第5話

彼女は一人で街を歩いていたのだが、その表情はどこか寂しげで悲しげな印象を受ける。

すると、アルフォンスはその女性の元に向かい声をかけたのである。「こんにちは、ベルヌーイ」と明るく声をかける彼の姿に、私は一瞬戸惑ってしまった。

というのも、彼が他人に対してそんな態度を見せることが珍しかったからである。

しかし当の本人は特に気にしている様子もなく、むしろ女性がとても驚いている様子であった。そして、女性は戸惑いつつも返事をしてくれたのだ。「あら、アルフォンスじゃない」

そんな彼女に対して、アルフォンスは言ったのである。「最近調子はどうだい?お父様は元気にしているよ」と告げると、ベルヌーイという女性は柔らかな表情を見せた後、静かに頷いたのだった。

「あら、お元気そうで何よりだわ。私もやっていってるわよ。 最初は慣れない環境で大変だったけどね」

私は終始2人の関係性について理解できず、呆然としていたが...............アルフォンスは、そんな彼女と親しげに話を続けていた。

私はその様子をただ見ていることしかできなかったが、ベルヌーイという女性がこちらに顔を向けた。

「アルフォンス、今日は1人ではないのですね?可愛らしい女性を連れていらっしゃるなんて」とベルヌーイさんが言うと、アルフォンスは顔を赤くしながら答えたのだった。

「彼女は僕の婚約者だよ。 リーゼロッテって言うんだ。一緒に街を散策してね」

そんな慌てふためく姿を見たベルヌーイさんと私は、思わず苦笑いをしながら顔を見合わせるのだった。

そして、彼女は自己紹介をしてくれた。「私は、ベルヌーイと申します。アルフォンスの姉です」と、頭を下げる彼女につられて私も頭を下げた。

ん?姉って言った?

目の前の彼女を見ると、確かにアルフォンスと同じ黒髪で青い目だが................遺伝子ってすごいわ!!

美しくて華があり、凛とした佇まいを持つ彼女の姿からは育ちの良さを感じる。

私はそんな彼女のことが気になって仕方がなかったので、思い切って話しかけてしまうことにした。

「私はリーゼロッテと申します。お姉様とお会いできて嬉しいです」私がそう言うと、彼女は優しく微笑んで答えてくれた。「リーゼロッテさん、素敵なお名前ですね。こちらこそ嬉しいわ!うちのアルフォンスと、仲良くしてくれてありがとう」と言うとベルヌーイさんは、私の手をそっと握ってくれたのである。

そしてそのまま私と彼女とアルフォンスは、他愛のない話を始めていたのだが、途中でベルヌーイさんが何かを思い出したかのように「あらもうこんな時間!ごめんなさい、もうそろそ帰らないといけないわ。また会いにいらして!」と、メモを残して立ち去ってしまった。

残された私達はしばらく呆然としていたが、その後すぐにアルフォンスが口を開いた。「あのさ、リーゼロッテ................さっきは変な態度を取ってしまって本当にごめんね」と謝罪の言葉を口にする彼に対して、私は首を横に振って大丈夫よと答えた。

そして、私たちは再び街を散策し始めたのであった。私はさっきの出来事について思い出していたのだが、すごいなぁと考え込んでいたら、いつの間にかアルフォンスが心配そうに顔を覗き込んでいたので、慌てて誤魔化してしまった。「ごめんね、ちょっとぼーっとしていただけだよ」と笑いながら言ったものの、内心ドキドキしていた。

それからも2人で色んなお店を見て回ったり買い物をしたりしたが、結局最後までベルヌーイさんのことについては詳しく聞けなかったのである。

また会えるかしら、と淡い期待を抱きながら。


数日後、私はアルフォンスと昼食をとっていた時のことだった。

突然、アルフォンスが「リーゼロッテ、今度ベルヌーイ姉さんに会いに行かないか?」と切り出したのだ。

私は驚いてしまい「えっ!?」と声を上げてしまった。「えっと、どうして急に?」と聞き返す私にアルフォンスは答えた。「実は、姉さんが君と会ってみたいと言っていてさ...............それに、僕もリーゼロッテのことをもっと紹介したいと思っていたから、ちょうどいいと思ったんだ」と話してくれたのだ。私は少しだけ悩んだものの了承することにした。

なぜなら、ベルヌーイさんに会ってみたいという気持ちが勝ってしまったからだ!

