第4話

そして、しばらく歩いた後で辿り着いた場所は、高級感漂うレストランだった。

店内に入ると、ウェイターが現れて出迎えてくれると同時に、席に案内されることになったのだが、その際にアルフォンスは慣れた様子でメニューを注文してくれたので、私は呆気に取られてしまった。(まさか、アルフォンスがこのような場所に来るだなんて.................)

そんなことを考えているうちに、料理が運ばれてきたため、私達は食事をすることになったのだが、その間もアルフォンスは優雅で気品のある振る舞いを見せており、見ているだけで胸が高鳴ったほどであった。

そして食事が終わった後で、私は意を決して尋ねてみることにした。

「あの................どうして、私を誘ってくださったのですか?」と尋ねてみると彼は微笑んでから答えた。

「君と、もっと仲良くなりたいと思ったからさ」その言葉を聞いた瞬間、私の心臓はドキッと音を立てて跳ね上がった。(これってもしかして告白だったりするのかしら...............?)

そんなことを考えながらドキドキしていると、彼は続けて言ったのである。

「君さえ良ければ、また一緒に出かけよう」その言葉を聞いた瞬間、私の心は完全に舞い上がってしまっていた。(アルフォンスと、一緒にお出かけできるなんて、夢みたい!)そう思いながら私は満面の笑みで答えることにしたのである。

「はい!」と。こうして、私は次のデートを心待ちにしながら、日々を過ごしていくことになったのだった...............。

ある日の夜、自室のベッドでゴロゴロしていた時のことだった。

コンコンとドアをノックする音が聞こえ、私は起き上がりながら返事をした。

すると、ドアが開いて入ってきたのはメイド長のオリビアだった。

彼女は私に一通の手紙を渡してきたので、受け取りつつ尋ねた。「これは、何でしょうか?」

すると、オリビアは微笑んでから答える。「その手紙には旦那様からのご指示が書かれておりますわ」そう言ってら彼女は立ち去ってしまったのである。(一体何かしら...............?)疑問に思いながら封筒を開けてみると、中には一枚の紙が入っており、その内容を見ると驚きの事実が判明したのである。

それはなんと父からの指令であり、その内容は私が初めて舞踏会で一緒にいた人ーーアルフォンスとデートをして仲を深めること、というものだったのだ。(えっ............ええっ!?)予想外の内容に動揺を隠しきれないまま、暫く固まっていたが、やがて我に返ったところで、改めて手紙を読み返してみることにする。

するとそこにはこう書かれていたのである..............。 『リーゼロッテよ、実は君に頼みたいことがあるのだ。先日の舞踏会で知り合ったお相手とは、いい雰囲気だということをアリスから聞いた。親交を深めるため、一緒に食事なりショッピングなどに行ってみてはどうだろうか?きっと2人で、素敵な時間を過ごせることと思う。そこで今回は君に指令を与えることにする。君の役目はただ一つ、彼に気に入られるようにすることだ。良い報告を期待しているぞ』

手紙を読み終えた後で、私は思わずため息をついてしまった。まさか、こんなことを命じられるとは思わなかったからだ。しかし、命令された以上、従わざるを得ないため覚悟を決めて、行動を起こすことに決めたのである。まずは、デートの内容を決めるためにアルフォンスと話し合う必要があると思い立った私は、早速手紙を持っていくことにした。

そして翌日、学園に登校する途中に待ち合わせの場所で待つこと数分で、アルフォンスが現れたので私は、挨拶をした後で早速本題について話し始めることにしたのである。「あの.............アルフォンス、実は折り入ってご相談がありますの..............」私がおずおずと切り出すと、彼は優しく微笑んで言った。「なんだい?」その優しい笑顔を見た瞬間に、私の心臓は大きく跳ね上がった気がしたが、何とか平静を装って言葉を紡ぐことに成功したのだ。

