第126話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 33

 現世の時代に戻ったミランダ。


 「ガム、一旦協会本部に行ってくる。それらしい文献は貸し出してもらうから、ここで待っていて。それから、あなた、転移術式の習得はどうするのか決断したの?」

「それが、まだ決めかねておりますミランダ様。」

「あなたはもう最上級魔導士の立場。術式もしっかり追いついてる。……そうね、あとは決断するのみ。では行ってくるわ。」


 ミランダは協会本部に転移した。


 ガムは悩んでいた。窓辺に椅子を運ぶと、パイプに火を点けた。


 「……。科学者である自分と、若い魔導士を指導する自分が今戦っている気がする。……二兎を追う者は一兎をも得ず……か。そうだよな、欲張っても身にならないどころか、自分は堕落してしまいそうだ。ここはワンドル様、ミランダ様を見習わなければ。」


 ガムはバリスタン山に足を向けたのだった。


 歩きながら、髪色が徐々に変わっていき、身体中からは青いオーラを発し始めた。


 赤く渦巻くバーストを、グアムスタンに向けて幾つも飛ばす。

続いて眩い光とともに、サンダーが手元から幾つも投げられた。


 ガムは表情一つ変えずに、ひたすら続けていた。


 そのままの状態で、巨人の槍に向かって歩く。


 巨人の槍に両手を当てると、目を閉じて最大のリンクを使った。


 ガムの脳裏には、過去の時代の巨人の槍周辺の景色が見えている。


 (薄紫色の時でなくても、どの時代かは分からなくとも向こうが見える。よし、次は別の時代。……動物や鳥の姿。次の時代……。)


 ガムは繰り返し過去の時代の巨人の槍周辺を見ていた。


 (よし、前より鮮明に見えている。……小さな動物。シンクロはどうだろうか。)

 過去の時代の、見えた小動物にシンクロを試みたガム。


 (……くっ、さすがにシンクロは時代を超越できないのか。)


 ガムはパワーを戻すと、元の姿に変わった。

 振り返ると山を下りていくのだった。

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