だって好きになったんだもの!)

「顔が赤いね、少し冷たい水でも持ってくるよ。待ってて」

私が頷き決意を新たにしていると、不意に扉が開いた。

そこから現れたのは、オーガスタスさんである。私は慌てて姿勢を整えて挨拶をするが、彼はクスッと笑ってこう言ったのである。

「そんなに畏まらなくても大丈夫だよ」と。

この人はいつも通り優しいわと私が思っていると、彼はそのまま言葉を続けた。「舞踏会ではびっくりした、楽しかったね」と笑った彼が突然真剣な表情になったのを見て、私も気を引き締める。一体どんな内容なのか、ドキドキしながら耳を傾けた。

「リーゼロッテちゃん、今さっき見たとき君はアルフォンス君と仲良さそうだったけど............どういう関係性かな?」

突然そんなことを言われて私は狼狽えてしまったが、すぐに冷静さを取り戻すことができた。

そして、真っ直ぐに彼の目を見ながら答えたのである。

「ええ、私たちお付き合いさせていただいてるの」と力強く答えた私を見て彼は満足そうに笑った後でこう言った。「なら良かった」と.............。

その後で彼は真剣な表情のままこう言った。「君たちの関係性、詳しく聞かせてもらってもいいかな?」と。

(なんだか緊張してきたわ..............)私は深呼吸をした後、意を決して話し始めた。アルフォンスとの出来事や想い出などを事細かに話し終えた後、最後にこう締め括ったのである。

「これが全てかな!」そう言って胸を張りながら答える私に対して、オーガスタスさんはにっこりと微笑んでいた。まるで我が子の成長を喜ぶ親のような表情を浮かべながら。

「ふむ...............」と顎に手を当てながら何やら考え込む素振りを見せた後で、彼は言った。「教えてくれてありがとう!君たちの関係は分かったよ、その上で聞くんだけど..............これからどうするつもりなのかな?」

そう質問してきたので、私は正直に答えた。「ずっと一緒にいたいと思っています」と。それを聞くと彼は嬉しそうに微笑んでくれた後でこう言ったのだ。

「君たちのような、素敵な関係に祝福を。彼が戻ってくるだろうしく僕はここで失礼するよ」

そして拍手してくれた後に、彼は立ち去ったのである。その足取りはとても楽しそうなものだった。

(オーガスタスさん、本当に良い人だわ............)

そんなことを考えていると、不意に背後から声を掛けられた。振り向くとそこにいたのはアルフォンスだった。「リーゼロッテ............オーガスタス男爵と何を話してたんだい?」と言いながらこちらに近づき、私の身体をギュッと抱きしめてきたのである。

突然のことに驚いた私だったが、彼の温もりを感じながら幸せな気分に浸っていたのである。

「大丈夫よ、オーガスタスさんは私たちの関係性を祝福してくれたの」

と言って私が微笑むと、彼も安心したようでホッと息を吐いていた。そしてこう続けるのだった。

「よかった、君が他の男性と仲良くしているのを見てると不安になるんだ.............」

彼の言葉を聞いた私は嬉しさのあまり赤面してしまった。(そんな風に思ってくれるなんて...........)と心の中で呟くと同時に、心臓の鼓動が激しくなるのを感じた。そして私はアルフォンスの背中に手を回しながら言った。「ありがとう、私を選んでくれて」

そう告げると彼は私を抱きしめる力を一層強めた後で言った。「こちらこそありがとう..............君と一緒にいられて、本当に幸せだよ」と。

(あぁ、なんて幸せなのかしら?)

そんなことを考えていたらチャイムが鳴り響いたーーその音を聞いた瞬間、私の心臓は更に大きな鼓動を始めた。「そろそろ戻ろうか」とアルフォンスが微笑みながら手を差し出してきたので、私は迷うことなく彼の手を取ったのだった。

そして二人で一緒に教室へと戻ったのである。

この日から私とアルフォンスの関係性は大きく変化したと言えるだろう。

そして、それが良い方向に進むことを願っている。

「でも................私以外の女の子達と仲良くしたら嫉妬しちゃうかも!」そう言って彼に向かって笑いかけると、彼もまた優しい笑顔で応えてくれた。

それから数日後のこと、私は今日もアルフォンスと一緒に過ごしていた。

彼はいつも優しく接してくれて、私を安心させてくれるのだ。まるで、お姫様のように扱ってくれるのである。

そして私は、改めて思った。この人のことが本気で好きなんだと。

だからこそ、他の女の子達と話しているところを見ると嫉妬してしまうこともあるのだが、彼が私以外の子と仲良くしている光景を見るのは、ほんの少しだけ辛いものがあった。

(ああ、どうしよう............?)

