第142話 Time Of Parting(別れの時) 1

 過去の時代、ワンドルの仮住まい……。

 ミランダが先に着いて、ワンドルのベッドの側に。


 まもなくしてガムと姉妹が入ってきた。


ベッドには衰弱したワンドル。そしてベッドを囲む面々。


 「心配するな、私は死を迎えるのではない。新たな地への旅立ちだ。魔導士としての私は、今まで悔いのない時間を過ごした。」


 ベッドを囲むミランダ、ガム、レイラ、ライラ。


泣き虫のライラは、ずっとワンドルの横から離れず、既に号泣している。

レイラも涙を隠さず流している。

ガムでさえも堪えきれず涙を流した。


 「今後グランダのような者が現れないとも限らん。過去の、ある時に魔術を手に入れ、魔獣化したグランダの事を考えたら、今後の現世でも油断は出来ん。……ミランダ。過去の時代、魔導士協会が発足して多くの文献を残していくように伝えることだ。しっかりな。」


 「ガイラの子供達よ、泣いてばかりではいかんな。今後、立派な魔導士として生きなさい。私はガイラと共にこの世に生まれて幸せに思っている。だが、ガイラとはもう少し共に過ごしたかったがね。……二人共、ミランダとガムとは常に協力し合って魔導士達を率いることだ。この先再び、グランダのような魔人、魔獣が現れるのは時間の問題。その時の為にしっかり準備しておくこと。」


 ワンドルの声は徐々に弱々しくなってきている。


ミランダはベッドの横に跪き、ワンドルの手を握っている。

ガムは感情に耐えきれず、窓辺にもたれた。


 「子供達の行動は2人に任せるとミランダは言ったね。だがな、現世で魔導士達と過ごすも良し、フリップグロスに戻りサンドラ達と平穏な日々を過ごすのも良しだ。……巨人の槍ではリンク出来るのだから転移術式は必要無い。いや、転移術式は多用はしないことだ。」


 レイラとライラは、泣きながらワンドルにしがみついた。


「私達頑張って生きていきます。」

「ワンドルさん……も、もっと元気で過ごして。」


 「おやおや、お前達には何をしてきた訳でもないのに、随分慕われたものだな。……大丈夫。お前達にはガムやミランダがいるだろう。この先一緒に行動してもいいがな。……又は2人で行動を共にしても良い。」


 ワンドルの声は、もう近付かないと聞き取れない。ミランダは顔を近付けて聞いていた。

「いいかい二人共。私は以前、ガイラと話したことがある。リンクを研ぎ澄ませると、もしや時代を超越出来るのかも知れぬと。この事も頭に入れておくといい。」


 「一つだけ、肝に銘じてほしい。転移術式は頻繫に使うものではない。体力、魔力の消耗が自らをむしばんでいく。……さぁ、頼むからそろそろ私をガイラの横に連れて行ってくれ。頼む……。た……の……む……。」


 そういうとワンドルはゆっくりと目を閉じた。


 「ワンドルゥゥゥーッ。」

ミランダはそのまま床に崩れるように突っ伏した。

ワンドルが死を迎えたのだった。

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