第138話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 39

 現世の時代……。

 寒空の中、陽の光が心地良い日だった。

 ガムは約束通り、バリスタン山の巨人の槍に来ていた。



 「ミランダ様!……ミランダ様、聞こえていますか?」


 ガムの考え通りになるものかどうかは分からなかった。

何度か同じ様にリンクしていた。

だがまもなく、ガムの考え通りになった。


 「私よガム。すごいわ。別に薄紫色の時でなくてもリンク出来てるわね。」

「ミランダ様。……良かった。リンク出来ています。」

「もしかすると、私達魔導士は特定の場所に限らず、同じ場所であれば時代を越えてもリンクが可能かもしれないわ。」

「その通りだと思います。ただ……うっ……くっ。」

「どうしたのガム?大丈夫?」

「大丈夫です。かなり魔力を消耗しますね。もっとパワーが欲しい。持続させることで精一杯です。」

「そうね。魔力が弱い者では薄紫色の時の方が良さそう。」

「ミランダ様。次の薄紫色の時、必ずや転移術式を習得します。その後、ミランダ様には一度こちらに戻ってほしいのですが。」

「あら、私の寿命を縮めるつもりね?……ふふ、冗談よ。分かった。次の薄紫色の時の後、現世に戻る。」

「申し訳ありません、お願いします。」

「でもいい?薄紫色の時の巨人の槍は、稲光のエネルギーが半端ないわ。苦しくてもくれぐれも岩から手を離さず、稲光が収まるまで耐えなさい。さもなければ黒焦げになってしまうわよ。」

「肝に銘じて。」

「では、薄紫色の時の翌日、現世に戻る。」

「かしこまりました。お待ちしてます。」


 ガムはミランダとのリンクを終えると、息が上がって肩で呼吸している。

 (成功した。僕の考えは正しかった。薄紫色の時を選ばずとも、リンクは可能。)


 そして過去の時代のミランダ……。


 (すごい発見ね。場所を問わずリンクが可能。……もしかして、魔導士のご老体達が魔力の補助に使っている術具……同じ術具同士のリンクも時代を越えてリンク可能かもしれないわね。魔力の消耗は計り知れないからご老体達には無理ね、ふふ。)


 姉妹は、ミランダがガムとのリンクを試すのだと聞いて、今日は魚獲りからラビン・バトン狩り。


 狩りの方法を変えている。それはこうだ。

まず発見したらシンクロで近くまで誘導、そこで弱いサンダーを使って気絶状態にさせる。捉えたら手足を縛り捕獲。

 これなら生きたままのラビンやバトンを市場まで持っていけると考えたのだった。魚獲りで得た知恵とでも言うべきか。


冬空のバリスタン山は陽が傾き始めてきていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る