そんなことを考えているうちに、頭がボーッとしてきた..............どうやら、熱があるみたいだと気付いた時には、既に遅かったようだ。目の前が暗くなっていく中、私は意識を失ったのだった。


目を覚ますと、私はベッドに横たわっていた。

(あれ.............私どうしてここにいるんだっけ..............?)

そんなことを考えているうちに、少しずつ記憶が蘇ってきた。

アルフォンスと一緒に過ごしている時に、倒れてしまったのだということを思い出した私は、慌てて彼の姿を探すことにした.............が、隣にはいないようだった。

(どこに行ったのかしら?)

不安に思いながら、部屋の中を見回してみると、テーブルの上に書き置きがあることに気付いた。

そこには、「リーゼロッテが倒れたので、先生を呼んでくる」と書かれていたのである。

どうやら、彼は私を医務室まで運んでくれたらしい。

申し訳ない気持ちになりつつも、同時に彼の優しさに感謝していた。

(早く戻って来ないかな..............)そんなことを考えていたら、不意に扉が開いた。

そして彼が入ってきたのだ。

「リーゼロッテ..............!目が覚めたのかい?」そう言って駆け寄ってきた彼を、ギュッと抱きしめてあげると、彼もまた抱きしめ返してくれた。

そして、そのままお互いの温もりを感じながらしばらくの間抱き合っていたのだが、不意にアルフォンスがこんなことを言い出したのである。

「意識が戻って安心したよ」

と言った後で真剣な表情になり、こう続けたのだ。「君に話があるんだけど、聞いてくれるかい?」

私は何も言わずにコクリと首を縦に振った。

すると、彼は私の耳元に顔を寄せながら言ったのである。「今回の件で、もっと気持ちが深まった。君を愛している」と。

その一言を聞いた瞬間、私は嬉しさのあまり涙が溢れそうになった。

何故なら、私も同じ気持ちだったからだ。

だからこそすぐに返事をしたいと思っていたのだが、上手く声が出なかった.............緊張しているせいだろうと思い、深呼吸して心を落ち着けた後で、ゆっくりと口を開いたのである。

「私も、貴方を愛しています」と言うことができた時にはホッとした気持ちになっていた。

その後で、今度は彼からの抱擁を受けた。彼の温もりを感じながら幸せな気分に浸っていると、不意に医務室の先生がやってきた。

「調子はどうかな?」と聞かれたので、私は正直に答えた。

「アルフォンスが私を助けてくれたおかけでだいぶ楽になりました。だから、大丈夫だと思います」と答えると、先生はニッコリ笑ってくれた。

そしてこう言った。「君たちの絆は深まったみたいだね、素晴らしいことだ」と。

(私たちの関係が、認められたような気がして嬉しいな.............)私は心の中でそう思った後で、アルフォンスに向かって微笑みかけた。彼もまたそれに応えるように微笑んでくれたのである。

その笑顔を見るだけで、幸せな気分になることができるのだ。

これからもずっと一緒にいたいと思うのだった。


「あ!あの時の!」

そう声をかけてくれたのは、入学式の時に出会ったフェルマースさんだった。

「わあ!お久しぶりです!元気だった?」と私が尋ねると、彼女は満面の笑みを浮かべながら、答えた。「はい!あの時から、ずっとあなたたちのことが気になっていたの!」

そう言って、彼女は私たちの手を取ってくれた。どうやら彼女も、私たちと同じく友達になろうとしてくれているようだ。

そんな彼女に対して、私は感謝の言葉を述べた後で、自己紹介をした。そして互いに自己紹介を終えた後、私たちは一緒に遊ぶことになったのである。

そこで遊んだ場所は、学園内にある植物園のような場所だった。

様々な種類の花が咲き誇っていて、とても美しい風景が広がっている場所だったのだが、その中でも特に目を引くものがあったのだ..............それは大きな池である。

その池には、魚たちが泳いでいて、まるで楽園のような光景だったのだ。私たちは、その光景を眺めながらお喋りをしていたのだが、フェルマースさんがふとこんなことを言い始めたのである。

「実は私、貴女たちに声をかけようと思っていて。でも中々かけられなかったから、今日は嬉しいわ!」と。

私は彼女に感謝の言葉を述べつつ、「こちらこそ!」と返事をした。そして、三人で楽しく過ごすことができたのであった。

翌日、学校で授業を受けている間も、私はフェルマースさんとの会話を思い出して、笑ってしまっていた。

なぜなら、彼女と友達になれたことがとても嬉しかったからである。

(また会いたいな.............!)

