第3話
「あ、リーゼロッテ嬢、頬にクリームが..............」
そう言いながら、アルフォンス殿下は私の頬についたクリームを指でとり、そのまま口に含んだ。
私は突然のことに動揺しつつも、平静を装って答えた。「あら、お恥ずかしい............ありがとうございます..............!」私は自分の頬が熱くなるのを感じながらも、何とか平然に保とうとしていたものの、内心ではドキドキしていたのである.............。
「美味しいかい?」そう尋ねてくる彼に向かって満面の笑みで答えると、彼も満足そうに笑ってくれたのだった。
(はぁ............幸せすぎるわ..............!)
その後も、街の中を散策しながら色々なお店を回った後、私たちは噴水広場にあるベンチに腰掛けて、休憩することにしたのだ。
「アルフォンス殿下は、いつもはどのようなことをされているのですか?趣味とか..............」私が尋ねると、彼は少し考えた後で答えた。
「そうだね、最近は絵を描くことが好きかな」彼はそう言いながら鞄の中から一枚の紙を取り出して見せてくれた。そこには見事な風景画が描かれている。「わぁ...........すごく綺麗ですわ............」私が感嘆の声を上げると、彼は照れくさそうに笑いながら言った。「ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいよ」
その後、しばらく絵の話で盛り上がった後、話題は学校のことについて移り変わり、様々な話をした後で私たちは帰路についたのである。
帰宅してからも、アルフォンス殿下がくださった風景画を眺める度に、彼の優しい笑顔が脳裏を過ぎり胸が高鳴ったのであった。
翌日、私は寝不足のまま登校することになった。
というのも、昨日の出来事があまりにも幸せすぎたせいでなかなか眠れなかったのだ!
(本当に素敵だったなぁ...............)と思い出しながら歩いているうちにあっという間に教室に着いた。「おはようございます、リーゼロッテ様」アリスさんが挨拶してくれたので私も笑顔で返した。すると彼女は少し心配そうな表情を浮かべて尋ねてきたのである。「どうかなさいましたか?お顔が少し赤いようですが..............」
そう言われた瞬間、一気に顔が熱くなるのを感じたのだが、何とか誤魔化しつつ答えたのだった。
「いえ、何でもないわ。...........最近暑いから、そのせいじゃないかしら?」そう言って誤魔化すと彼女は確かに、と納得した表情を浮かべていたがそれ以上追及されることはなかったため、ホッとしたのである。
授業が終わり休憩時間に入ると、アリスさんが駆け寄ってきて言った。「あの..............リーゼロッテ様、良かったら一緒に昼食を摂りませんか?」突然のお誘いに驚いたものの、断る理由もなかった私は、喜んで承諾することにしたのだった。食堂に着くと既に多くの生徒が席に着いていて、賑わっていたのだが、幸いにも空席が見つかったようで、私たちはそこに座ることが出来た。メニュー表を見ながら何を注文するか悩んでいると、アリスさんが尋ねてきた。「リーゼロッテ様、何か食べたいものはございますか?」私は少し考えた後で答えた。「そうね............このサンドイッチと紅茶をいただこうかしら」私が言うと、彼女は頷きながら注文をしに行ってくれた。
その後、きょろきょろと周りを見渡した時、1人の男性と目が合った。
「..............!?」
その瞬間、息が止まりそうになった。
執事喫茶にいた時、確か手を振っていた男性だったからだ。
目が合うと彼は微笑みながら軽く会釈してきたので、私も慌てて頭を下げる。
そのまま男性は立ち去るかと思いきや、なんとこちらに近づいてきて声をかけてきたのである。
「こんにちは、リーゼロッテ嬢、でしたよね?」私は驚きながらも何とか平静を装って答えた。「こ、こんにちは.............」すると男性は更に言葉を続けた。
すると、男性は更に言葉を続けた。
「申し遅れましたが、僕の名前はヘンリーと申します。何度かお会いしましたよね」そう言って手を差し出してきたので、私は戸惑いながらもその手を握り返したのだった。
「ええ、またこうしてお会いできて嬉しいです」
そう言って彼の目を見つめると、私ははっと思い出したのだ。
この方も攻略対象で、後にこの国の重要人物となる方だった。
アルフォンス殿下ルートでは、ライバルキャラとして登場するのだが、確か魔法科の生徒であり、水属性の精霊と契約しているはずだ。
また、彼にはもう1つ秘密があり、それは実は男装しているということであった。このことを知っているのは、攻略対象たちのみだったが、私が読んだ物語の中では明かされていなかったのだ。
しかし、現実になった世界ではどうなのだろうか?