そして、デートの内容が決まった後、私はその場を後にしたのだが、内心ではかなりドキドキしていたのである。

「その前に、このお手紙をお読みください」

そう言って、私は父からの手紙をアルフォンスに渡した。

彼は首を傾げながらも受け取ってくれたため、私はほっと胸を撫で下ろしていた。

そして手紙の内容に目を通している間、私は緊張していたせいか、喉がカラカラになっていたので飲み物を取りに行くことにした。

彼の分も合わせて冷たいお水を持って戻ると、無事に読み終わったみたいだ。

「えっと..............リーゼロッテのお父様は、僕との関係を歓迎しているということ?」

「はい...............」私は恥ずかしさのあまり俯いてしまったが、すぐに顔を上げて頷いた。それから、他愛もない話を続けた後に、改めて本題に入ることにしたのである。

まずは、デートの内容だ。

手紙の内容通り、ショッピングにでも行こうと2人で約束した。

そして当日、私達は街へ出かけることになったのだがーー。

「あの...............アルフォンス、これは一体どういうことでしょうか?」

私は困惑していた。何故なら、彼が私を連れて向かった先は数々の装飾品が並ぶショーウィンドウだったからだ。

「君の新しい装飾品を、買いに来たんだよ」アルフォンスは当たり前のように答えるが、私はますます混乱してしまっていた。

そんな私の気持ちを察したのか、彼は笑いながら言う。「心配しなくても大丈夫、僕の目利きを信じて」そう言って彼は店員に声をかけていた。

その結果、試着室へと案内されて着せ替え人形のような状態になってしまったのである。

(どうしてこうなったんだろう..............?)

心の中では疑問に思っていたものの、その反面少し楽しんでいたのも事実だ。

そして数時間後ーー私の首飾りや髪飾りなどを身に着けた姿を見て、彼は満足そうに微笑んでいる様子だった。私も鏡を見て驚いたのだが、想像以上に似合っている気がしたのだ。

今まで自分に、こんな素敵なものがあったなんて知らなかったと思ってしまうほどである。

その後も、アルフォンスは様々な商品を私に勧めてくれたため、私はつい夢中になってしまい時間の経過も忘れて、買い物に没頭してしまったのだった。

その後も色々なところを見て回った後、昼食を済ませたところでようやく落ち着きを取り戻した私は、アルフォンスにお礼を言った後で、再び街へ繰り出していくことになったのである。

しかし、そこで私達は予想外の人物と再会することになったのだ。それは、アリスだったのである。(え、どうしてアリスさんがここに.............?)突然の展開に、動揺を隠しきれないまま立ち尽くしていると、不意に彼女が話しかけてきたのである。

「.............あら、リーゼロッテ様にアルフォンス様ではありませんか!!」

私は一瞬戸惑ったものの、すぐに冷静さを取り戻して「アリスさん!偶然ね!」すると、彼女も笑顔を浮かべたまま近づいてきて言ったのだ。「まさかここで会えるとは思っていませんでしたわ!ところでお二人は、どういったご用件で?」

その質問に対して、私が答えようとするよりも先に、アルフォンスが答えたのである。

「デート中なんだ。 リーゼロッテのお父様からの手紙を、受け取ってね。」と。

アリスさんは、よくわかっていないようだったが、楽しんでくださいね!とそのまま笑顔で去っていった。

そして残された私達は微妙な空気に包まれていたのだが、アルフォンスが声をかけてきたことで、私は我に返ったのである。

「あの、リーゼロッテ...............もし良かったらこのあと食事でもどうかな?さっき君が装飾品を見ている姿を眺めていたんだけどすごく可愛いなって思ったんだ................」と言われた瞬間、私の心臓は大きく跳ね上がった気がした。(えっ!?それってまさか告白なのかしら.............?)