私はそう考えながら、授業を受けていた。

そして放課後、帰宅するために昇降口に向かっていたのだが、そこで偶然にもフェルマースさんと再会することができたのである。

「あら?リーゼロッテじゃない!また会ったわね!」と声をかけてくれた彼女の笑顔を見た瞬間、胸が踊るのを感じた。

それはきっと、運命的な出会いだったに違いないと確信していたのだった。

それから私たちは、三人で一緒に帰ることになった。帰り道の途中で、フェルマースさんがある提案をしてきたのである。

「私たち三人で、親睦を深めない?」というものだった。

その提案に私だけでなく、アルフォンスも驚いている様子だったが、すぐに賛成してくれた。

そして次の休日に私の家に集まって、お泊まり会を開くことになったのである。

当日、私はワクワクしながらその日が来るのを待っていた。

そして当日.............私たちは私の家にやってきたのだが、そこで彼女の意外な一面を知ることになった。

なんと彼女は、料理が得意だったのである!彼女の作る料理は、とても美味しくて感動してしまったくらいだ。

特にデザートのタルトは、絶品だった。

そんな楽しい時間を過ごした後で、お風呂に入り就寝することになったのだが、一つ問題が発生した。私とフェルマースさんが同じ部屋で、アルフォンスが別の部屋で寝ると言い始めたのである。

私は驚いてしまった。

せっかく友達になったのだから、三人一緒の部屋で寝たいと思っていたからだ。

しかし、アルフォンスは譲らない様子だったので結局私が折れて、別々の部屋で寝ることになったのだった...............。

「リーゼロッテ、どうしたの?元気ないわよ」とフェルマースさんが心配してくれたのだが、私は正直に答えた。「一緒に寝たかった..........」という意見である。

すると、彼女は微笑みながらこう言った。「また今度遊びましょう!」と言って、頭を撫でてくれたのである。その優しさに感動して、思わず涙ぐんでしまった。

だが、そんな私を彼女は抱きしめてくれたのだった。

それからしばらくして就寝することになったのだが、私はなかなか眠れなかった............。

というのも、友達とこんな風に楽しく過ごしたことがなかったので、とても嬉しかったからだ。

結局私が眠りに就いたのは、明け方になってからだった。

それでも幸せな夢を見れたので満足していた。

それからというもの、私たちは毎日のように一緒に過ごすようになった。休み時間の時は、お互いに自分のお気に入りの場所を教え合ったり、放課後にはカフェに行ってお喋りしたり.............と楽しい時間を過ごしていたのだが、ある日のことーー。

アルフォンスが「そういえば、ここでもそろそろ学園祭の準備をしないとね」と言い出したのだ。

「確かにそうね............私たちで何か出し物をやらない?」私が提案すると、フェルマースさんも賛成してくれた。そして話し合いの結果、私たち三人で劇を上演することになったのである。

ただ役者がもう1人ほどほしいな、と悩んでいた矢先、声をかけられた。

「君たち、すごく楽しそうなことを話してそうだけど、何をする気だい?」

振り向くと、オーガスタスさんが手を振りながらこっちにやって来ていた。

「実は劇を上演することになりました」と私が答えると、彼は興味深げな表情で話を聞いてくれた後で、こう言った。「僕も混ぜてくれないか?一緒にやってみたいんだ!」と。

私たちは喜んで承諾した。

こうして役者が集まったのである。

頑張らなくちゃ!

