第140話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 41

 窓辺で眠ってしまったガム。じんわりと身体が暖まっていくのを感じて目が覚めた。


 「戻ったわよ、ガム。薄紫色の時はどうだった?その様子じゃ、暖炉に火も入れずに疲れて寝てしまったようね。」

「はっ、ミランダ様。つい寝てしまいました。」

「どう?転移術式は身に付いたのかしら?」

「はい、なんとか身に付いたと思います。イメージするのは苦手なのですが、巨人の槍からここの窓辺に転移出来ています。」

「よかったわ。黒焦げになって倒れているのかと心配したわ。」

「黒焦げは免れました。」


 ミランダは暖炉に薪をくべながら、

「どうやら、マタスタシス=テクは巨人の槍で、どの魔導士でも習得できそうなの。それを過去のいずれかの頃、魔導士協会が封印しようとした。魔導書を改訂してね。」

「それは多分グランダに習得させないようにするためですね。」

「そのように推測できるわ。グランダが中途半端な術式しか得られなかったのは、グアムスタンの稲光に耐えられなかったからでしょう。魔力が足りなかったのね。」


 ガムはパイプに火を点けるとテーブルに座った。

「僕も過去の時代に転移します。ミランダ様のお供を。」

「そうね。ガムがいるなら、ワンドルには現世に戻ってゆっくりしてもらわなきゃ。……それから1つ思うことがあるの。」

「思う事……ですか?」

「先日のリンクの事よ。私達は薄紫色の時でなくともリンク出来た。それを同じ術具を持っていればリンクが可能なんじゃないかと思うの。まぁ魔力の消耗はかなりだと思うけどね。」

「なるほど、巨人の槍に触れていなくても術具でリンク出来るとお考えなんですね。」


 時折パチパチと薪がはじけている。リビングは心地よく暖まっている。

もう外は暗くなっていた。


 「ガイラが生前、子供達の為に短剣を作ったの。それを作ったのは名高い武器屋なのだけど、魔導士の術具屋でもあったのよ。その名士に皆で同じ術具を作ってもらえれば、常にリンク出来る。勿論、パワーを増幅するストーンを付けてもらうの。」

「試す価値ありですね、ミランダ様。……子供達と僕にミランダ様。同じ術具にパワーをかけてリンクする。楽しみな計画です。」


 ミランダは、暖炉の炭を消化砂の箱に移しながら、

「転移術式が習得出来たのなら過去の時代に行きましょう。ワンドルに報告して、彼には現世に戻ってもらわなきゃ。」

「分かりました。早速移動しましょう。」

「ガムの転移が失敗しない様、私が肩に手を掛けておく。それで転移する。私にリンクをしながらフルにパワーを出していて。」

「承知しました。」


 ミランダはガムの肩に手を掛ける。ガムは出来る限りのパワーを発しリンクしながら続けた。


 まもなくして二人の姿が消えていった。

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