しかしまだ確信が持てなかったので勇気を出して尋ねてみたところ、彼は微笑みながら答えてくれたのである。「リーゼロッテさえ良ければ、また一緒に出かけよう」と。

そして、私は嬉しさのあまり泣き出しそうになりながら答えたのである。「はい!」と。その後食事を一緒にとった後、こうしてデートは成功に終わったのだ。

アルフォンスと別れてから自室に戻った後、私はベッドに入って目を閉じたのだがなかなか寝付けず、悶々としていた。するとその時、部屋のドアがノックされたので起き上がって返事をするとアリスさんが入ってきたのである。

「リーゼロッテ様、何かありましたでしょうか...........?お顔の色が優れないようですけれど.............」心配そうな顔をした彼女が尋ねてきたため私は慌てて首を横に振った後、笑顔で答えた。「ううん、大丈夫よ!」と言うと、彼女はほっと胸を撫で下ろした後に言ったのだ。

「最近、リーゼロッテ様はあまり眠れていないご様子だったので、ホットミルクを用意したんです」

そう言いながら手に持っているホットミルクを、手渡された。

私のために用意してくれたのかと感動していると、彼女は続けた。

「アルフォンス様の事でも、お悩みになっているのではないですか?」図星をつかれてしまい、私は言葉が出てこなかった。それを察したかのようにアリスさんが続ける。

「大丈夫ですよ!アルフォンス様ならきっとあなたを幸せにしてくれます!」と励ましてくれたのである。

その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れてきた。

それは悲しみの涙ではなく嬉しさのあまり自然と流れ出たものだったのだ。そして私は涙を流しながら感謝の言葉を口にしたのだった。「ありがとう..............!アリスさん!」と。

アリスさんは優しく抱きしめてくれて、背中を撫でて慰めてくれた。

それから暫くして気持ちが落ち着いた後で私は改めて彼女に尋ねたのである。

「どうして、私が悩んでいることに気付いてくれたの...............?」すると彼女は微笑みながら答えてくれたのだ。

「だってリーゼロッテ様、アルフォンス様のことがお好きなんでしょう?ずっとおそばに仕えていたらわかりますよ」と。

またもや図星な私は、何も言えなくなってしまったが、不思議と嫌な気分ではなかった。むしろ、自分の本心をさらけ出したことで、心が軽くなった気がしたのである。だから思い切って、打ち明けることにしたのだ。

私の恋心をーー。

私が全てを話し終えると、アリスさんは真剣な眼差しで聞いてくれていた。そして聞き終えると、同時に優しい笑みを浮かべて言ったのである。

「リーゼロッテ様、私はあなたの味方です。だからいつでも相談してくださいね!もちろん、アルフォンス様のことも同様に応援しています!」その言葉に背中を押された私は、勇気を出してこう言ったのだ。

「うん、心強いわ。ありがとう.............!アリスさん!」

こうして私の恋は一歩前進したのであった。

これからは、もっと積極的にアプローチしていこうと思う。


一方その頃、別室ではオリビアが安堵のため息をついていた。

「よかったわ、無事に気持ちを認識してくれたみたいで..............」と安堵していた。実は、当主様がリーゼロッテに手紙を送ったのは、偶然ではないのである。私が、あらかじめ用意しておいたものだ。

それは『リーゼロッテの恋心を後押しする指令』というものであり、文面にはこう書かれていた。

『親愛なるオリビアよ。君へ伝えたいことがあるのだが聞いてくれるだろうか?』という内容であり、その末尾にはこう付け加えられていたのだ。

『私の娘であるリーゼロッテの恋を応援してやって欲しい』

と。

オリビアはリーゼロッテの幸せを願っているが、同時に彼女の恋も応援していたのである。

だから、今回の計画に協力したのであったーー全ては当主様の娘様の恋を、成就させるためである。



そして、ついにその日がやってきた。

私はアルフォンスを放課後に呼び出し、告白の返事をすることにした。

心臓の鼓動が激しくなっていく中、私は深呼吸をして落ち着かせた後で意を決して言葉を紡いだのである。「アルフォンス、私はあなたのことが好きです!どうか、私とお付き合いしてくださいませんか..............?」アルフォンスは、驚いたように目を見開いていたが、やがて優しい笑顔を浮かべて言った。「喜んで.............私の方こそよろしくお願いします。」その言葉を聞いた瞬間、私は嬉しさのあまり泣き出しそうになったが何とか堪えることができたのである。