そしてついに、約束の日がやってきた..............

ベルヌーイさんの家がある王都中心部に向かう前に、まず馬車で15分ほどの所にある貴族街に訪れた私達は、ある家の門の前に立っていた。

アルフォンスがチャイムを鳴らして「私だ。」と言うと、中からメイドさんが出てきたので、私たちは招き入れられたのである。

家の中に入ると、そこにはあの日と変わらず美しい黒髪を持ったベルヌーイさんがいらっしゃった。

「いらっしゃい、アルフォンスとリーゼロッテさん。お待ちしていましたわ」と優しく出迎えてくれた彼女に、私は緊張しながらも挨拶を交わした後、家の中へ案内されたのだった。

それから私たちは紅茶を飲みながら他愛のない話をしたのだが、その間にもベルヌーイさんが私を見つめていることに気がついた。

そして、突然彼女がこんなことを言い出したのだ!「実はリーゼロッテさんのことを、もっと知りたいの」と言ってきた。

私は思わず驚いてしまったのだが、アルフォンスが「リーゼロッテは昔から恥ずかしがり屋で、人前で話すのが得意じゃないんだ」とフォローしてくれたので内心ホッとしていた。

すると、ベルヌーイさんが私の方を見つめて口を開いた。「大丈夫、ゆっくりでいいから私の前で話してみて」と優しく言ってくれたのだ。

その言葉に背中を押されたのか、私は少しずつ言葉を紡いでいったのである。

「...............お恥ずかしいですが、趣味のお話から始めさせてください」と

私は前置きをした後に、最近読んだ小説や観た映画について話し始めた。「読書は好きなんです。特に、最近は特に『君に捧げる愛』という作品がお気に入りなんです!」と私が言うと、ベルヌーイさんは興味深そうに聞き入ってくれたので、嬉しくなってついつい長々と語ってしまった。

しばらくしてハッと我に返った時には、ベルヌーイさんが興味津々の目でこちらを見ていたのだ! それからも、私と彼女は色々な話題で盛り上がったのである。

そして話の流れで、今度2人で映画を観に行こうということになったのだった!

私は嬉しさのあまり、飛び跳ねてしまいそうになっていたが、何とか堪えつつ「ありがとうございます!」とお礼を述べた。

そんな私の様子を微笑みながら、見守っていたベルヌーイさんは、不意にこんなことを言い出したのだ。

「リーゼロッテさん、私とお友達になりませんか?」

突然の申し出に驚いてしまったが、すぐに理解した私は満面の笑みで答えたのである!「もちろんです...............!」その後、私たちは連絡先を交換してから帰宅したのだが、その日は興奮して眠れなかった。

私は、いつものようにのびのび休日を過ごしていると、玄関の呼び鈴が鳴ったのでドアを開けたのだが...............そこにはなんと、アリスさんが立っていたのだ!驚く私に彼女は微笑みながらこう言った。「おはようございます、リーゼロッテ様」と。私は驚きながらも挨拶を返すと、彼女は家の中に入ってきた。そして、リビングで向かい合う形で座った後、彼女の方から話を振ってくれた。「最近どうですか?何か変わったことはありましたか?」と聞いてきたので、私は答えることにした。