私が考え込んでいると、彼は心配そうな表情を浮かべて尋ねてきたのである。「どうかなさいましたか?もしかして、お具合が悪いとか...............?」
私は慌てて首を振って答えた後、彼に尋ねた。「いえ、何でもないですわ」
「そうですか、なら安心しました。それでは、僕はこれで失礼しますね」そう言って立ち去ろうとする彼に、私は思わず声をかけて呼び止めてしまったのである。
すると、彼は立ち止まって振り返りながら微笑んで言ったのだ。「どうかなさいましたか?」その笑顔に見惚れつつも、何とか言葉を紡いだのである。「..............また今度、お話して頂けませんか?」すると彼は一瞬驚いた表情を浮かべた後で、嬉しそうに笑って言ったのだった。「ええ、是非とも喜んで!」そして彼はそのまま立ち去って行ったのである。
アリスさんがサンドイッチと紅茶を持ってきてくれるまでの間、私は放心状態で窓の外を眺めていた。
(まさか本当にまた会うことになるなんて思わなかったわ..............)そう心の中で呟くと同時に、
(次会った時はどんな話をしようかしら............?)そんなことを考えているうちに、自然と頬が緩んでいることに気づいた私は、慌てて表情を引き締めたのであった。
「お待たせしました、リーゼロッテ様。先程の方は?」
不思議そうに尋ねてくるアリスさんに向かって、私は答えた。「ヘンリーさんっていうお方なの。何度かお会いしたことがあって、はじめて今さっきご挨拶ができたのよ」
アリスさんは「運命ですね!」と感動で感嘆を漏らしていた。
そして私たちは昼食を済ませた後、教室に戻ったのである。
放課後になり、帰宅する準備をしているとアリスさんが話しかけてきた。「あの..............リーゼロッテ様」彼女が言いづらそうにしているのを見て、私は首を傾げたのだが、やがてその理由を察して答えた。「............この後の予定かしら?」私の問い掛けに対して、アリスさんはこくりと頷いた後で言った。「はい、その.............」彼女は少し口ごもった後で、意を決したように口を開いたのだった。
「もしよろしければ、その..............ご一緒させていただけないでしょうか?」彼女の提案に対して、私は少し考えた後で答えることにした。「ええ、もちろんよ」私が快諾すると、彼女は嬉しそうに笑った後、一緒に教室を出たのだった。
向かった先は、魔法科が活動する棟だった。
アリスさんが私を連れて来たのは、魔法科専用棟だったのである。そのまま中に入って階段を上がっていくと、そこには1つの大きな部屋があった。室内に入ると、中には大勢の生徒たちがいて熱心に勉強している様子が見えたのである。
そんな中、生徒に見守られながら上級魔法を扱っている方がいた。
それは紛れもなく、ヘンリーさんだった。
彼は、他の生徒たちとは異なる空間に居るかのように、存在感を放っていたのである。
その姿を見て、私は感嘆の息を漏らした。
(なんて美しいんだろう..............)
そう思った瞬間、視線を感じたような気がしたのだが気のせいだろうか............? いや違う。間違いなく誰かに見られていた気がするのだ
(気のせいかしら.........?)