そして、私達は晴れて恋人同士となったのだ。


その日以来私達は頻繁に逢瀬を重ねるようになり、周囲からも公認のカップルとして、知られるようになっていった。

そんな私達の様子を微笑ましく見ていたのは、アリスさんであった。

「リーゼロッテ様とアルフォンス様..............本当にお似合いのカップルだわ」と、嬉しそうに呟いていた。

それから数ヶ月後、季節は冬を迎えようとしていた頃の話である。

私とアルフォンスとの関係も順調に進んでいたのだがある日のこと、私は彼から呼び出されたのだ。「どうかしたんですか..............?」と尋ねると、彼は真剣な眼差しでこう言った。

「今週末、一緒に出かける予定だったよね? その日なんだけど、ちょっと予定が変更になってね」「え..............?」と戸惑いの声を上げる私に対して、彼は微笑みながら言ったのである。「実はその日は父上と会食をする予定でね。リーゼロッテのことを紹介したいから、ついてきてくれるかい?」「本当ですか!?嬉しい.............!」私はこの上なくま舞い上がっていた。

何故なら、正式にお父様に紹介してもらえるなんて、思ってもいなかったからだ。

アルフォンスは照れたように頬を搔きながら続ける。「それともう一つ頼みたいことがあるんだけどいいかな?」「はい、なんでしょう?」と私が尋ねると彼は少し迷った素振りを見せた後で言った。「...............僕との結婚を考えてもらえないかな?君となら将来を共に歩んでいけると思うんだ」その言葉を聞いた瞬間、私は嬉しさのあまり泣き出しそうになった。

思わず抱きついてしまうと、彼は優しく抱き止めてくれたのである。

こうして、私たちは恋人同士から婚約者の関係となったのである。

後日ーー約束の日を迎えた私は、アルフォンスと共に馬車に乗って、お父様が待つ屋敷へと向かっていた。道中、緊張していた私に対して彼は優しく話しかけてくれる。

そのおかげで少しずつ落ち着きを取り戻していったのだ。そして、ついに屋敷に辿り着いた私達は応接間へ通されたのである。

そこには既にアルフォンスのお父様の姿があり、私たちを待っていたようだった。

「アルフォンスとリーゼロッテさん、よく来てくれたね」と優しい笑顔で出迎えてくれたので、私達は軽く会釈をした後で挨拶を交わした後、席に着いたのである。

そしていよいよ本題が始まったのだ。「実は二人に話があってね.............実はアルフォンス、君は来年から王立魔法学園に通うことになるだろう」とお父様が言った瞬間、アルフォンスは驚いたような表情を見せたが、すぐに納得したような顔になり頷いていた。私も初耳だったので驚いているとお父様は続けてこう言った。

「そこでなんだが、リーゼロッテさんも一緒に通わせてはどうだろうか?」と言うので私は嬉しさのあまり飛び跳ねてしまいそうになった。

何故なら、1年間とは言えど大好きな彼と同じ学校に通うことができるからだ。

「ありがとうございます.............!とても嬉しいです.............!」と言った後で、ふと我に返った私は少し恥ずかしくなったのだが、アルフォンスの方をちらりと見ると彼もまた同じ気持ちのようだった。それからは、とんとん拍子に話が進み、私はアルフォンスと同い年の王立魔法学園に通うことが決まったのである。