「ええ、最近はアルフォンスと婚約を結んだり、彼のお姉様とお友達になったり...............忙しいけれど、充実しています」

私がそう言うと、アリスさんは満足そうに微笑んだ。

「それは良かったです。それでは早速申し訳無いのですが、本題に入りましょう。」と言って、彼女は一枚の紙を取り出して私に渡してきたのである..............。

一体何だろうかと思いながらも受け取った私は、その紙を見て驚いた!なぜなら、そこに書かれていたのは有名な高級レストランの名前だったからだ!しかも、ただのレストランではなく、超一流貴族の社交場として名高い店だったのである! どうして彼女がこんな場所に?と疑問に思っていると、アリスさんが話し始めた。

「実は今日、この場所でリーゼロッテ様のお父様と待ち合わせしているんです」という彼女の言葉に、私は更に困惑したが...............ここでふと思い出したことがあった。楽しくて予定のことを忘れていたのだが、以前、アリスさんが言っていた言葉だーー。

「来週、リーゼロッテ様のお父様からのご食事の予定が入っているので、一緒に行きましょう」と誘ってくれたことを。

つまりは、こういうことなのだろうと思い至った私は納得した。

そして、私は出かける準備を始めた後、彼女に見送られながら出発したのだった。

馬車に揺られながら、窓の外の景色を楽しむ私だったが、次第に不安な気持ちが増していくのを感じた。

というのも高級レストランなんて、会食の時以外中々行かないものだからである。

(どうしよう.............マナーとか全然分からないんだけど..............)

そんなことを考えつつも、今更引き返すわけにもいかず、覚悟を決めてレストランの前までやって来たのだった。そして中に入ってみると、そこはまるで、別世界のように煌びやかな空間が広がっていて、私は思わず息を呑んだ。案内された席に座って待っていると、しばらくして父がやってきたので、挨拶を交わした後に料理が運ばれてくるのを待つことにしたのだ。

緊張して待つこと数分.............運ばれてきた料理は本当に豪華で美しく盛り付けられていた!

一口食べてみると、口の中でとろけるような食感や芳醇な味わいが広がり私は感動した。

「美味しい............!」と思わず呟いてしまうほど私は夢中になって食べていた。

(もっと食べていたいわ)

そう思いつつも食事を進めているうちに、ふと疑問に思ったことがあったので、父に聞いてみることにした。「お父様、どうしてわざわざこのお店を選んだんですか?」という質問に対して、父はこう答えたのだ。「たまには良いだろうと思ってね」と言って笑っていた。

そして、私も笑顔になり再び料理を食べ進めたのである............。

食べ終わる頃には、すっかり満足していた私は、父に感謝の言葉を伝えた後、質問を投げかけた。

「..............あの、今日はどうしてここに?」

そう尋ねると、お父様は表情を引き締めて、言葉を発した。

「最近、あのアルフォンスさんとはどうかなと思っていてね」

と。私は、一瞬何のことなのか分からなかったが、すぐに思い出した。

そういえば以前、父にアルフォンスのことを話したことがある。

その時父は興味深そうに聞いてくれていたが...............まさか、本当に気にしてくれていたとは思いもしなかったのだ。

「そ、その節は色々ご心配をおかけしました................」と私が言うと、父は笑いながら言ったのである。「いやいや、気にしないでくれ。それで、彼とは上手くいっているのかな?」という問いに対して、私は満面の笑みで答えたのだった。

「はい!」と答えてから、お互いの近況などを話しあった後、私は父の車に乗って帰宅することになったのだが................その道中で、父が突然「ところでリーゼロッテ。今度、我が家でもアルフォンスさんと共に一緒に食事をしないか?」と言い出したのだ。

唐突な提案に驚く私だったが、断る理由もないということで潔く承諾した。

(でも、本当に平和にお食事会だけで済むのかなあ..............?)

