第146話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 43

 現世の時代……。

 いつの日も、グランダの意識が仕向ける妖魔退治に魔導士達は翻弄される毎日を送っている。


 過去の時代から、王都の魔導士協会本部に訪れたミランダ。


 (残っていた金貨は12枚……。全部で50枚は必要かしら。本部から借り入れられるものかは掛け合ってみなければ。……至って悪い考えではあるけど、王都の宝物庫なり協会本部の金庫に転移出来れば黙って借りちゃうんだけど。まぁ入ったこともない場所はイメージ出来ないから不可能よね。)


 結局、ミランダはパットン本部長に掛け合うことにした。


 「……ミランダがその金貨の使途を話せないなら、貸し出せない。一体こんな大金を何に使うつもりだね。」


 ミランダは少し考えていたが、過去の時代でのグランダ討伐の話を始めた。当然、転移術式を習得したこと、子供達とガムも既に過去に行っていることなどを話していった。


 驚いたのはパットン本部長だ。


 「ガイラを失い、ワンドルも亡くなった。気が振れてしまったのかと思ったよ。……マタスタシス=テク、協会は封印したはずだった。それを習得して、しかも過去に渡ったとな。」

「過去の時代のグランダさえ仕留めれば、この時代のグランダの意識は消滅するはずだとワンドルが話してました。必ずや仕留めてまいります。その為に、過去の時代の者を雇う必要があるのです。」

「その時代の者で片づけられると?」

「そういう結論に達した訳です。その後は、王都に魔導士協会本部を設置、魔導士の養育に専念する所存です。」

「か、過去の時代に残るというのかね?」

「グランダをこの世から消滅させた後には、魔導士が近衛隊を擁護しながら王都を、強いては今の王城に発展させなければと考えています。300年余りの年月の間に、再びグランダのような人物が現れるとも限りませんから。」

「そこまで考えたか……。転移術式の事は黙っておこう。よろしい、金貨40枚を貸し出す。計画通りに事が進むことを望んでいる。しっかり頼む。」


 「ありがとうございます、本部長。では、早速過去へ戻ります。見ていてください。これが転移術式です。」


 ミランダは、パットン本部長の前で転移術式を使った。

オーラに包まれ、一瞬のうちに姿は消えた。


 (なんと、これがマタスタシス=テク。……呪いの術式とはいかなるものなのか……。)

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