第155話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 44

 過去の時代、サンドラ邸……。


 「サンドラさん、今戻りました。人を雇うための資金は調達出来ました。」

「まぁ外じゃなんだ、お茶でも飲もうかね。そうそう、子供達とガムさんはまだ戻ってないよ。」


 サンドラに促されリビングに入る。

 暖炉の火がリビングを暖めていた。

 薪をくべると椅子に座ったサンドラ。


 その間にキッチンからティーセットを運ぶミランダ。


 「私の時代では運ぶことも少なくなりました。今はとても新鮮な気持ち。普段はこの通りなんですよ。」


 そう言うと、ミランダはムーブを使い二人分のお茶を淹れて見せた。カップをそれぞれの前に移動させる。


 「不思議な力だねぇ。この先、フリップグロスにもあなたのような魔導士がやってくるのかねぇ。」

「えぇ、そうなると思います。そうですね、4,5年の間には基本魔術を得た魔導士が誕生すると思います。」


 「クッキーがあるよ、お茶受けに食べようかね。」


 サンドラは、キッチンからクッキーの入ったバスケットを持ってきた。


「子供達は数日は戻らないかもしれません。その間にどこかに行きませんか?サンドラさんは行きたいところはあります?」

「そうさねぇ、あたしゃずっとフリップグロスから出たことはなかったから、この歳になってどこへ行こうなんて考えたことはありませんよ。死ぬ前に王城を見てみたい気はするけどねぇ。」

「では明日は王城観光にでも出掛けませんか?」


 ミランダはカップにお茶のおかわりを注ぐ。

 「その日のうちに戻ってもいいですし、宿を取ってもう少し観光を楽しんでもいいですわ。今まで子供達の面倒を見て頂いたせめてものお礼がしたいの。いいでしょサンドラさん。」


 ミランダは、死に分かれた母親とサンドラをダブらせていた。

 母にわがままを懇願する娘のようだった。


 「わざわざこんな田舎に来てもらったんだ、贅沢は言いませんよ。狩りや魚獲りにでも連れてってもらえれば十分ですとも。」


 サンドラは小さく頷いた。


 「では1日だけ、王城を見に参りましょう。今後長く続く歴史ある城になります。くれぐれも不思議な力で行ってきたなんて触れ回らないでくださいね。」


 「二人の孫が出来た気分で過ごしてきたけど、なんだか娘まで持った気分ですよミランダ。」

「そう思っていただいて光栄です。私達の第二の故郷、フリップグロスはそんな存在になっています。」


 肩を落とし小さくなっているサンドラの肩を、優しく引き寄せるミランダであった。

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