そんなことを思ったものの、深く考えるのはやめておくことにしたのだった。

だって、これからは楽しみなことばかりなのだから。


それから、数週間後のことだった。

今日は私の家で、父とアルフォンスが顔を合わせる日だ。

父とアルフォンスは初対面なので、お互いに挨拶を済ませた後、リビングのソファに座り談笑している。

その様子を、私は遠巻きに眺めていた。

(お父様とアルフォンスが、楽しそうに会話してる...............!)

その光景を見て、私は胸が高鳴るのを感じた。

親戚以外の男の人と父が、話す姿を見るのは初めてだったからだ!

そしてしばらく経ってから、父は帰ると言い、アルフォンスと一緒に玄関に向かう。

私は父を見送りに行った後、リビングに戻ったのだが...............そこには、満足げな笑みを浮かべる、アルフォンスの姿があったのだ。「今日のことは良い思い出になったよ」と言って、彼も帰って行ったのである。

その日以来、父にアルフォンスを会わせる機会が多くなった。

というのも、父の社交界での伝手を使い、様々な人と交流を持ち始めたからだった。

その結果、私とアルフォンスはお互いを知る機会が増えていき、自然と仲も深まっていったのだ。

そして今日、私は父と共にアルフォンスの屋敷にやってきていた。

「今日は私とリーゼロッテで、彼の家にお邪魔する予定があってね」という父の言葉に従い、今こうして彼と話しているところである。

今日も、父はアルフォンスに近況や社交界の話をした後で私について尋ねてきた。

「それで、リーゼロッテはどんな風に過ごしているのかな?」と聞かれたので、私は笑顔で答えたのである。

「最近は、紅茶やアフタヌーンティーを嗜むようになりました!」と。

すると、父は興味深そうに聞き入ってくれた後、今度はアルフォンスに向かって話しかける。

「今度一緒にどうだい?」と。すると、彼は笑いながら言ったのである。

「それは素敵ですね............是非ご一緒させていただきたいです」と!その言葉を聞いた私は、思わず笑みが溢れた。

こうして、新しい楽しみが増えたことに喜びを感じながら、私は彼らと共に幸せな時間を過ごしていったのであった。


ある日のことだった。

いつものように、本を読んでいた私だったが、その時ふと思いついたことがあったのだ。

(そうだ!今日は本屋に行ってみよう...........!新しいシリーズは出ているかしら?)

そう思い立った私は、早速出発した。

外は快晴だったので、私は足取り軽く街へと繰り出した。

そして到着すると、すぐに目的の本を探し始める。しばらく店内を歩き回っているうちに、一冊の本を見つけたので、手に取ってみた!パラパラとページをめくり中身を確認する。

(あ............これ面白そう!)

そう感じた私は、その本を購入することにしたのだ!しかし、そこで予想外の出来事が起こったのだ。

(あれ............?)

なんと財布を家に忘れてしまったのである!

(やっちゃった!)

後悔しても遅かった.............どうしようと思った私は、ひとまず屋敷に戻ることにしたのだが............。

パニックに陥りながらも、必死に探し続ける私だったが、ついに見つけることができなかった。途方に暮れていると、そこに一人の男性が声をかけてきた。「君、どうかしたの?」と。

その人こそ、後に思い出すあの入学式の時に盛大なあくびをした彼だったのだ。

私が事情を話すと彼は、私の手にあった本をとって買ってきてくれたのである。

慌てて彼に声をかけようとすると、それを手で制した。

「ちょうどついでに、僕も本を買おうと思っていたところだったから、気にしないでいいよ。」と彼は優しい笑顔を浮かべながら言ってくれたのだが...............私は恐縮することしかできなかった。

「あ、ありがとうございます!本当に助かりました...........!」と頭を下げてお礼を言った後、改めて彼の顔を見てみると............

(あれこの人ってどこかで見たことがあるような...............?)

既視感を覚えつつも、記憶を辿っていると、彼が言ったのである。

「君のことは覚えているよ、入学式の時に隣にいた子で...............確か、リーゼロッテちゃんだよね?僕の名前はオーガスタス」

その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中に衝撃が走った!

