第141話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 42

 過去の時代、サンドラ邸の前……。


 現世からミランダとガムが転移してきた。

 ミランダはガムの肩に掛けていた手をポンポンと叩く。

 ガムはそこで我に返ったようだ。

 「ミランダ様。これが転移術式なのですね。不思議な空間を見た気がします。」

「その感覚を忘れないで。今後はあなた1人でも時代を越えられるわ。自信を持っていいと思うわよ。」


 そこへサンドラがドアを開けて出て来た。


 「お帰りミランダ。お連れさんも一緒だね。さぁさ、冷えるから中へ。子供達はもう寝てしまったから静かにお入り。」


 リビングはほんのりバターの匂い。ミランダはキッチンに入っていく。


 テーブルには布を被せたバスケットが置いてあり、サンドラは布を取って言った。

「子供達とクッキーを焼いて食べたんだけど、食べるかい?」


 そこへティーセットを持ってミランダも座った。


 「いい匂い。頂きましょガム。あ、サンドラさん、こちらはガム。私達と同じ魔導士です。」

「ガムです、初めましてサンドラさん。」


 3人はお茶をすすりながらクッキーを嗜んだ。


 そこに馬の蹄の音が近付いてきた。


 サンドラが外に出ていく。

 馬から飛び降りるようにサンドラに駆け寄った。


 「どうしたねジャック。」


 ジャックという男は、ワンドルが仮住まいしている家の家主で、時々水と食べ物を届けてくれていた。

ミランダに言われ、様子を見てやってほしいと頼まれてもいたのだった。


「大変だよ。ワンドルさんの様子がおかしい。いつものように起き上がって迎えてくれなかったんだ。それで尋ねると少し調子が悪いと……。早く一緒に来てくれないか。」


 聞きつけたミランダとガムも外に出てきた。


 「私達も行きましょう。いえ、すぐに着きます。サンドラさん達は後から来てください。ガム、子供達起こして仮住まいを案内させて。あの子達は仮住まいに行ったことがあるから転移出来る。」

「分かりました。そうしましょう。」


 ミランダは仮住まいに転移、ガムは姉妹の部屋に入って2人を起こし事情を話すと、姉妹に挟まれながら3人とも転移した。


 ジャックはぽかんとして開いた口が塞がらない。


 「今見たことは他言無用、あんたの墓まで持っていくこった。分かったね。」


 サンドラはジャックの胸を軽く小突くと馬まで歩いて行った。

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