そんな疑問を抱きつつも私はアリスさんと一緒に彼女の元へと近づいていった。
そこでアリスさんが話しかけると、ヘンリーさんが顔を上げてこちらを見たのである。「リーゼロッテ嬢と、それと...........そちらのょうご令は..............?」
彼はそう言うと、少し驚いた表情を浮かべた後で微笑んだのだった。
そして、アリスさんに向かって自己紹介をした後に、向き直り改めて挨拶をしてくれたのである。「はじめまして、僕はヘンリーと申します」
彼はそう言ってアリスさんに手を差し伸べて、アリスさんもそれに笑顔で応えている。
「先程の魔法見せていただきましたが、素晴らしかったです」
私がそう言うとヘンリーさんは照れたように笑いながら言った。「ありがとうございます、慣れたら簡単ですよ」
彼の笑顔はとても優しげで見ていると心が温かくなっていくのを感じた。
生粋の癒し枠ね。
隣のアリスさんを見ると、目をキラキラさせて
ヘンリーさんを見つめていた。
その様子を見て私は思わず笑ってしまった。「ふふっ、アリスさんったら」私がそう言うと彼女も慌てて恥ずかしそうにしていた。
その後はお互いに見聞を広げるために魔法について語り合ったり、アドバイスを貰ったりしたのだった。それからしばらく話し込んだ後で、私は用事を思い出したので席を立った。「あら、すみませんが私達はそろそろ失礼させて頂きますね」笑顔で言う私に2人は手を振って見送ってくれたのである。
2人が手を振って見送ってくれる中、私は魔法科の棟を後にした。
そして自宅へと到着する頃には日が傾き始めていた。
私は急いで馬車から降りて自室に向かう。
(ふぅ.............疲れたわね)
部屋に戻った後、湯浴みをして身を清めるとベッドに倒れ込んでしまったのである。(今日は楽しかったわ.............)そう思いながら目を瞑るとすぐに眠りについてしまったのだった。
2日後の休日、私はカフェテラスでくつろぎながら紅茶を飲んでいた。
傍らには本を置いており読書を楽しんでいたんだけれど、ふと視線を感じてそちらに視線を向けるとそこにはアリスさんがいた。
彼女は私の姿を見つけると同時に、嬉しそうに駆け寄ってきたのだ。
「リーゼロッテ様、おはようございます!」私は驚きながらも、挨拶を返すことにした。「おはようございます、アリスさん」私が挨拶をすると、彼女は微笑み返してくれたのだけれど、すぐに真剣な表情になって尋ねて来たのである。
「ところでリーゼロッテ様、どうでしたか?」
私はアリスさんの質問の意図を分かりかねたが、とりあえず答えることにしたのである。「えっと、それはどういう.............」私が首を傾げると、彼女は慌てた様子で言ったのである。「すみません、主語が抜けておりましたね。近々控えている舞踏会へのドレスは、決められましたか?」私は、ようやく質問の意図を理解したのであった。「え、ええ........一応候補はあるつもりだけど...........」私が答えると彼女は更に尋ねたのである。「一応、候補のご確認をさせていただいてもよろしいでしょうか?」私は一瞬躊躇ったが、意を決して答えた。「わかったわ」
アリスさんは嬉しそうに頷くと、私の手を取って歩き出したのだった。
そして連れてこられたのは、ドレスショップであった。
中に入ると、色とりどりのドレスが所狭しと並んでおり、まるで美術館のようで見ているだけでワクワクしてしまうほどだった。
「こちらが、当店で取り扱っているドレスの一部になります」アリスさんが説明してくれる中、私は改めて店内の光景を目にして感嘆の息を漏らした。「凄いわね............」
私が呟くように言うと、彼女は笑みを浮かべながら言ったのである。
それからしばらくの間、アリスさんとドレス選びに没頭したのだった。
試着を繰り返しながら、私は自分が着るに相応しいと思える一着を、選び出したのである。