それから数日が経過したある日のこと、私たちは舞台の練習をしていた。


「リーゼロッテ、もっと身振りを大きくしてもいいよ」とアルフォンスに言われた。彼は演劇の経験もあるようで、演技の指導も的確だった。そのため私も少しずつ上達していくことができたのだった。だが1番すごいのは、フェルマースさんの演技力である。

彼女は元々才能があるようで、すぐに役になりきることが出来るようになった。しかし、その一方で私は苦戦していた。というのも、台詞が覚えられなかったからである.............。そんな私の様子を見かねた彼女が、励ましてくれたことで元気が出た私は、再び練習に取り組むことにしたのだった。

そしてついに、本番の日がやってきた。舞台袖から客席を見ていると、大勢のお客さんがいるのが分かる。

そんなこんなで、私たちは練習してきたものを全力で演じたのであった。

劇は、大盛況だった。観客から惜しみない拍手を贈られ、私たちも達成感を感じていた。

私だけでなく、アルフォンスやフェルマースさんやオーガスタスさんの演技も素晴らしかった。

「やったね!」とアルフォンスが言ってきたので私は笑顔で返した。そして彼とフェルマースさんの手を取って、こう叫んだのである。

「ありがとう!」

それから、私たちは楽屋に戻ることにしたのだが、そこで思わぬ人物と出会ったのだった。

それは学園長のアルストロメリア様である!彼女は、舞台の様子を見に来ていたらしいのだが、私たちの劇を見て感動したのだという。しかし、それだけではなく、私たちに直接感想を述べたたかったらしいのだが、なかなか機会がなかったそうで、今回の劇でようやく話すことができたそうだ.............。

彼女はとても喜んでくれた。「素晴らしかった!君たちの演技を見て感動しました!」と言って拍手をしてくれたのだ。それがとても嬉しくて、私たちは顔を見合わせて笑い合った。そして、学園長から直々に賞賛の言葉を頂き、更なる自信がついたのであった。

それから、その後4人でお疲れ様会なるものを開いたのだが、それは非常に楽しいひとときだった。美味しい料理を食べながら色々な話をしたり、皆で歌ったりと楽しい時間を過ごしていたのだが、その時にある疑問が生じたのである。

「そういえば、学園長って普段何しているんだろう?」というものだった。そこで私は、皆に思い切って聞いてみたのである。

すると意外な答えが返ってきた。

なんと彼女は舞台稽古や劇の公演を行うための施設を持っており、そこで様々な劇を上演しているらしいのだ!その話を聞いて私たちは驚きつつも興味津々だった...............なぜなら、彼女が手掛ける演劇を観たいと思ったからである。

ぜひ一度行ってみたい、そう思った私は、学園長にお願いしてみたのだ。すると、彼女は笑顔で快諾してくれた!そして数日後には、早速観劇することになったのである。

「うわぁ、すごい人だね」とアルフォンスが感嘆の声をあげた。

彼の言う通り、会場は満席で溢れかえっていたのである。それだけ多くの人たちが、学園長が手掛ける演劇を楽しみにしていたということだろうか。

そう思うとワクワクしてきた。

そして、幕が上がった瞬間、一気に空気が変わったのが分かった。

まるで別世界に飛び込んだかのような感覚に陥いったのだが、それは決して不快なものではなかった。むしろ、心地よささえ感じられるほどだった。

舞台上には、学園長のアルストロメリア様が登場し、客席に向かって挨拶を始めた。

その姿を見た途端、観客たちが一斉に拍手を送ったのである。

それほどまでに彼女の存在感は圧倒的だったのだ...............まさに、カリスマと呼ぶに相応しい存在であった。

そして劇が始まったのだが、その内容は非常に興味深いものだった。

最初は、ただの学園物語かなと思っていたが、次第に話は進んでいくうちにどんどんと深い内容になっていくのが分かったのである。

それはまるで、私たちが魔法を使うようになった経緯を再現しているかのように、感じられたのである。

劇はクライマックスを迎え、ついに魔法を使うシーンがやってきた。彼女は杖を振るいながら呪文を唱えた..............すると舞台上に、巨大な炎が出現したのだ!

その迫力に観客たちは圧倒されていた様子だったが、次の瞬間には拍手喝采が巻き起こったのだ!私も思わず感動してしまっていた.............こんなに素晴らしい演劇を観ることができたのは、本当に幸運だったと思う。

だからこそ、次回も機会があれば是非観に行きたいと思ったのだった。

公演終了後、私とアルフォンスは興奮冷めやらぬ状態で会場を後にすることにした。

「すごかったね!最後の演出も迫力満点だったし..............」と、アルフォンスが興奮した様子で言ってきたので、私も大きくうなずいた。

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