「父上、私からもお話があります」

それから、アルフォンスがお父様に打ち明けた。

「実は、リーゼロッテと正式にお付き合いをしています。 ゆくゆくは結婚も考えているのですが」と。

それを聞いたお父様は目を丸くしていたが、やがて優しい笑顔を浮かべて言った「そうか............それは良かった、安心した」と。

私もまた同じ気持ちで胸がいっぱいになっていた。

「はい...........!ありがとうございます」と私がお礼を言うと、アルフォンスのお父様は、嬉しそうな表情を浮かべて頷いてくれたのである。

その後、話を終えた私はアルフォンスと一緒に屋敷を後にして帰路についたのだが、途中で彼が手を繋いできたので私はドキッとしたが、それ以上に嬉しさが込み上げてきたので握り返したのだった。

これからもずっと一緒なんだと思うと幸せすぎてどうにかなりそうだった............。

「リーゼロッテ」名前を呼ばれて、振り返ると笑ったアルフォンスがいた。「これからもよろしく」と言った後、彼は優しく抱きしめてくれたのである。

すると心臓がバクバクと鳴り始めた。

身体が熱くなっていったのだ。

私は、その度に幸せを感じていた。ずっとこの時間が続けばいいのにと思うほど夢のような時間だったのである。


そして時は流れ、入学当日を迎えた私は不安と期待が入り交じった感情を抱いていた。

というのも私が通うことになる王立学園の校舎は男女共学となっており、男子生徒も通うことになっているからだ。要するに私の行動次第では他の生徒に迷惑をかけてしまう可能性があるということでもあるのだ。そこでまずは、事前にお父様に相談してみたところ「アルフォンス殿が困っていたら助けてあげるように」

と言われたので、その言葉通りにしようと思っている。

そして迎えた当日、私は馬車から降りると深呼吸をした。

目の前には巨大な門がそびえ立っており、その前には門番らしき人物が立っている。

緊張しながら近づいていくと声をかけられたので私は背筋を伸ばしながら、挨拶をした。「おはようございます」と言うと彼は笑って答えてくれた。「おはよう!」

それから門をくぐり抜けることができたのだが、校舎までは少し距離があるようだ。だから、私は歩きながら周囲を観察することにしたのだ。するとそこにはたくさんの生徒がいたのである以前の学校とは比べ物にならないくらい生徒数が多く、校舎も大きく立派な建物が並んでいるのが窺えた。

私が思わず感嘆の声を漏らしていると、一人の女の子に声をかけられたので振り返るとそこには同い年くらいの少女が立っていたのである。彼女は栗色のロングヘアでとても愛らしく、身長は私よりもやや低いくらいだった。

彼女は微笑みながら言ったのである。 「初めまして、私はフェルマースっていうの!よろしくね!」と元気に挨拶してくれたので私もそれに倣うことにした。「こちらこそよろしくお願いします!」と答えた後、私達は握手をしたのだ。

初対面にしては距離が近かったように思うが、彼女はとても明るい性格だったので自然と警戒心も薄れていったのである。

その後も私たちは雑談をしながら校舎まで歩いたのだが.............途中、彼女とはクラスが同じであることが判明したので、お互いに頑張ろうと励まし合ったのである。

そして、ついに教室の前に着いてしまった。その時までは和気あいあいとしていた私達であったが、いざ教室に入ると空気が変わったのが分かったのだ。

やはり男女共学なだけあって、たくさんの生徒がいるので、皆は緊張した面持ちで座っている。

もちろん私も緊張していた。だが、アルフォンスのためだと思えば頑張れる気がするのだ。

そしていよいよ入学式が始まる時間になったので、私たちは一斉に席に着いた。それからしばらくして始まったのだが、校長先生の話が長くて眠くなってしまったのである。しかも、気がついたら船を漕いでいる始末だった。

すると、突然隣の席に座っていた男の子が「ふわぁー」と大きな欠伸をしたのを聞いてしまい、私は思わずクスッと笑ってしまった。すると彼もまた私の方を向いて笑い出し、少しの間二人で笑っていたのである。