最終的に選んだのは、美しい青色のドレスだった。
フリルがふんだんに使われており、スカート部分の丈も長めで上品な印象を与えるデザインとなっていた。
試着を終えると、アリスさんは目を輝かせながら言ったのである。「リーゼロッテ様、とてもお似合いです!」私は照れながらもお礼を言うと、彼女は嬉しそうに微笑んでくれたのである。
そして支払いを済ませた後に店を出ると、アリスさんが尋ねて来たのだった。「あの............よろしかったら、この後ご一緒にお茶でも如何でしょうか?」私は少し考えた後で、答えることにした。「ええ、喜んで」こうして私たちは、カフェテラスの個室へと向かうことになったのである。
カフェテラスに到着した後、私たちは窓際のテーブル席へと座った。
私は早速メニューを開き、アリスさんと一緒に覗き込む。
「どれも美味しそうね...........」私が悩んでいると、彼女は言った。「そうですね、では私はこのパンケーキを頂きましょうか」そう言いつつ彼女が指差したのは、フルーツと生クリームたっぷりのパンケーキであった。「じゃあ私はこっちのチョコレートケーキにしようかしら」私が答えるとら彼女は頷いた後で店員を呼び注文を伝えることにする。
そして待つこと数分で、頼んだ品が運ばれてくることになった。
早速、フォークで一口分切り分けると口に運ぶ。
すると、濃厚なチョコレートの風味が口の中に広がり幸せな気分になったのである。「美味しいわ...............」私が思わず呟くように感想を述べると、彼女も笑顔で言った。「はい、とても美味しいです!リーゼロッテ様と食べると100倍美味しく感じられますね!」そう言いながら、彼女もパンケーキを口に運んでいるようだったので、私は微笑ましく思ったのである。それからしばらく談笑していると、突然アリスさんがこんなことを言い出したのだ。
「あの..............リーゼロッテ様」彼女が真剣な表情でこちらを見つめてくるので私は首を傾げた後に聞き返した。
「どうかしたのかしら?」すると、彼女は少し恥ずかしそうにしながらも答えたのである。
「その、リーゼロッテ様は告白のお返事はどうされるんだろうって悩んでて..........」
「告白!?」
私は驚きの声を上げると、彼女は更に続けたのである。
「最近のリーゼロッテ様は、アルフォンス様とすごく仲が良さそうなので............」
私は思わず赤面してしまったが、何とか冷静さを取り戻して言ったのである。「えっと.........それはどういう意味なのかしら?」すると、彼女は真剣な表情のまま答えたのである。
「私、リーゼロッテ様が幸せになれるのなら、今回は身を引いて応援したいのですが、どうしても胸が苦しくて...........」その言葉を聞き、私の胸は高鳴ってしまうのだった。
(アリスさんも、そこまで私のことを本気で考えてくれていたのね.............)
そんなことを考えているうちにも、彼女の話は続いたのである。「リーゼロッテ様は、今のところどうお考えですか?」私は一瞬迷ったものの、正直な気持ちを伝えることにしたのだ。「そうね...........実はまだ迷っていて..........」私がそう答えると、彼女は目を輝かせた後で嬉しそうに言ったのである。「本当ですか?」私は、小さく頷くことしかできなかったのだが、それでも彼女は満足してくれたようだった。
「ゆっくりで大丈夫ですから、リーゼロッテ様の後悔がないように、よくお考えください」
その後、私達はしばらくの間雑談を楽しんだ後で別れたのであった。
3日後の休日、私はアルフォンス様の御屋敷の前に立っていた。
緊張しながらも深呼吸をして、意を決して扉を叩くことにしたのである。
しばらくして扉が開かれると、そこには執事のホリーストさんがいた。彼は、私の姿を認めると微笑みながら挨拶をしてくれる。