(入学式のあの時の彼ね.............!)

それは紛れもない事実だった。

まさか、こんなところで偶然再会できるだなんて!私が驚いていると、彼は笑顔で言ったのである。「とりあえず本を渡さないとね、はいどうぞ!」そう言って私に本を渡してくれた。

そして彼はそのまま立ち去ろうとしたのだが、私は思わず呼び止めてしまった。

「待ってください!その.............何かお礼をさせていただけませんか?」そう尋ねると、彼は少し考えた後で言ったのだ。「それなら、今度お茶にでも行こう!」

もちろん断る理由などないので、私は喜んで了承したのだった。

その後私たちは連絡先を交換してから、別れたのだが.............その時に彼はこう言ったのだ。「それじゃまた手紙を送るよ」と言って笑顔を見せた後、颯爽と去って行ってしまったのである。

その背中を見送りながら、私はドキドキと胸の高鳴りを抑えることができなかった。

(嵐のような人だったわね、なんだかすごい人だったわ.............!)

そんな思いを胸に抱きつつ、私は帰路に着くことになったのである。

だがこの時の私では知る由もなかった............彼との出会いが、私の人生に大きな変化をもたらすことになるということを。

そして数週間後のある晩の出来事ーー。

私は父と一緒に夕食を摂っていた。そんな中、ふと父が私に話しかけてきたのである。「リーゼロッテ、最近何か変わったことでもあったかい?」と。私は少し考えた後でこう答えたのだ。

「特にないと思うけど..............どうしてそんなことを聞くの?」と尋ねてみると、父は真剣な表情で語り始めたのである。

「実は今日、社交界でよく話題になる人物に出会ったんだ」

そう言う父の顔からは、いつもの柔和な雰囲気は感じられず真剣な様子だったため、私も緊張してしまった.................

一体どんな人物なんだろうかと気になって仕方がなかったのだ。

「その人はとても魅力的な人でね、まるで太陽のような存在だったよ」

そう言う父の表情はどこか遠くを見つめているように見えた、まるでその人が今ここに存在しているかのように思えてくるほどである。

(どなたなんだろう...............?)

そんなことを考えているうちに食事を終えてしまった私は、その人物について無性に気になり、つい質問してしまった。

「どういったお名前の方なんですか?」


とーー。

すると、父は待っていましたかと言わんばかりの表情を浮かべた後で、答えたのである。「オーガスタス男爵だよ」と。

(え...............?)

私は耳を疑った。

何故なら、その名前は今日出会った彼と同じものだったから。

まさか、ここで彼の名前が出てくるなんて思いもしなかったので、私は動揺を隠すことができなかったのだが、そんな私を見て父は微笑みながら言うのだった。

「もしかしたら、リーゼロッテにとっても、良い出会いになるかもしれないね」と。

その言葉に、私はさらに驚きを隠せなかったのである。

だが、それと同時に興味が湧いてきたのも事実だ。

(やっぱり社交界でも優しい方なのね)

その後私は自室に戻り、彼について色々調べることにした。

(でもオーガスタス男爵って確か、学園でも良い噂しか聞かないのよね.............)

そう考えていた時のことである。

使い魔が鳴くと同時に、コンコンと窓がなったのである。

使い魔の口には手紙があり、それを受け取って撫でてあげる。

この手紙は、誰からだろう..............?

そう思いながら封を開けてみると、そこに書かれていたのは驚くべき内容であった。

なんと差出人はオーガスタス男爵本人だったのである。

「これは...............」

驚きのあまり呆然としていると、手紙の続きが目に入る。そこにはこう書かれていたのだ。

「突然だけれど、明日お茶でもどうかな?」と。私はしばらく考えた後で返事をしたためると、その手紙を使い魔に託すことにしたのだった。

(まさか、こんな形でまた彼と再会することになるなんて!)

