第110話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 30

 姉妹の驚く表情に、ワンドルが笑いながら言った。

 「大丈夫だよ。見ての通り、大量のポーション持参だから問題無いさ。次の薄紫色の時には、2人の挑戦だ。」

「そんなに早く?私達で叶うことなの?」

「あぁ、そう信じてる。」


 「ところで、獲物を市場にはどの位卸すの?今日はママも協力するわよ?。」

「そうねー。バトンだからあと11匹位かなー。」

「分かったわ、じゃあ始めましょうか。」


 ワンドルをそっちのけで、バトン狩りを始めた3人であった。

 ワンドルは微笑みながら眺めていた。


 陽が傾き、いつものように市場に向かう。

その途中。


 「ミランダ。私は、町で宿を取る。次の薄紫色の時、子供達が術式を習得するまでな。で、君はどうする?」

「サンドラさんにお願いしてみる。ママを紹介しなきゃ。」

「ご挨拶だけよレイラ。ママも麓まで下りてもいいわ。」


 そうこうするうち、市場事務所……。

 獲物のバトンをドンバスに引き渡し、ミランダが紹介された。


 市場のドンバスと別れ、サンドラ邸に帰る途中……。

 「ママには他にも会わせたい人がいるけど、しばらくフリップグロスにいるのならいつでもいいわね。」

「あら、ライラ。リュージン夫妻のこと?私も賛成。今度伺いましょうねママ。」

「リュージン……夫妻?それより先ずサンドラさんよ。あなた達が一番お世話になってる人なんだから。」

「それは分かってるわママ。見て、このベスト。これはサンドラさんからのプレゼントなの。」

「それでね、このポケットの刺繡の色。これは私達の事なの。」

「あなた達の……事?」


 頭に?《はてな》マークのミランダだった。


 「私達の記憶が戻る前の事よ。サンドラさんは私達の見分けが付くようにってリボンをくれたの。ポケットの刺繡はリボンと一緒。」

「レイラずるいー私も話させてー。」


 どうやら姉妹は母親と話したくてしょうがないらしい。

続けてライラが話す。


 「フリップグロスの言葉で赤はアマ。黄色はロー。私達の持っていた短剣に付いてるストーンから、サンドラさんがアマとローって名乗ったらって。リボンも刺繡もその色ってわけなの。」

「なるほど、見分けやすいものね。」

「市場の人達も同じ、前も今も、私達の見分けが付かないのよ。」


 ミランダはふと黙ってしまう。


 「ママ?どうしたの?」

「サンドラさんから、どこから来たとかどこの出身なんて尋ねられないかしら……。」

「それは大丈夫よママ。サンドラさんには魔術の事は話してる。ワンドルさんも同じで、術式を使って、他の時代から転移してきたってのは話してるわ。リュージン夫妻もご存じよ。」

「それなら良かった。どう話そうかってふと考えちゃったわ。」


 長々と話しながら歩いているうちに、サンドラ邸まで帰ってきた3人だった。

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