私もそれに応えるように頭を下げると、中に入ることにしたのだった。
案内された部屋に入ると、そこにはアルフォンス様の姿があった。彼は、私の顔を見るなり嬉しそうに微笑んでくれたので、私もつい笑みがこぼれてしまうのだった。
なぜ、私がアルフォンス殿下の御屋敷に来ているかというと、以前のお礼の変わりにアルフォンス様が屋敷に招待するとのことだった。
私はそれをありがたく承諾し、こうしてやってきたのである。
通されたのは、応接間だった。
高級感のある家具が置かれており、天井から吊るされたシャンデリアの光で、照らされている室内はとても明るかった。そして、テーブルには美味しそうなお菓子やお茶が用意されており、とても優雅な雰囲気であった。
「今日は来てくれて感謝するよ」とアルフォンス様は言った後で、私を席に座るように促した。
私が座ると向かい側に彼も座り、ホリーストさんがお茶を入れてくれた後に、部屋を出ていくのを見送った後で、私は話を切り出したのである。「その、アルフォンス様、先日はありがとうございました。おかげで、とても楽しい1日を過ごすことができましたわ」と私が言うと彼は笑顔を浮かべて言ったのだ。「それはよかったよ」その後はしばらく世間話を楽しんだ後、私は意を決して本題に入ることにした。
緊張しながらも、私は勇気を出して口を開くことにしたのだ。
「もしアルフォンス殿下がよろしかったら、舞踏会のダンスの練習をお願いしたいと思いまして」
私が、そう伝えると彼は驚いたように目を見開いた後で、真剣な眼差しを向けてきた。「リーゼロッテ嬢、それは本気で言っているのかい?」アルフォンス様はそう尋ねてくるので、私は迷いなく頷き返した。すると、彼は少し考えるような仕草を見せた後で、私に尋ねるのだ。「君は、本当にそれでいいのかい?」私は迷わずに答えたのである。「はい、構いません」
私が答えると、アルフォンス様は納得したように頷いてくれたのだった。
そして、私たちはダンスの練習をすることに決めたのである。
ーーそれから数日後のこと...............。
私とアルフォンス様は、王宮にある舞踏室にやって来ていた。
室内はとても広く、天井も高いため開放感があった。
そして周囲には楽器を持った楽団達がおり、優雅な音楽を奏でている。「まずは、基本的なステップから始めよう」とアルフォンス様が言ったので、私は彼の言う通りに従うことにしたのであった。まず最初に教わったのはワルツの一種で『円舞曲』と呼ばれるものだった。
2人でゆっくりとしたテンポの音楽に合わせて踊っていくわけだが、初めての経験だったので最初は上手くいかなかった。しかし、何度か練習しているうちに段々コツを掴んできたのである。
それからしばらく時間が経過して休憩となったところで、アルフォンス様がお茶を差し出してくれる。
「リーゼロッテ嬢、お疲れ様」と言って微笑みかけてくれる彼に私はお礼を言った後でお茶を受け取り飲んだのである。「ありがとうございます...............頑張ったあとのお茶は、とても美味しいですわ」私がそう感想を伝えると、彼は嬉しそうに笑ってくれたのだった。その後で、私達は他愛もない会話を楽しんだ後で言ったのである。
「そういえば、アルフォンスと呼んでくれないかい?堅苦しいのは苦手でね」突然、そんなことを言われて私は驚いてしまったが、すぐに了承した。それからというもの、私達はお互いのことを呼び捨てで呼び合うことになったのであった。
そしてとうとう、舞踏会当日がやってきた。
今日はら学園の大ホールを貸し切って行われることになっていたので、大勢の生徒が集まっていたのだ。
煌びやかなドレスに身を包んだ生徒や、正装姿で着飾った先生方が集まっている光景を見ているとら本当に華やかな気分になることができたのである。
その中でも一際目を引く存在があった。
(あれは............アリスさんかしら.............?)
