第115話 An Unsuccessful Subjugation(叶わない討伐) 1

 現世の時代、ミランダが転移術式を習得する前の、とある日のミランダ邸でのこと……。


 「ワンドル様。今、ミランダ様が過去の時代のグランダを討伐したとして、現世のグランダはどうなるのでしょうか?」

「何も起こらん。現世から過去に向かった者が当時のグランダを討伐したとしても、歴史は何も変わらない。すなわち現世のグランダは存在し続けるのだ。」


 ミランダは黙って聞いている。


「……ということは、僕が現世で転移術式を習得して過去のグランダを討伐しても無駄、ミランダ様が今過去に転移して討伐しても無駄……ということですか?」

「うむ。現世から転移した者には決して今の歴史は変えられん。それだけだ。すでに私が試みた。」

「しかし、過去の時代の姉妹はグランダを討伐すると……。」

「それは無駄な考えなのだ。その細かい事は私が伝えに向かう。ミランダが説得してもよいがな。子供達がグランダを討伐するという考えは、決して間違ってはいないが、別時代の者がグランダを消しても現世には無駄なのだよ、なんの影響も及ぼさぬ。ゆえに、その時代の者達の行動次第、それだけが唯一の手段。」

「……その時代の者。……グランダを討伐するのがその時代の者であれば叶うということですか?」

「その通り。……ガム、魔導士協会本部で調べた通りだよ。当時の時代の闘技場、その時代の強者達を集め、グランダを討伐することが肝要とみるべきだ。」

「そこまではワンドル様も調べていたのですね。」

「闘技場での大会がいつの時代か、探りきれていなかった。」


 話を聞いていたミランダが口を挟む。


 「ワンドル。過去の時代、グランダが逃れた王城の郊外へ行き、そこで強者達を招集、討伐するのであれば問題は叶う。……と考えていいの?」

「私はそう思う。」

「ではワンドル様。過去の時代、闘技場で腕自慢をしている強者達を集めて、グランダを仕留めるのであれば問題無いのですね?」

「あぁ。何度も言わせるなガム。……いいか。その時代を探り、闘技場の強者達の手により討伐する事が必要だ。しかし出現間もないグランダを見つけ出し、その時代の者が仕留める事、それは容易ではないかもしれぬ。果たしてそれを子供達が出来るのか……難しいと思うがな。」

「あの子達なら大丈夫よワンドル。私も出来る限り名案を伝える。やり遂げられる。それは信じていいと思っています。私も過去へ転移して子供達とやってみます。」

「……そうだな。私も出向いて進言するとしよう。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る