それが彼との不思議な最初の出会いであった。

それから数日後のこと.............私は一人で学園の中庭で読書をしていたのだが、そこに現れたのはアルフォンスだった。彼は私に用事があって来たと言うので、私は驚いてしまったのだ。「ごめんね、邪魔しちゃったかな?」と申し訳なさそうに謝る彼だったが、私は首を振った後で微笑んで言ったのだ。「そんなことありませんわ!私もちょうど暇を持て余していたところなので」と私が答えると彼はホッとしたような表情を見せた後にこう言った。


「良かった。じゃあ、隣いいかな?」と言うので私は快く承諾した。すると彼は私の隣に腰掛けた後で話を始めた。

その会話の内容は、お互いの趣味や好きなものについての話が多かったように思う。そして話題は、いつしか私たちの話へと変わっていった。そこで、彼は唐突にこんなことを言い出したのである。

「恥ずかしいけれど、よそ見しないでほしいな、私は不安になりやすいから」

そう言われた瞬間、私の心臓はドキッとした。

アルフォンスが私のことを好きでいてくれることが嬉しかった反面、私もまた同じ気持ちだったからこそ余計に緊張してしまったのだ。

しかも、まさか彼からそんなことを言われるなんて考えてもいなかったので心臓がドキドキして止まらない状態になっていたのである。


そして私は彼に返事をした。「もちろんですわ!私には貴方しか見えませんもの!」と笑顔で答えた後、彼の手を握りしめたのであった............すると、彼は照れたように顔を背けてしまった。その様子を見て私もまた恥ずかしくなってしまい俯いてしまったのだが、やがてお互いに顔を見合わせて笑ったのである。

それからしばらくの間、私たちは何も話さずただ手を握っているだけの時間が続いたのだが、不思議とその時間は苦ではなくむしろ心地良いとさえ感じたほどであった。きっと相手がアルフォンスだからだろう。

そして、私がそろそろ離さなきゃなと思っていた時にアルフォンスの方から話しかけてきたので驚いてしまったが、彼曰く「もう少しこのままでいたいんだ」ということだったので私も賛成した。それからしばらくしてチャイムが鳴り始めたので私達は慌てて手を離したが..............別れ際に彼は「また明日も会えるよね?」と不安そうな顔で聞いてきたので私は笑って答えた。「えぇ、もちろんですわよ!」と答えた後、彼と別れてから教室に急いで戻った私だったが、帰る時にまた手を繋げたら良いなと思いながら帰路についたのだった。

それからというもの、私たちは一緒に過ごす時間が増えたのである。

というのも、私が彼と一緒にいられる機会を増やしたのだがアルフォンスは特に嫌な顔一つせず付き合ってくれるのだ。そして、昼休みや放課後は二人で過ごしていることが多くなったのである。

そんなある日、私はアルフォンスと街へ出かけることになったのだ。

「わぁー!凄い!広いですわぁ!」

王都の中心にあるこの市場は、賑わっていた。

様々なお店が並んでおり、人々が行き交っている様子はまるでお祭りのような賑わいを見せている。「これは何でしょうか?見たことのない果物ですね..............」私が、一つの露店で見つけた果物を手にして驚いていると、店主のおじさんが笑顔で教えてくれた。

「それは、東の国から取り寄せた珍しい果物だよ!」

おじさんは自信たっぷりに答えてくれたのだが、私はそれよりもその見た目の美しさに目を奪われていた..............そして思わず試食のものをいただいてしまったのである。

「うん!美味しい!」と私が言うと、おじさんは嬉しそうな表情を浮かべながら言った。「良かったらもっと買っていきなさい」と言ってくれたので、私はお言葉に甘えて何個か購入した後、アルフォンスのところへ戻ったのだった。

それからしばらく彼と街を散策していたのだが、突然アルフォンスが立ち止まったかと思うと、何かを見つけたようで一点を見つめていたのである。その視線を追うようにして私も同じ方向を見るとそこには一人の女性がいた...............年齢は20代後半くらいで、長い黒髪に青い瞳をしている綺麗な女性であった。

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