煌びやかなドレスに身を包んだ彼女は、相変わらずの美しさに、驚きを隠しきれなかった。
(やっぱりアリスさんはすごいなぁ)
そんなことを思っているうちにも、時間は刻一刻と過ぎていったのだった。
いよいよ、舞踏会が始まる時間となり会場がざわつき始める一方で、私の心は緊張により高鳴り始めていたのである............なぜなら今日の舞踏会では、アルフォンス様と一緒に踊ることになっていたためだ。
事前に打ち合わせをした際は、大丈夫だと思っていたのに、今になって緊張が襲ってくるのを感じたのだ。
そしていよいよ時間になり、音楽が流れ始めた。
アルフォンスは、手を差し伸べながら言うのである。「さあ、行こうか?」私は、覚悟を決めてその手を取ることにしたのだった。
2人でゆっくりとしたリズムに合わせて踊り始めると、周囲からの歓声や拍手が聞こえてきたので思わず恥ずかしくなったものの、それよりも今は目の前にいる相手に集中しなければと思い直したのである...........。
それからしばらく時間が経って曲が終わると、私達は自然と距離を置いてお辞儀をしたのだった。
すると、その瞬間に周囲から拍手が巻き起こり祝福されることとなったのである。
こうして、私の初めての舞踏会は無事に終了したのだった。
翌日、私はいつも通り学園へ行く準備をしていたのだが、前日の舞踏会の影響もあってか寝不足気味であった。
しかし、それは私だけではなく周りの生徒達も同じようで、どこか疲れたような表情を浮かべている者が多かったのである。
そんな中でも、アリスさんは普段と変わらない様子だったので流石だと思いながらも、感心していたのだった。教室に移動して、授業を受けている最中も私は寝不足のせいで、ついウトウトとしてしまっていたのだが、何とか眠気を堪えつつ、授業に付いていくことに成功したのである。
(ふぅ...........危なかったわ..............)
私は安堵のため息をつきながら、ノートを取るためにペンを手に取った瞬間、筆箱の中に見覚えのある紙切れが入っているのを、見つけたのである。(これは確か、アルフォンスから頂いたメモ用紙だわ)
そう思って私は中身を確認しようと、折り畳まれた紙を広げてみたところ、そこには一言だけ書かれていた。
「今日出かけよう」と書かれており、その文字を見た瞬間に、私の心臓は大きく跳ね上がったのだ。
(これはまさか、デートのお誘いかしら?それとも、何か別の用事があるのかしら............?)
私はしばらく悩んだものの、結局答えは出ずに時間だけが過ぎていくばかりであった。(どこに行かれるのかしら?)
結局放課後になるまで悩み続けたのだが、答えは出なかったために、私は諦めて帰ることにしたのである。(仕方ないわ...........、直接聞いてみましょう!)そう思い至った私は、思い切ってアルフォンスに声をかけることにした。
そう思い至った私は、思い切ってアルフォンスに声をかけることにした。「アルフォンス、少しだけお時間よろしいでしょうか?」私が声をかけると、彼は驚いたように振り返った後で、微笑んでくれた。「ああ、もちろんだよ」
そうして2人で話ができる場所に移動した後で、改めて質問をしてみると、彼は少し考えるような仕草を見せた後で答えてくれたのである。「そうだね...............僕は、君と出かけたいと思ってるんだ」その言葉を聞いた瞬間、私はとても嬉しくなったと共に期待に胸を膨らませていたのだった。しかし、同時に不安も感じていた。
なぜなら、私にはまだアルフォンスと一緒に出かけるほど仲が良くなった自信がなかったからである。(もしも断られてしまったらどうしよう................。)そんなことを考えているうちにも、時間は過ぎていくばかりで私は焦りを感じ始めたのだが、その時だったーーアルフォンスが突然私の手を取りながら言ったのである。
「それじゃあ、行こうか?」そう言って私の手を引き歩き始めたところで私はようやく我に返ったのだった。
「あ、あの................!どこへ行くのでしょうか...............?」私が恐る恐る尋ねると、彼は微笑みながら答えてくれたのである。
「まずはレストランに行くよ」とだけ言って、そのまま歩き続けるアルフォンスに対して、私は何も言えずにただ黙って付いて行くことしかできなかったのだ。
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