期待と不安が入り混じる中、私は眠りにつくことになった。

明日が来るのを待ち遠しく思いながら.............。

翌朝、私は急いで身支度を整えた後で家を出た。

事前に、アルフォンスには事情を説明すると、彼は優しく微笑み行っておいでと了承を得られた。

(オーガスタス男爵ってどんな人なんだろう.............?話してみないことにはわからないわよね。)

そう思いながら歩いていくうちに、待ち合わせ場所であるカフェテラスに到着したのだが、そこには既に彼が待っていたのである。

「リーゼロッテちゃん、来てくれてありがとう。」彼は爽やかな笑顔を浮かべながら、手を振ってきたのである。その笑顔を見た私は、思わず癒されてしまった。

「こ、こんにちは!」と言って、なんとか平静を装って挨拶を済ませることにしたのだが..............。

正直言って、心臓の鼓動は激しくなっていた。

「なんだか元気がないみたいだけど大丈夫?」と彼が心配そうな顔で聞いてきたので、私は慌てて取り繕ったのである。

「いえ、大丈夫です!」と言って誤魔化した後に席に着くと、彼は紅茶を飲みながら話を始めたのだ。その内容というのが驚くべきものだった。

なんと彼は、魔法学園の生徒で首席合格を果たしていたというのである。

しかも、特待生扱いを受けているのだというから驚きだ!さらに成績優秀者であることも伺えたのだ...........!

(す............すごい人だわ...........!)

驚きを隠せなかった私だったが、それと同時に嬉しさも感じていた。

なぜなら、目の前の人物こそが私が見習いたい人物像に近かったからだ。

それに彼はとても紳士的で優しい性格の持ち主であり、それでいて頭脳明晰なのだという............まさに非の打ち所がないのである。

(きっとこの人となら、友達として上手くいく気がするわ..............!)

心の中でそう思った私は勇気を出してこう言ったのである。

「あの、もしよろしければ、またお話しませんか?お勉強とかも教えていただけたら..............」と。すると彼は笑顔で応じてくれたため、私はとても嬉しかった!

(やったわ!)

こうして私たちは意気投合し、その後も何度か一緒に会う機会を設けることになったのである。

勉強面で難しい箇所を教えてもらったり、魔法の話題で盛り上がったり、そしてお互いの趣味について語り合ったりと様々なことを話していったのだが、彼と過ごす時間は私にとって最高の時間であった。

そんなある日のこと。

私が屋敷に帰ってきて、夕食を摂っていると、父に呼び出されたのである。

一体何の用だろうと不思議に思いながら、父の書斎へと向かった。

「どうかしましたか?」

私が聞くと、父は考えた後にゆっくりと口を開いた。

「来週にある社交界で、リーゼロッテを連れていこうと思うのだが、大丈夫そうか?」

私は少し考えてから答えた。「はい、大丈夫です」と。

実際、私自身社交界には興味があったし、人脈を広げるチャンスだと思ったからだ。

すると父は安堵した様子でこう言ったのだ。「そうか.............それなら良いのだが」と。

それから数日後に社交界の日は訪れたのである。

私は父と共に会場へと足を運ぶことになったのだが、そこで目にしたのは圧巻の光景であった。

煌びやかなドレスやタキシードに身を包んだ人々で溢れかえり、まるで別世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えたのである.............。

(すごい............、これが社交界............!)

私は興奮を隠しきれないまま、会場へと向かった。父と共に挨拶回りをしたり、他の貴族の方々との談話を楽しんでいるうちに時間は過ぎていき、やがて舞踏会の時間がやってきたのだ。

その時の、高揚感は言葉に表せなかった。

シャンデリアが煌めき、優雅な音楽が流れる中私たちはダンスに興じたのだが、アルフォンスのリードはとても巧みで踊りやすかったので、思わず見惚れてしまった程である。

そんな彼との会話も弾み、楽しい時間を過ごすことができたのだ。

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